12月18日より
スマホ新法のポイントをまとめると以下の4点です。
- アプリストアの縛りを緩和
- 決済方法の強制を禁止
- 標準アプリの優遇を禁止
- 競争を妨げる設計の禁止
公正取引委員会が監督し、違反すると是正命令や売上ベースの課徴金が課される可能性があります。ぞれぞれ、どのような内容で、影響範囲はどの程度になるのか順に見ていきます。
①アプリストアの縛りを緩和
これは、以下のガイドラインが示されています。
- 特定のアプリストアのみを強制することを禁止
- サードパーティ製のアプリストアを妨げてはならない
アプリ開発者にとっては、アプリが公開できるストアの選択肢が増えることになります。これにより、特定のプラットフォームへの依存が低減されます。たとえば、既存のストアで受け入れ難いルールー変更があったときに、別のストアでアプリを販売することが可能になります。
これまで、複数の選択肢がなかったので、こうした動きが取れませんでした。とはいえ、ストアが複数存在することがスタンダードになると、アプリ公開時の手間が増えることにはなります。
また、ユーザにとっては、複数ストアが存在することで競争が起こるはずです。たとえば、同じアプリでも価格差が出て安く入手できるストアが出る可能性があります。ただし、複数のストアが存在して、どのストアからアプリを入手すれば良いのか判断しづらい状況になります。また、こうした状況を悪用しようとする輩も出てくるはずで、当面は、注意する必要があります。
最近の話では、ストアのアプリ内課金のルールに従うために、Kindleアプリから書籍を購入できなくなり不便になりましたが、これが元に戻る可能性は考えられます。
②決済方法の強制を禁止
これは、以下のガイドラインが示されています。
- アプリ内課金で自社決済を強制しない。
- 外部決済や他社決済への誘導を妨げられない。
アプリ開発者にとっては、お仕着せの課金方法だけでなく自前の決済方法が使えます。たとえば、支払い手数料に不満があるならば、自ら用意した決済システムを使えます。これが価格に反映されれば、ユーザにとっても朗報です。また、自ら用意した決済システムを使うことで、ユーザの支払い体験を理想の形に近づけることもできます。
ユーザにとっては、これまで使えなかった決済方法で支払いができる可能性が出てくるので、より使いやすくなります。とはいえ、悪意を持ったアプリがアプリ内課金で、ユーザが意図しないうちに決済させる手法も考えられなくありません。これも、当面は、注意する必要があります。
③標準アプリの優遇を禁止
これは、検索エンジン、Webブラウザ、音声アシスタントなどを初期設定で固定したり、削除不可にしないようにとガイドラインが示されています。
対象サービスやアプリを開発する者にとっては歓迎すべきことです。
Google Chromeは、初回起動時に使用するブラウザを選択する画面を表示しないので、初回起動時に選択する画面が表示されれば、アプローチできなかったユーザにアプローチできる可能性があります。
④競争を妨げる設計の禁止
標準アプリ優遇とも関係します。
たとえば、Google Chromeは標準で既定のアプリに設定されています。よって、初回起動で既定のWebブラウザを選択する画面が表示されません。設定画面で既定のWebブラウザを変更はできますが、わざわざ変更するユーザは多くはいないはずで事実上標準として使われているので、競争を妨げる設計と考えられます。
同じブラウザ関連でいえば、WebViewが事実上Google Chromeのような状況です。無効にすると挙動が変わる端末も存在しており、アプリとWebViewが分離されておらず、競争を妨げる設計と考えることもできます。
一方で、もしWebViewがGoogle Chromeから分離されることになれば、Chromeの仕様変更にWebViewが影響を受けることもなくなりますが、古いAndroidでは分離されていたので、この動きは先祖返りとなります。
開発効率やメンテコストを軽減するために、今のような形になったはずなので、どうあるのが良いか判断に悩むところです。
今週は、このあたりで、また来週。
