「コードを書くだけ」自分を卒業する⁠ヌーラボが社内外から“起業家”募る「Nu Source」は⁠エンジニアのキャリアを⁠そして⁠世界をどう変えるのか

インターネットが普及し、誰もがスマホを持って各種ネットサービスを使えるようになり、10年以上が経過しました。この間、プログラマーをはじめとしたエンジニアの需要が増え、また、スキルの高いエンジニアの価値は年々高まっています。

そうしたエンジニアが生み出すソフトウェア、その元となるプログラム(コード)はとても重要ですが、必ずしも素晴らしいコードが成功するビジネスにつながるわけではありません。

スケーラビリティを考慮したアーキテクチャ、美しいUI、質の高いリファクタリング。それらはエンジニアリング視点では正義と言えますが、ビジネス視点で見たときに「顧客が本当に求めているもの」を見失う原因、もっと言えば弊害になる危険性があります。そして、技術だけを追求した結果、誰にも使われない機能を最高品質で作ってしまうかもしれないのです。

インターネットを核にしたビジネスを考えるうえで、こうした葛藤に直面するエンジニアも多いのではないでしょうか。

「作る力」を持つエンジニアが、その先にある「売る力」⁠事業にする力」を手にしたとき、一体どんなイノベーションが生まれるのか。

「Backlog」「Cacoo」など、エンジニア発のツールをグローバルSaaSへと成長させてきた株式会社ヌーラボ。同社が開始したのが、今回紹介する「Nu Source(ヌーソース⁠⁠」です。Nu Sourceは社内外から事業アイデアを公募する新規事業創出プログラムとして、今注目を集めています。

Nu Source(ヌーソース)
https://nusource.nulab.com/ja/

Nu Sourceとは

Nu Sourceは単なる「ビジネスコンテスト」でも、資金だけを渡す「投資」でもありません。ヌーラボが培ってきた⁠開発とビジネスをつなぐフィジビリティ⁠を、次世代のエンジニア起業家に注入するエコシステムです。

Nu Sourceのイメージ

ここでは、同社代表取締役 橋本正徳氏と新規事業創出プログラムの責任者でもある安立沙耶佳氏への取材を交えながら、Nu Sourceが目指す世界と、エンジニアが「プロダクトオーナー」へ進化するためのヒントを探ります。

橋本氏と安立氏

なぜ「良いコード」「良い事業」にならないのか

多くのエンジニアが新規事業に挑戦する際、最初に直面することの1つとして「MVP(Minimum Viable Product)の罠」が挙げられます。

多くのエンジニアはプロダクト開発をする際、要件を満たすための機能実装に加え、将来性を考えて作り込みたくなるでしょう。たとえば、将来の負荷を見越してKubernetesを使ったり、SPA(Single Page Application)でリッチな体験を作りたくなる、言ったことです。しかし、事業での成功を見据えたプロダクト開発の初期フェーズで最も重要なのは「技術的な正しさ」ではなく「顧客(ユーザ)の課題検証」です。

この点について、橋本氏は次のように語りました。

「私たちも福岡の受託開発会社からスタートし、自社プロダクトを生み出す過程で数多くの経験を積みながら、ときに失敗を重ねてきました。だからこそわかるのですが、エンジニアにとって⁠コードを書かない⁠という選択は苦痛です。しかし、Nu Sourceではあえて⁠開発フェーズの初期では必要以上にコードを書かないことも大切⁠と伝えることがあります。事業のためのプロダクトにとって大事なのは「顧客(ユーザ)への価値提供」です。

ですから、たとえばプロトタイプより手前の価値を説明できるプロセスをしっかり設け、AIを活用して画面イメージを作ってみるなど、そこから始めることも選択肢として勧めます。⁠ノーコードのプロダクトという)将来的な技術的負債を恐れるあまり、検証のサイクルを遅らせてしまっては本末転倒だからです⁠⁠。

「Backlog」が成功した背景には、自分たちが欲しいものを自分たちで作る「ドッグフーディング」の文化がありました。しかし、それ以上に「チームのコラボレーションを円滑にする」というコアバリュー、すなわちユーザへの価値提供への執着があったからこそ、機能の取捨選択ができ、今に至っているわけです。

Nu Sourceは、こうした「エンジニアが陥りがちな罠」を先回りし、技術への愛を正しい方向─⁠─つまり「ユーザへの価値提供」へとナビゲートする役割を果たす⁠場⁠⁠、もっと言い換えるとコミュニティと考えても良いのかもしれません。

VCとは違う⁠「事業会社」ならではの伴走

具体的にNu Sourceは何を提供するのでしょうか。一般的なVC(ベンチャーキャピタル)やアクセラレータとの最大の違いは、ヌーラボが「⁠⁠現役の⁠プロダクト開発を行う事業会社」であるという点です。

選考を通過したプロジェクトには、活動資金や研究開発費のサポートに加え、ヌーラボ社内のリソースを活用したメンタリングが提供されます。メンター陣の顔ぶれも多彩で、経営陣によるビジネス面の壁打ちはもちろん、技術的な相談相手として現場のエンジニアやセキュリティ、ファイナンスといったメンバーも揃っています。

「たとえば、サービスが成長フェーズに入ったとき、SRE(Site Reliability Engineering)の視点は不可欠です。しかし、初期のスタートアップが優秀なSREを採用するのは至難の業。Nu Sourceで選考を通過したプロジェクトの場合、開発を進めながらヌーラボのインフラチームやセキュリティチームの知見を借り、また、段階的にスケーラブルな構成を相談することも可能です。これは技術者にとって、非常に心強い開発者体験になるはずです」⁠橋本氏⁠⁠。

とくに社外からの応募者にとっては、⁠ヌーラボという企業、さらにはヌーラボも参加している大きなコミュニティ」の一員としてプロジェクトを遂行できることと同義です。このコミュニティは、開発側の立場だけではなく、これまでヌーラボが関わってきたパートナー、さらにはBacklogなどのプロダクトのユーザまで含めた意味を持ちます。

Nu Sourceに参加すること――それは、自分たちのアイデアに、ヌーラボの技術力とマーケティング力を掛け合わせることです。そこから生まれる化学反応こそが、Nu Sourceが狙っている本当の目的と言えるでしょう。

技術的負債は「悪」ではない─⁠─フェーズを見極める力

ここまでNu Sourceについて、エンジニア目線としながらも、ビジネス寄りの話題を中心にエンジニアが陥りやすい注意点を中心に紹介してきました。ここで、勘違いしてほしくないのは、エンジニアがビジネス視点を持つことは「技術を軽視する」ことではないということです。むしろ、技術の使いどころを見極める、野球のバッターで言うところの「選球眼」を養うことに他なりません。

Nu Sourceのプロセスを通じて参加者が学べるのは、フェーズに応じた判断力、その本質となるアーキテクチャ選定の勘所です。たとえば、0→1の検証フェーズでは、捨てられる前提のコードを書く勇気を持つという考え方。1→10の拡大フェーズでは、堅牢性と保守性を重視した設計へのシフト。

このマインドチェンジのタイミングこそが、CTOやテックリードに求められる資質であり、事業成功の鍵を握ると言えるでしょう。そして、このマインドチェンジは、単に立場やキャリアの変更に紐づくものだけではなく、コーディングの価値が変わったAI時代において過去の実績やルールにとらわれないなど、自分自身の価値観のスクラップ&ビルドといった考え方も含みます。

「フレームワークや既存のツールを使いすぎると技術的負債が生まれやすいと言われます。もちろんそれが事実の側面はありますが、技術的負債は必ずしも悪だとは私は考えていません。ツールの力で効率的に未来の時間を前借りして現在のスピードを買う行為とも考えられるからです。その点で、最近の生成AIの進化とその利活用は、まさにその前借りを積極的に実践できる時代になったと言えますね。

エンジニアとして重要なのは、それ(前借り)⁠意図してやっているか⁠どうかです。Nu Sourceでは、そうした技術経営的な視座も養ってほしいと考えています」⁠安立氏⁠⁠。

「コードを書くだけ」の自分を卒業する

フェーズにもよりますが、Nu Sourceは現在所属している会社や個人の事業を辞めずに応募することも可能です。これは、サイドプロジェクトとして情熱を注いでいるエンジニアにとって、大きなチャンスと言えるのではないでしょうか。もし、事業化に至らなかったとしても、このプロセスで得られる経験は計り知れないはずです。

自分のコードで課題を解決する。その課題は、誰のどういうものなのか――それを突き詰めていくことはエンジニアの宿命でもあり、本懐とも言えます。

その結果(プロダクト)を社会実装するためには、コストとリソースの制約の中で最適な解を実装する経験が必要です。Nu Sourceでは、いち開発者から「事業を創れるエンジニア」へのレベルアップをサポートするとともに、エンジニア自身の市場価値を高めることにもつながります。

「私たちは、エンジニアが持つ技術への探究心、そして、社会実装に対する強い想い、その2つを併せ持つエンジニアを待っています。エンジニアの皆さんが書くコードには、社会を、そして、世界を変える力があります。その力を、趣味の範囲で終わらせるのか、社会インフラとなるような事業へと昇華させるのか。Nu Sourceが、その分岐点になれば嬉しいですね」⁠橋本氏)

今、皆さんの手元のコンピュータの中に、未来の「Backlog」の種(アイデア)が眠っているかもしれません。そのアイデアを、ヌーラボとともに育ててみたい、そう考えているエンジニアはぜひNu Sourceにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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Nu Source第3期アイデア募集中!2026年3月13日まで

Nu Sourceは第3期アイデア募集期間中。3月13日(金)まで、事業アイデアの応募を受け付けています。どんなアイデアを応募するか、まだ検討中の方も、個別相談会でご相談ください。

プレエントリー:https://forms.gle/78bwHiYqyR268mqJ7
⁠プレエントリーすることで、本エントリーのエントリーシートが送られてきます)

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