OSSデータベース取り取り時報

第127回オープンソースカンファレンスOsaka報告⁠MySQLのコミュニティに向けた方針発表⁠PostgreSQLの緊急リリース

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

IPAの「DX動向2025」「ソフトウェア動向調査」を肴におじさん5人が愚痴る45分

1月31日に開催されたオープンソースカンファレンス Osaka(OSC大阪)で、私たちOSSコンソーシアムが行ったセミナーを紹介します。

OSSコンソーシアムで活動している各分野のエキスパートが集まり、業界動向の調査データを眺めながら「なんでこうなるの?」などの率直な意見を聞いてみる企画です。IPAが調査・公開している「DX動向2025」「ソフトウェア動向調査」という調査レポートを取り上げました。OSS関連の調査結果もありますが、OSS以外にもDX推進やIT分野全般も話題にしています。

《登壇メンバー》
  • 竹岡尚三(株式会社アックス)
  • 内田太志(株式会社インプリム)
  • 野原直一(株式会社ウェブチップス)
  • 梶山隆輔(日本オラクル株式会社)
  • 溝口則行(TIS株式会社/独立行政法人情報処理推進機構(IPA⁠⁠)

ここでは、データベース分野とも関連するデータ活用について取り上げます。ネタ元は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)2025年に公開した「DX動向2025」で、この調査では日本・米国・ドイツの3国で同じアンケート調査をしています。調査の1項目にデータ利活用の目的を訊ねたものがありますが、米国やドイツと比較して、日本では「バックオフィス業務の効率化」「経営管理の向上」が際だって多くなっています。つまり自社内だけで、しかも管理業務での利用に留まっていると言えます。そのため、別の調査項目の「データの企業間連携の状況」を見ると、米国やドイツが社外組織とのデータ連係を積極的に行っていて、日本がかなり遅れている状況がはっきりしています。日本企業にもデータを活用して価値を生み出すことに目を向けて欲しいと思いますし、データベースエンジニアの活躍の場がそちらにも広がることを期待しています。

IPA「DX動向2025」からデータの企業間連携の状況(国別)
IPA「DX動向2025」からデータの企業間連携の状況(国別)

このセミナーでは、データ活用の他にOSSの採用や取り組み、OSS以外の技術面の観点として内製化・アジャイル開発・ノーコード/ローコード開発などについても取り上げて議論をしました。座談会の様子は動画でも公開しています。興味を持たれたらご覧ください。

OSC大阪での座談会の様子
OSC大阪での座談会の様子

データベース分野の勢力図に関わる報告やブログがいろいろ

1月から2月にかけて、データベース分野の勢力図に関わる情報がいろいろと集まりました。年が変わって「2026年の」と銘打った発表が各方面から出されたのでしょう。

ここではOSSデータベースを話題にしているブログや記事を紹介しますが、私たちとしては特定の意見に加担するものではありません。ただ、やっぱり「どのデータベースを使うか?」はいつも変わらず重要な関心事項の様子です。読者の皆さんもOSSデータベースの選択理由を訊ねられることが多いでしょうから、下記に紹介するいずれかが参考情報になれば幸いです。

もうひとつ、ちょっと観点は違いますが、MySQLやPostgreSQLなどの性能向上に寄与するかもしれない参考情報もありました。

OSS鳥瞰図2026年2月版が公開

2月19日、日本OSS推進フォーラムの鳥瞰図ワーキンググループが継続的に改訂している「OSS鳥瞰図」の2026年2月版が公開されました

OSS鳥瞰図にはメインカテゴリにデータベースがあり、主要なOSSデータベースが列挙されています。他にもビッグデータ処理関連は別のメインカテゴリに分けてあったり、業務アプリケーションやWebサイト構築、昨今話題のAI分野など、データベースの隣接領域のOSSも多数掲載されています。

[MySQL]2026年2月の主な出来事

2月はMySQLサーバーのバージョンアップはありませんでした。1月29、30日にベルギーで開催されたイベントpreFOSDEM MySQL Belgian Days 2026にて、今後のMySQLのコミュニティとの連携の方針に関する重要な発表が行われました。この発表をいち早く国内のMySQLコミュニティにも届けるため、日本MySQLユーザ会のイベントも2月6日に緊急開催されました。

MySQL HeatWaveのサポート期間の延長

MySQL 8.0は4月に新規パッチの提供が終了するSustaining Supportのフェーズに入りますが、クラウド版のMySQL HeatWaveについては追加費用無しでサポート期限が2027年4月まで延長されることが発表されました。新しい8.0のインスタンスを作成することやシェイプ(スペック)変更、読み取りレプリカの追加、また8.0のインスタンスのバックアップから8.0へのリストアが不可となるなど制限があるため、なるべく早めのMySQL 8.4 LTSなどへのバージョンアップをお勧めします。なお、このサポート延長はMySQL HeatWaveのみが対象で、ソフトウェア版のMySQLサーバーは対象外となっていますのでご注意ください。

MySQLの開発チームの役員交代と新たな戦略の策定

ここ数年、MySQLの製品開発や新機能の投入がクラウド版のMySQL HeatWave中心となっていて、MySQLサーバー本体への機能強化が限られており、コミュニティから批判の声が上がることも少なくありませんでした。2025年4月に開催されたMySQL and HeatWave Summit 202510月のOracle AI World 2026では、徐々にMySQLサーバーへの注力に言及する機会も増えてきていましたが、商用版のMySQL Enterprise Editionの機能の強化が中心でした。

ヨーロッパ最大級のオープンソース・ソフトウェア(OSS)のカンファレンスであるFOSDEM 2026の開催に合わせて、preFOSDEM MySQL Belgian Days 2026が開催され、このイベントの冒頭で、MySQLの開発チームを担当する役員の変更とMySQLのコミュニティに向けた重要な方針が発表されました。

これまでオラクル社内でも独立した体制だったMySQL開発チームを率いていたのは、オラクルの生え抜きのメンバーでOracle DatabaseのXMLデータベース機能の開発に携わっていたほか、オラクルの研究開発部門で長年にわたり分散処理や機械学習の研究を行っていたNipun Agarwalでした。今回の発表で、MySQLの開発部門はOracle Cloud Infrastructure(OCI)の部門となり、統括する役員層が一新されました。MySQLの開発チームはOCI PostgreSQLを含むオープンソースのデータベース系製品の開発を統括するJason Wilcoxが率いる部門の1つとなっており、新しい役員によって新たな製品戦略の策定と、その一端としてのMySQLコミュニティ向けの方針が発表されています。

コミュニティに向けた新方針

新たな方針は三本柱からなっています。

  1. デベロッパー向け機能をコミュニティ版への積極的な提供
  2. エコシステムの拡大と強化のためのツール群の拡充
  3. MySQLコミュニティとの連携のための透明性の向上

1点目は、これまでMySQL Enterprise EditionやMySQL HeatWaveでしか利用できなかった機能のうち、アプリケーション開発者に役立つ機能を積極的にコミュニティ版にも提供する方針です。残念ながらこれまでのコミュニティ版では、不可解な形で一部の機能に制約がありましたが、これを改善しようというものです。代表的なものは、MySQL 9.0.0でベクトル・データを格納するVECTOR型が追加された際、ベクトルを扱う上で一番重要なベクトル間の距離を演算するDISTANCE関数はMySQL HeatWaveのみで利用でき、コミュニティ版やMySQL Enterprise Editionでは利用できず失望の対象となっていましたが、コミュニティ版でも利用できるようにすると発表されました。

2点目は、具体的な項目は検討が進んでいるところですが、一例としてはMySQL 9.6.0で実装されたMySQLサーバー本体での外部キーの処理です。これまでのMySQLでは、外部キーはストレージ・エンジン側で処理されていました。大がかりなリファクタリングを行ってストレージ・エンジンではなくMySQLサーバーで処理することになり、Change Data Capture(CDC)など変更の追跡と拡張性の向上に役立つことが期待されています。

3点目も、具体的な方法はこれから発表されていくことになりますが、より多くのMySQLコミュニティからの声を受け入れ、またMySQLサーバーの開発に関わっていただく仕組みを検討中としています。

コミュニティ版のMySQL 9.7 LTSに導入される機能の候補

現時点でMySQL Enterprise EditionやMySQL HeatWaveのみで利用可能な機能のなかで、4月にリリース予定のMySQL 9.7 LTS コミュニティ版に含まれる可能性のある機能は以下の通りです。

[デベロッパー向け]
  • PGOで最適化したコミュニティ版バイナリ
  • ベクトル関数(Al対応:コサイン、ユークリッド、ドット積)
  • ハイパーグラフ・オプティマイザ(コミュニティからのインプットが必要)
  • JSON Duality(DMLの利用) ※現時点ではSELECTのみ可
[セキュリティや運用関連]

なお、利用しているライブラリなどのライセンスの整合性、下位互換性、実装の難易度など多角的な観点で検証を行ったうえで、追加されるこれらの以外の機能もありえる一方で、場合によっては4月のリリースに間に合わないものが出てくる可能性もあります。

また、今後のリリースサイクルのタイミングでも、どの機能をコミュニティ版に含めていくべきかの検討は継続されます。MySQL 9.7.0 LTSコミュニティ版で利用できる機能の最終的なリストは確定しておらず、MySQL 9.7.0 LTSのリリース以降に機能追加を行う場合にMySQL 9.7のマイナー・バージョンに含めるのかMySQL 10.0イノベーション・リリースのみとするのかなどは発表されていません。

まだまだ流動的な点が数多く残っていますが、全体的にはMySQLコミュニティの活性化のために重要な方針となっており、今後の具体的な施策に期待が持てる内容となっています。3月3日(日本時間3月4日午前0時から)には、新たにMySQL開発チームの担当役員となったJasonが初めて対外的に講演するウェビナーであるMySQL Global Forumも予定されています。

[PostgreSQL]2026年2月の主な出来事

前回のこの連載で「次回のリリースは2月の中旬の見込み」と書いたとおり、2月12日にマイナーバージョンのリリースがありました。しかし、その直後にリリースしたものに問題が見つかったため、月末に緊急リリースを出すことが発表されています。順番は逆転しますが、まずはこの緊急リリースの話題から取り上げます。

2月26日に緊急リリース18.3⁠17.9⁠16.13⁠15.17⁠14.22が公開

2月16日に非定例(out-of-cycle)リリースのお知らせが発表され、2月26日にリリースされました。これは、後述する2026年2月12日の更新リリース(バージョン18.2、17.8、16.12、15.16、14.21)で発生したリグレッションのために緊急で計画されました。

修正された問題点から3つを説明します。

  • substring() 関数は、値のソースがデータベース列である場合に非ASCIIテキスト値に対して「エンコードのバイトシーケンスが無効」というエラーを発生させます。これは、データベースサーバの脆弱性を修正したCVE-2026-2006(後述)の修正によるものとのことです。
  • スタンバイが停止し「トランザクションのステータスにアクセスできませんでした」というエラーが返される場合があります。
  • pg_trgmを修正したCVE-2026-2007(後述)での見落としにより、strict_word_similarity関数の修正による誤った出力やクラッシュが発生する可能性がありました。

上記の他にもいくつかの修正がされています。

今回はあまり日数を置かずに新マイナーバージョンのリリースとなりましたが、PostgreSQLのアップデートリリースはすべて累積的です。1つ以上の更新リリースをスキップしたユーザーは、更新後の追加手順を実行する必要がある場合があります。また、18.0~18.2 にアップグレードしていた場合には、アップデート時に必要な手順があります。詳しくは、今回の緊急リリースのお知らせや、リリースノートを参照してください。

PostgreSQL 18.2⁠17.8⁠16.12⁠15.16⁠14.21がリリース

説明の順番が逆転してしまいましたが、2月12日にサポート中の全メジャーバージョンに対するマイナーバージョンがリリースされました

このアップデートでは、過去数か月間に報告された65件以上のバグが修正されています。さらに、次の5つのセキュリティ脆弱性が修正されています。最後のCVE-2026-2007は最新のバージョン18のみが対象ですが、残りの4つはバージョン14から18の全てのメジャーバージョンが対象です。

  • CVE-2026-2003:PostgreSQLのoidvectorが数バイトのメモリを公開
  • CVE-2026-2004:PostgreSQLのintarrayで選択性推定器への入力の型の検証が欠落しており任意のコードが実行
  • CVE-2026-2005:PostgreSQLのpgcryptoヒープバッファオーバーフローにより任意のコードが実行
  • CVE-2026-2006:PostgreSQLのマルチバイト文字長の検証が欠如しているため任意のコードが実行
  • CVE-2026-2007:PostgreSQLのpg_trgmヒープバッファオーバーフローによるサーバーメモリへのパターンの書き込み

『PostgreSQL実践入門 ─⁠─アーキテクチャ⁠運用監視⁠性能改善』が出版

2月10日、NTTオープンソースソフトウェアセンタのみなさんが執筆された『PostgreSQL実践入門 ─⁠─アーキテクチャ、運用監視、性能改善』が出版されました。なんと720ページもの大作です。実は筆者もまだ手にしていないのですが、このボリュームだと電子版(EPUB/PDFセット)が使いやすそうです。

2026年3月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

MySQL 8.0 EOL直前対策と最新動向~移行⁠運用のヒント~

日程 2026年3月11日(水)15:00〜16:30
場所 オンライン(Zoom)
内容 2026年4月にはMySQL 8.0の新規パッチ提供が終了し、⁠Sustaining Support」ステータスに移行します。本ウェビナーでは、MySQLの今後の運用に役立つ最新情報を凝縮してお届けします。MySQL8.0の新規パッチ提供終了(EOL)が迫るなか、製品ライフサイクルやリリース形態を整理し、EOLとなることでどのような影響やリスクが生じるかわかりやすくご説明します。さらに、業務利用で求められるセキュリティ機能を強化したMySQL Enterprise Editionの特長やメリットを解説します。加えて、円滑にバージョンアップを行うための実践的なノウハウもご紹介。現行システムの運用見直しやアップグレードをご検討中の方に最適なヒント最新情報をお伝えします。この機会にぜひご参加ください。
主催 日本オラクル株式会社

第56回 PostgreSQLアンカンファレンス@オンライン

日程 2026年3月24日(火)20:00〜22:00
場所 オンライン開催
内容 LT枠を増やして若手や初めて登壇する方を積極的に増やしていきたい方針とのことです。⁠PostgreSQLについてしゃべりたいことがある、聞いてほしいことがある!」⁠PostgreSQLについて聞いてみたい、相談したい!」そんな感じで登壇してもらってOKです。
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

HeatWavejp主催 HeatWavejp Meetup #18

日程 2026年4月13日(月)18:00〜21:30
場所 [オフライン会場]PASONA SQUARE(東京都港区南青山3-1-30)
⁠オンライン会場]オンライン(Zoom)
内容 HeatWavejpは、MySQL HeatWave の良さを知っていただき、参加者同士でノウハウやナレッジを共有できるユーザーコミュニティです。ユーザ会設立3周年となる#18はLT大会を予定しています。⁠こんな使い方してみた!」をテーマに、MySQL HeatWaveの正攻法での活用法の紹介や、意外な使い方などの講演の予定です。申し込みページは近日公開予定です。
主催 HeatWavejp(MySQL HeatWave Japan User Group)

Oracle Cloudウェビナー - MySQL 9.7 LTSリリース & 新製品戦略 (仮)

日程 2026年5月13日(水)15:00〜16:00
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 2026年4月にMySQLの2世代目のLTSとなるMySQL 9.7のリリースが予定されています。このイベントでは最新のMySQLの製品戦略をご紹介するとともに、MySQL 9.7 LTSに加わった新機能や改良点を解説予定です。お申し込みページは近日公開予定です。
主催 日本オラクル セミナー事務局

オープンソースカンファレンス(OSC)4月〜6月開催分〕

日程 Kagawa〕2026年4月18日(土)10:00~18:00予定
Nagoya〕2026年5月23日(土)10:00~18:00
Sendai〕2026年6月6日(土)10:00~18:00予定
場所 Kagawae-とぴあ・かがわ(香川県高松市)
Nagoya中小企業振興会館(名古屋市千種区)
Sendai東北電子専門学校(仙台市青葉区)
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。今回ご案内する開催地はすべてセミナーと展示の両方とも会場開催です。
Kagawa〕出展者(展示・セミナー)を募集中です(3月9日締切⁠⁠。
Nagoya〕3月上旬から出展者募集予定です。
Sendai〕3月中旬から出展者募集予定です。
OSSデータベース関連の発表の詳細は、公開される各回のプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

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