GitLabが解説:プラットフォームエンジニアリングを読み解く

プラットフォームエンジニアリングの導入ステップと成功のポイント

ソフトウェア開発の現場では、クラウドやツールの多様化により、開発者が本来注力すべき価値創出以外の作業に多くの時間を割かれる状況が生まれています。こうした課題に対する一つのアプローチとして注目されているのが「プラットフォームエンジニアリング」です。本連載では、プラットフォームエンジニアリングの基本的な考え方から、関連する開発手法との関係性、導入によって得られる価値までを整理し、なぜ今この概念が重要視されているのかを段階的に解説していきます。

実践的なプラットフォームエンジニアリングの導入ステップ

今回は、プラットフォームエンジニアリングを効果的に導入するために必要な手順について見ていきます。通常は次の流れで進めます。

1.専門チームの組成

プラットフォームエンジニアリングを導入する際には、まず専門チームの組成から始めます。専門チームを社内に配置すれば、プラットフォームエンジニアリング導入の取り組みを推進できます。この専門チームは、主に開発者のニーズを把握し、プラットフォームの設計・構築、全社的な導入の推進、そして継続的な運用・改善を担当します。

実際のメンバー構成においては、開発者のさまざまなニーズを考慮したプラットフォームを導入するためにも、開発・運用・セキュリティなど多様なスキルセットを持つ人材や、それぞれの分野を専門とする人材を集めることが重要です。

また、社内向けではあるものの、自社での活用を浸透させるためにはプラットフォームを一つのサービスとして捉え、ユーザーのニーズを満たすという視点が重要になります。

GitLabが実施したグローバル調査「インテリジェントソフトウェア開発の時代」では、非効率な開発プロセスによって、開発者は週に約7時間を非効率な作業に費やしていることが報告されています。こうした非効率を解消するためにも、組織横断でプラットフォームを設計・運用する専門チームの存在が重要になります。

2.開発課題の分析と目標設定

プラットフォームエンジニアリングの専門チーム結成後は、現状の開発課題の把握と分析を実施します。課題の把握や分析においては、エンジニアとの個別面談やサーベイなどを通して行います。

その中で、⁠複数のツールを管理するための負担がかかり過ぎている」⁠開発環境の構築から実際のリリースまで時間がかかっており、開発効率が悪い」などの課題が挙がった場合には、それらの課題に対処するためにどのようなプラットフォームを導入すれば良いのかを検討し、具体的な目標を設定します。

例えば、開発者のツール管理の負担が主な課題としてあるなら、単一のプラットフォームで複数のツールや技術の活用を支援できるIDPを整備するという方向性を定められるでしょう。

3.プラットフォームの構築⁠組織体制の変更

プラットフォームエンジニアリングの導入における目標や方向性が明確になった後は、基盤となるプラットフォームの構築を行います。

開発プロセスの課題解決につながるような機能やツールを搭載し、さまざまな手法で開発を進められるよう整備します。

また、プラットフォームの構築・活用に伴い、これまでの開発プロセスにも変化が生じるため、必要に応じて開発者間での認識のすり合わせや組織体制の変更を行いましょう。

4.フィードバック⁠継続的なメンテナンス

プラットフォームエンジニアリングの基盤を構築した後は、実際にプラットフォームを運用し、開発者に利用してもらいます。その中で開発者からフィードバックや要望があれば、機能追加や改善を柔軟に行います。

ソフトウェア開発におけるツールや技術は進化し続けており、トレンドも常に変化するため、最新情報のキャッチアップや定期的なメンテナンスがプラットフォームエンジニアリングを成功させるための鍵となります。

プラットフォームエンジニアリングの導入における注意点

プラットフォームエンジニアリングの導入においては主に次の4つの注意点があります。

プラットフォームを構築する前に⁠開発者のニーズを把握する

まずプラットフォームエンジニアリングの導入において、プラットフォーム構築そのものを目的として進めてしまうと失敗してしまう可能性が高まります。

例えば、⁠最新技術だから」⁠高機能だから」というような考えだけで導入してしまうと、開発者ニーズに合わないプラットフォームを構築してしまうことになります。そうなると、社内での活用も浸透せず、結果としてほとんどの開発者が使わない可能性があります。

そのため、開発者への調査を徹底して行い、どんな課題を解決したいのかを明確にした上でプラットフォームを構築する必要があります。

導入に効果が期待できるか見極める

プラットフォームエンジニアリングの導入そのものが、自社にとって効果が期待できるのかも見極めなければなりません。

例えば、エンタープライズ企業や中規模組織など、一定規模以上の組織で、かつ必要な人材が揃っているなら、専門チームの組成もスムーズに進み、実際のプラットフォーム構築によって開発の効率化やコスト削減などの効果が期待できる可能性が高くなります。

一方、小規模な組織の場合で、かつ人手が足りない場合、プラットフォーム構築や運用そのものに大きな負担がかかってしまい、逆効果になる可能性もあります。

こうした理由から、⁠プラットフォームエンジニアリングの導入や運用が自社で可能なのか」⁠どのような効果が期待できるのか」をきちんと検討することが重要です。

トップダウンでの導入は避ける

プラットフォームエンジニアリングは開発者向けのアプローチであり、開発者がプラットフォームを問題なくセルフサービスで利用できるという要素が重要になります。

そのため、トップダウンで現場の課題や開発者のニーズを無視して導入を進めてしまうと、新しいやり方に対して開発者から抵抗や反発を受ける可能性があります。

スムーズな導入を実現するためには、経営層と開発者で双方向コミュニケーションをとり、開発者に選択の余地とアイデアを積極的に発信できる場を与える必要があります。

段階的に導入して小さく始める

最初から全ての要件を満たした完璧なプラットフォームを構築して、運用しようとすると開発者が変化に対応しきれない可能性があります。また、時間をかけてプラットフォームを構築しているとトレンドに乗り遅れ、完成後には搭載した技術やツールがすでに古くなっているというケースも考えられます。

そのため、まずは優先度の高い課題にフォーカスして、効果が期待できる機能から実装し段階的に運用するなど、アジャイルな進め方がプラットフォームエンジニアリングの導入に求められると言えます。

強力なプラットフォームエンジニアリングの基盤構築に役立つツール⁠サービスの選び方

プラットフォームエンジニアリングの導入においては、効率的な導入・運用を可能にする基盤構築向けのサービスを積極的に活用することが効果的です。ここではサービスの選定方法を「機能」⁠コスト」⁠サポート体制」の視点で解説します。

機能

プラットフォームエンジニアリングの導入を成功させるためには、開発者のニーズを満たし、かつ自社の課題を解決できる機能が搭載されたサービスを選ぶことが重要です。 例えば、プラットフォームを構成する重要な要素として挙げられる機能は以下の通りです。

  • CI/CD(自動ビルド・テスト・デプロイ)
  • ソースコード管理
  • ドキュメント
  • モニタリング
  • API連携
  • セキュリティ・ガバナンス など

このような機能が搭載されているサービスなら、開発者の生産性向上に貢献できるでしょう。

コスト

プラットフォームエンジニアリングの基盤構築となるサービスを選定する際には、コスト面も考慮することが重要です。 組織の規模や導入形態などによってコストが異なるため、ベンダーに問い合わせるなどして費用対効果が期待できるかしっかり評価しておく必要があります。 無料トライアルを設けているサービスも多く、まずは使用感を試してみてから導入を検討することが有効です。

サポート体制

プラットフォームエンジニアリングをスムーズに導入・運用していくためには、ツールやサービスを提供するベンダーのサポート体制をチェックしておく必要もあります。 充実したサポート体制があれば、万が一トラブルや不明点が発生した場合でも、専任スタッフが迅速に対応してくれるでしょう。また、ベンダーがドキュメントやマニュアルなどを通して積極的にノウハウを公開していれば、トラブル時にも自社で解決しやすくなるでしょう。

まとめ⁠プラットフォームエンジニアリングで開発品質を向上⁠効率化しよう

プラットフォームエンジニアリングの導入は、ビジネス環境が激化している時代において重要視されているアプローチです。導入においては、適切な専門チームの組成やツール・サービスの選定が重要なポイントとなってきます。

さらに、本連載で解説したように、プラットフォームエンジニアリングは開発者体験を向上させ、組織全体の開発力を底上げするための重要な基盤です。正しく導入・運用することで、生産性向上や品質改善、セキュリティ強化といった多くのメリットをもたらします。自社の課題に即した形で段階的に導入を進めることが、継続的な価値創出の鍵となります。

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