OSSデータベース取り取り時報

第125回MySQLとPostgreSQLの2025年重大ニュース

あけましておめでとうございます。この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。新年の今回は毎年恒例、OSSデータベース分野での年間重大ニュースを中心にお伝えします。

2025年の重大ニュース〔手前味噌編〕

2025年はちょっと手前味噌な重大ニュースがあった年でした。

1 OSSデータベース取り取り時報とデータベース部会が10周年
8月にこの「OSSデータベース取り取り時報」は第120回となり、10周年を迎えることができました。また、この記事を担当しているOSSコンソーシアムのデータベース部会も、2015年8月に発足し活動を開始しましたので、同じく10周年を迎えました。
また10周年にあたり、オープンソースカンファレンスの場にて記念セミナーを実施しました。「DX♥←データ活用民主化!←OSS?」 を8月に、「データ活用の現状と近未来 —⁠— データベースからデータスペースへ」を10月に開催しました。

[MySQL]2025年の重大ニュースと2025年12月の主な出来事

12月はMySQLサーバーのバージョンアップはありませんでした。前回の原稿締め切り後にMySQL Shell for VS Code 1.19.18+9.5.0がリリースされ、組み込まれているMySQL Shellが9.5.0になっています。11月4日には証明書のインストール時のバグを修正した1.19.19+9.5.0がリリースされています。また12月12日に1.19.20+9.5.0がリリースされ、JSON Duality ビューの定義をGUIで設定できるJSON Duality View Visual Builderが追加されました。

2025年MySQL重大ニュース

MySQLの2025年を特徴付けるニュースや気になったニュースをまとめてみました。

1 MySQLリリース30周年
1995年に最初のバージョンが公開されてから30年となった2025年には、全世界で記念イベントが開催されました。世界各地での30周年記念イベントの模様を紹介する動画の1分12秒あたりに3月25日に開催された、日本MySQLユーザ会の25周年記念を兼ねた東京でのイベントの模様も映っています。
2 新製品MySQL AIリリース
ここ数年はクラウド版のMySQL HeatWaveの機能拡張が多く行われていましたが、久しぶりにソフトウェア版MySQLの大型新機能が登場しました。MySQLサーバーにLLM(大規模言語モデル)や機械学習エンジン、GUIツールのMySQL Studioを統合したMySQL AIが9月に発表されました
オンプレミスやIaaS上にてデータベース単体で機械学習やAIアプリ開発が可能なほか、マネージドサービスではないためネットワーク接続が制限された環境やオフラインでも機械学習やLLMが利用できる点が特徴となります。
3 自然言語でデータの検索や分析が可能なNL2SQL
MySQL HeatWaveやMySQL AIに組み込まれたLLMを活用して、自然言語の問い合わせをSQL文に変換し、処理を行うNL2SQL ⁠Natural Language to SQL)がリリースされました。スキーマやテーブル、列の定義、およびそれぞれに付けられたコメントを文脈として、最適なSQL文を生成し、実行できるようになっています。
4 AI活用のための機能強化
MySQL HeatWaveでは、イン・データベースLLMと呼ばれるサービスに組み込まれたLLMと、OCIの生成AIサービスで提供されるLLMの両方が利用可能となっています。画像から説明の生成やPDFを画像として認識しての分析、画像の種類の分類などを行うOCIのVision Language Models ⁠VLMs)もサポートしています。
またベクトル・ストアへのインデックスや、通常のデータ検索とセマンティック検索を同時に行うハイブリッド検索、オープンテーブルフォーマットであるDelta Lakeのデータを取り込んでベクトル生成を行うなど、AIを活用したアプリケーションで求められる機能の強化が続けられています。
5 JSON関連機能の機能強化
MySQLの新機能をアルファ版の段階で公開するMySQL Labsで公開されている、MySQL REST Service ⁠MRS)をMySQL HeatWaveと組み合わせたHeatWave REST Serviceが5月にリリース。アプリケーションからMySQL HeatWave に対してJSONを利用したRESTfulなアクセスが可能となりました。
データベースの表とJSONドキュメントをシームレスに利用可能とするJSON DualityビューがMySQLサーバーに実装されました。JSON Dualityビュー経由のデータの参照はコミュニティ版MySQLサーバーでも利用可能ですが、商用版のMySQL Enterprise EditionとMySQL HeatWaveでは参照に加えて更新も可能となっています。

MySQLコミュニティの忘年イベント

12月ということで、12月9日にMySQL HeatWaveのユーザ会であるHeatWavejpの年末恒例の事例祭り & オフライン忘年会が開催されました。事例としてKDDIグループでサイバーセキュリティのスペシャリスト集団である株式会社ラックや、株式会社スクウェア・エニックス、株式会社メンタルヘルステクノロジーズでのMySQL HeatWaveのリージョン間レプリケーションを構築した株式会社Cloudiiから、それぞれのMySQL HeatWave利用の経験や検証時のポイントなどが共有されていました。

また、日本MySQLユーザ会は6年ぶりにオフラインでの年末イベントを12月19日に開催しました。会場には書籍『MySQL徹底入門』の著者も数多く顔を揃え、⁠望年LT大会」として緩い雰囲気の中で、技術的にはディープな講演や書籍の読書会の報告、またオンラインで開催されるMySQLアンカンファレンスの紹介などが行われていました。当日の雰囲気は日本MySQLユーザ会副代表の坂井さんのブログをご覧いただければと思います。

次のLTSリリースに向けて

予定通りであれば、2026年1月の中下旬にはMySQL 9.6.0が次のLTSリリース前の最後のイノベーション・リリースになります。そして4月にはいよいよMySQL 9.7.0がLTS(Long-Term Support)リリースとなり、同時に2018年にGAとなったMySQL 8.0が新規パッチの提供されないSustaining Supportのフェーズに突入します。MySQL 9.xのイノベーション・リリースという名称の割には、グローバル・トランザクション・ID(GTID)がデフォルトで有効になるなどのそれなりにインパクトのあるデフォルト設定の変更こそあるものの、これまでは大きな機能追加が行われたとは言いづらい状況です。コミュニティからも「⁠⁠マイナー・バージョンなのに機能追加が次々行われた)MySQL 8.0の方がよっぽどイノベーション・リリースっぽかった」という声が上がるほどです。1月のMySQL 9.6.0および4月の9.7.0で大きな機能追加があるのか、もしくはMySQL 8.4から差分が限定的で移行しやすいバージョンとなるのか、ぜひご注目ください。

この連載のMySQLパート担当としては、2025年11月の第123回に初めてPostgreSQLパートも担当させていただき、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上のPostgreSQLのマネージドサービス⁠OCI Database with PostgreSQL⁠の記事を書いたことと、連載開始から10年間、120回以上途切れることなく記事を書き続けていることが2025年の重大ニュースでした。

[PostgreSQL]2025年の重大ニュースと2025年12月の主な出来事

ここ1ヵ月間はPostgreSQL本体や主要ツールのバージョンアップはありませんでしたので、2025年の重大ニュースを中心にお伝えします。

2025年PostgreSQL重大ニュース

PostgreSQLについても、2025年を特徴付けるニュースや気になったニュースをまとめてみました。番外として、重大ではありませんが毎年恒例のおまけ情報を付けました。

1 PostgreSQL貢献者ページに日本人5人を含む24人が新たに加わる
PostgreSQL貢献者ページには、PostgreSQLプロジェクトに長期間にわたり多大な時間と労力を費やしてきた人々が掲載されています。2025年1月27日、新たに24人の方々が加わり、その中には5人の日本の方たちも含まれていました。年初にうれしいニュースでした。
2 国産RDB劔⁠Tsurugi⁠が新しいDBの活用可能性を見せ始める
OSSとして開発・公開されている国産のRDBMS劔⁠Tsurugi⁠は、2024年に正式版がリリースされました。そして2025年は、年間を通して革新的で興味深い採用事例が次々と発表されました。
3 新メジャーバージョン18がリリース
PostgreSQLのメジャーバージョンのリリースは、定期的に秋にリリースされるスケジュールで、それがきっちりと守られています。そのためリリース自体に驚きはありませんが、PostgreSQL関係者の最大の関心事であることに変わりはありません。この連載でも、2025年に6回もこの新メジャーバージョンを取り上げています。
  • 第117回:バージョン18に関するリリース前情報

  • 第118回:最初のベータ版がリリース

  • 第120回:ベータ2がリリース

  • 第121回:ベータ3がリリース

  • 第122回:バージョン18が正式リリース

  • 第124回:バージョン18.1がリリース

4 脆弱性情報が気になった1年
セキュリティ面での脆弱性情報が気になるのは2025年に限った話ではありません。ただ、2025年はPostgreSQLと関連ツールでいくつか気になる脆弱性の修正情報が流れました。
  • 第115回:PostgreSQL 17.3⁠、16.7⁠、15.11⁠、14.16⁠、13.19のリリース(脆弱性修正の緊急リリース)

  • 第116回:SQLインジェクションによってアメリカ財務省への侵入に使用

  • 第118回:Pgpool-IIのセキュリティ脆弱性修正バージョンがリリース

  • 第121回:pg_dump等のセキュリティ脆弱性を修正したアップデートがサポート中の全バージョンを対象にリリース

  • 第124回:最新バージョン18を含むセキュリティ脆弱性を修正したマイナーリリース

5 日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)による「データベース利用調査報告2025」
10月に開催されたPostgreSQL Conference Japan 2025 にて、日本国内を対象にした「データベース利用調査報告2025」の結果が発表されました。この調査はPostgreSQLに限らず各種のDBMSを対象にしたものです。アンケート結果での総合順位が意外な結果であったり、各DBMSで使われているバージョン番号に発見があったりと、とても興味深い結果になっています。
6 更に充実するクラウドベンダが提供するマネージドサービス
オラクルのクラウドサービスであるOracle Cloud Infrastructure(OCI)上でPostgreSQLが提供されていることを、第123回(11月)に取り上げました。実は以前から提供されていたものでしたが、マーネージドサービスを提供しているクラウドベンダーでは、PostgreSQLが使えるのが当たり前になっていることを示す話題でした。
番外 8月に広島市安佐動物公園でゾウの赤ちゃんが誕生
毎年、PostgreSQLのマスコットキャラクターSlonikにちなみゾウの赤ちゃん誕生のニュースを探しています。ちょうど1年前のこの連載「広島市の安佐動物公園で無事に誕生することを願うクラウドファンディングが実施中」というお知らせを載せていましたが、8月5日にマルミミゾウの赤ちゃんが誕生し、愛称が「アオ」と名付けられました。PostgreSQLのSlonikも青色ですのでなんとなく縁を感じます。

バッチとオンラインを並列実行したときのTsurugiとPostgreSQLの比較

前述の重大ニュースでも取り上げた劔⁠Tsurugi⁠ですが、その特徴に「バッチとオンラインを同時に高速処理」「メニーコア環境の性能をフルに引き出せる」ことが上げられています。実際どうなのでしょう。

12月5日に「バッチとオンラインの並列実行〜TsurugiとPostgreSQLでの比較〜」という記事がnoteの劔⁠Tsurugi⁠に関する技術ブログ記事として掲載されました。これによると、論理96コア環境でオンライン処理を1並列から192並列まで増やして実行したところ、1秒あたりの処理数がPostgreSQLでは約32倍まで伸びましたが、Tsurugiは約150倍まで伸びる結果が報告されています。記事では、どのような環境でどのようなデータ処理を行ったのかが解説されています。

PostgreSQL 18.0から18.1への変更点の詳細情報

PostgreSQLの最新バージョンは18.1で、2025年11月にリリースされたばかりのものです。12月15日、SRA OSSから「PostgreSQL 18.1 に関する技術情報 / PostgreSQL 18.0 から 18.1 への変更点」の技術レポートが公開になりました。変更点のひとつひとつを取り上げて解説し、SQLの実行例なども併記された、とても丁寧な解説です。

2026年1月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

オープンソースカンファレンス(OSC)〔1月〜3月開催分〕

日程 〔Osaka〕2026年1月31日(土)10:00~17:45
〔Tokyo/Spring〕2026年2月27日(金⁠⁠、28日(土)10:00〜18:00
場所 〔Osaka〕大阪産業創造館 3F-4F
〔Tokyo/Spring〕駒澤大学 駒澤キャンパス 種月館(東京都世田谷区)
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。現在は開催地域によってオンラインとオフラインで開催しております。
〔Osaka〕セミナー・展示ともに現地開催です。プログラムは12月下旬から公開の予定です。
〔Tokyo/Spring〕セミナー・展示ともに現地開催です。出展者募集中です。
OSSコンソーシアムはOsakaとTokyo/Springの両方でセミナーを開催予定です。また、その他のOSSデータベース関連の発表の詳細は、公開されるプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQL Technology Cafe リターンズ(テーマはJSON関連)

日程 2026年1月28日(水)19:00〜21:30
場所 オンライン
内容 MySQLの技術ネタをあれこれご紹介するMySQL Technology Caféが帰ってきました。テーマはMySQLのJSON関連機能を予定しています。MySQLサーバーのJSONデータ型、NoSQL APIであるMySQLドキュメント・ストア、MySQL REST Service, そしてJSON Dualityビューなどの技術解説を想定しています。申し込みサイトは近日公開予定です。また開催はオンラインのみの予定です。
主催 Oracle Code Night

新春恒例 MySQL入門セミナー パフォーマンスチューニング編 2026

日程 2026年1月29日(木)調整中
場所 日本オラクル株式会社 本社 セミナールーム
内容 新春恒例のMySQLのチューニングセミナーは2026年も開催!このセミナーではMySQLのチューニング時に役立つさまざまな機能やチューニングの基礎知識を解説します。MySQLをディープに触る予定の方や今までMySQLは使っているけどMySQLについてきちんと勉強したことが無いといった方もぜひご参加ください。申し込みサイトは近日公開予定です。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

HeatWavejp主催 HeatWavejp Meetup #17

日程 2026年2月12日(木)18:00〜21:30
場所 [オフライン会場] PASONA SQUARE ⁠東京都港区南青山3-1-30)
[オンライン会場]オンライン(Zoom)
内容 HeatWavejpは、MySQL HeatWave の良さを知っていただき、参加者同士でノウハウやナレッジを共有できるユーザーコミュニティです。#17はAIに関連したテーマで開催予定です。HeatWavejpメンバーの皆さん、初参加でもMySQL HeatWaveに興味のある方は、是非、オフライン会場にお越しください!!
主催 HeatWavejp(MySQL HeatWave Japan User Group)

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