Visual Studio Code⁠チャットにおけるGPT-5の利用とチェックポイント復元機能を追加 —⁠—ターミナルコマンドの自動承認機能は設定方法を変更⁠AI使用状況の統計表示も

Visual Studio Codeは2025年8月7日、 バージョン1.103(July 2025)の一般提供を開始した。このバージョンでは、チャット(Copilot Chat)を中心に多数の新機能や改善が施された。

チャットでは、GitHub Copilotのすべて有料のプランであれば「モデルの選択」⁠モデルピッカー)からOpenAIの最新モデルのGPT-5が利用可能になった。なお今回、⁠モデルの選択」に表示するモデルを取捨選択できるようになった。これはチャットプロバイダーAPIの刷新によるもので、今後さらに改善されていく予定。

チャットの履歴表示において「チェックポイント」機能が新たに追加された。特定のチェックポイントを選択すると、ワークスペースの変更やチャット履歴がその時点に戻ることになる。また、先月の更新でできるようになっていた過去のリクエストの再編集だが、リクエストの吹き出しをクリックすることで、そのなかでリクエストを編集して実行できるように変更された。そのほか、チャット履歴上でKaTeXによる数式表示$囲みでインラインの数式、$$囲みでブロックの数式)が可能になったり、エージェントが動作中にVS Codeを閉じようとすると確認ダイアログが表示されるようになった。

チャットでは「ツールの構成」⁠ツールピッカー)画面も刷新された。ツールの展開や折りたたみ、固定スクロールなどが可能となった。そして、現在1回のチャットリクエストで利用できるツール数の上限は128個だが、今回それを超える場合に自動的にツールがグループ化され、グループをアクティブにして呼び出されるようになった(実験的機能。設定のgithub.copilot.chat.virtualTools.thresholdでツール数を調整できる⁠⁠。

さらに、チャットセッション中にユーザーの確認が必要な場合において、OSの通知システムを使って案内を出せるようになった(設定でchat.notifyWindowOnConfirmationを有効にする必要がある⁠⁠。現在はその通知から画面にフォーカスするだけだが、今後その通知上で直接承認できるようにすることも検討しているという。


先月導入された、チャットにおけるターミナルコマンドの自動承認機能が次のように更新された。詳細は公式ドキュメントの「Use agent mode in VS Code」ページの「Auto-approve terminal commands」を参照のこと。

  • ターミナルで自動実行されるコマンドの許可/拒否リストを、設定のchat.tools.terminal.autoApproveで指定することになった(古い設定での指定は無効に⁠⁠。値がtrueなら自動実行を許可し、falseなら常にユーザー確認が必須になる。なお、nullならコマンドの振る舞いを解除する。
  • コマンドを指定する際、正規表現が使えるが、今回の正規表現のフラグも使えるようになった。たとえば/iを使えば、大文字と小文字を区別する必要がなくなる。
  • コマンドが組み合わさって1つのコマンドとなる場合、approvematchCommandLineのプロパティを組み合わせたオブジェクトを値に指定して照合できるようになった。matchCommandLinefalseのときにはサブコマンドとインラインコマンドに対して照合し、trueのときにはコマンド全体に対して照合する。そして、approveで許諾trueや常に確認falseを指定するかたち。
  • 自動承認された場合には、ターミナルの出力チャンネルにログとして表示されるようになった。
  • 現時点では、自動承認はユーザー設定またはリモート設定でのみ可能(ワークスペース設定では今後のリリースで対応予定⁠⁠。

エージェントモードでのタスク作業では、そのタスクを小さなタスクに分解して作業が行われることがある。この進捗状況を追跡するために、今回、その作業の進捗を「タスクリスト(Todoリスト⁠⁠」としてチャットビュー上部に表示できるようになった(実験的機能なので、設定でchat.todoListTool.enabledを有効にする必要がある⁠⁠。これにより、完了したタスクと未完了のタスクを一目で確認できるようになる。

エージェントは、タスクとバックグラウンドターミナルの完了をより正確に待つようになった。具体的には、プロセスの実行に20秒以上かかる場合は、待機を継続するか、先に進むかを選択するかを表示するようになった。また、エージェントはプロセスを最大2分間監視し、その後現在の状態を要約するか、プロセスがまだ実行中かどうかを報告するようになった。

チャットからターミナルのコマンドなどを実行するツールは、Copilot Chat側にあったが、今回VS Code本体側に統合された。これにより、より低レベルで豊富なAPIにアクセスが可能となるためターミナルのハングアップに関する問題の多くを修正できるようになったり、拡張機能のAPI制限に影響を受けることがなくなるため拡張しやすくなったりするとのこと。また、ターミナル内での実行ツールを使用した際にVS Codeが認識できるシェルではない(=シェル統合されていない)場合は、その旨を示すメッセージが表示され、ドキュメントを参照できるようになった。

#codebaseツールがAzure DevOpsリポジトリのリモートインデックスに対応した。これによって#codebaseを初期化せずに、関連するスニペットを時間をかけずに検索できるようになった(これまではGitHubのリポジトリにのみ対応していた⁠⁠。このリモートインデックスは、Git経由でAzure DevOpsのワークスペースで作業する場合に自動的に使われるが、Azure DevOpsリポジトリへのアクセス権限があるMicrosoftアカウントでVS Codeにログインしている必要がある。

ライブラリやフレームワークから、最新のバージョン固有のドキュメントとコード例を取得するContext7のMCPサーバーがインストールされている場合において、チャットで#newを使って新しいプロジェクトを作成するとき、Context7を通して該当の最新ドキュメントとAPIを使うことを確認できるようになった(実験的機能なので、設定でgithub.copilot.chat.newWorkspace.useContext7を有効にする必要がある⁠⁠。


MCPについては、VS Codeは最新のMCP仕様(2025年6月18日販)に準拠しており、今回、ツール出力においてresource_linksと構造化出力に対応した。また、MCPサーバーの自動起動の動作を設定できるようになり、MCPサーバーを手動で再起動する必要がなくなった。これは設定のchat.mcp.autostartで制御できる。MCPサーバー更新アイコンのツールチップでも、この設定が表示されるので、どのサーバーを自動起動するかを調整できるようになった。このほか、MCPサーバーを更新または変更した後、初めて起動するときに、サーバーを信頼するかどうかを尋ねるダイアログが表示されるようになった。これは、MCPサーバーの自動起動が有効になっている場合に望ましくないコマンドが実行されるのを防ぐために措置として導入された。

そして、Dynamic Client Registration (DCR)をサポートしていないリモートMCPサーバーに対して、認証プロバイダーの認証フローを実行する際に使用するクライアントIDなどを独自に指定できるクライアント資格情報フローを導入した。また、アカウントのメニューに「動的認証プロバイダーの管理」が表示されるようになり、動的認証プロバイダーをここから削除できるようになった。


プロジェクトにおける基本的な「AI使用状況の統計」がプレビュー機能として追加された。この機能を使うには、設定でeditor.aiStats.enabledを有効にする必要がある。有効にすることで画面右下のCopilotのアイコンの隣にゲージが表示されるようになり、プロジェクトにおいて、AIによって挿入された文字数と、ユーザーが入力した文字数の割合を確認できるようになる。またこのゲージから、その日にインライン提案を承認した回数も確認できる。


GitHubのプルリクエストとIssueの管理や作業をおこなえるGitHub Pull Requests拡張機能の最新版(0.116.0)と併用することで、バックグラウンドで動作するGitHub Copilotコーディングエージェント機能が利用できる。

今回、GitHub CopilotコーディングエージェントをUIから実行したときや、先月導入されたチャットで使える#copilotCodingAgentツールから実行したときに、コーディングエージェントのセッションを管理するための機能が実装された(なお、#copilotCodingAgentツールは、保留中の変更をリモートブランチに自動的にプッシュし、ユーザーの指示に従ってそのブランチからコーディングエージェントセッションを開始する機能⁠⁠。これにより、該当のコーディングエージェントチャットからエージェントの進捗状況の確認、フォローアップ指示の提供などをおこなえるようになった。

このコーディングエージェントセッションやローカルのチャットセッションを管理しやすくするために、設定でchat.agentSessionsViewLocationを有効にすることで、VS Code サイドバーに「チャットセッション」アイコンを表示できるようになった。viewに設定すれば、ローカルチャットセッションとコーディングエージェントセッションを管理および操作でき、showChatsMenuに設定するとコーディングエージェントチャットセッションがローカルチャット履歴と並んで表示されるようになる。

詳しくは、今月の更新の該当項公式ドキュメントの「GitHub Copilot coding agent」ページを参照のこと。


VS Codeの拡張機能の実装面では、アクティベーションイベントの追加、チャット上でMermaidの図を出力したりすることができるChat Output Renderer APIの追加、⁠GitHubコーディングエージェントで利用されているような)独自チャットバックエンドとチャットUIとの統合を可能とする新しいChat Session Provider APIの追加がおこなわれた。


Git関連では、Gitワークツリーをサポートした。ワークツリーを使用すると複数のブランチを一度にチェックアウトできるため、コンテキストを切り替えることなく変更のテストや並行作業を簡単に行うことができる。

ターミナルではLSPによるインラインドキュメント表示や音声ディクテーションが可能となり、シェル統合診断も強化された。

プログラミング言語では、Python 3.13以降のシェル統合、Python環境拡張の改善、TypeScript 5.9.2の同梱、JavaScript/TypeScriptの型情報展開UI追加など、多数の強化が行われた。

VS CodeのベースはElectron 37(Chromium 138/Node.js 22.17.0)へ更新されている。

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