OSSデータベース取り取り時報

第128回「内向き思考打破が日本を救う!」セミナー報告⁠MySQL 9.7アーリー⁠アクセス版リリース⁠次期PostgreSQL 19の期待したい新機能候補

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

セミナー「内向き思考打破が日本を救う!カギはOSSとコミュニティかな?」の報告

2月27日(金)と28日(土)に東京で開催されたオープンソースカンファレンス(OSC)2026 Tokyo/Springの1日目に、OSSコンソーシアムがセミナーを行いました。そこで発表した内容を紹介します。

コミュニティが支えるプリザンターでIT活用の民主化を

内田太志さん(株式会社インプリム/OSSコンソーシアム データベース部会)の発表です。

プリザンターはWebデータベース型のノーコード/ローコード開発ツールに分類され、主に企業内で使用する業務システムの開発に向いたツールです。プリザンターが選ばれる理由のひとつが自由度の高さ。OSSでありノーコード/ローコード開発ツールですから、自由度があるのは当然とも言えます。けれどそれ以上に、他システムとの連携が実現しやすいなどのカスタマイズ性が自由度をさらに高くしています。実際、公式サイトでは30件ほどの導入事例が公開されていることがわかります。

そして、このようなシステム連携の部分は、エンドユーザの目に触れるフロントエンド部分とは別に、OSSであるプリザンターを支えるコミュニティやパートナーが活躍できる部分にもなっているようです。結果としてエンドユーザが自分たち向けのビジネスアプリを実現するITの民主化をしつつ、コミュニティやパートナーなども活躍できるエコシステムを形成しています。

内向き思考にならないレガシーシステムのモダナイズ

井坂徳恭さん(東京システムハウス株式会社/OSSコンソーシアム オープンCOBOLソリューション部会)の発表です。

レガシーシステムの代表のように語られることが多いCOBOLですが、COBOLを使っていることがレガシーシステムの直接的な理由ではありません。運用されてはいるものの長年にわたり放置されて、新しいビジネス要件や運用形態に対応できなくなってしまって、IT資産の健全性を損ねているため負の遺産になっているのです。ただ、COBOLで実現された基幹システムは貴重なデータを抱えています。この貴重なデータを捨てるのではなく活用する手段が必要です。そのためにCOBOLで実現されたシステムのモダナイズが求められます。

COBOLで書かれたアプリケーション自体は、opensource COBOLやJavaトランスレータで現代のプラットフォームに移行できます。問題は新プラットフォームでデータをどこに置くかです。解決策のひとつとして、Open COBOL ESQL というCOBOLからPostgreSQLにアクセスするツールがあります。プリコンパイラとして「EXEC SQL」「CALL」に変換するやり方と、実行時ライブラリとしてCOBOL用APIを提供するやり方があります。⁠地味に世界中で使われている」とのことです。

OSS選定の羅針盤 — 鳥瞰図WGが届ける最新版ガイド

佐々木寛太さん(サイオステクノロジー株式会社/日本OSS推進フォーラム 鳥瞰図WG)にゲストとしてご参加・ご発表いただきました。

前回のこの連載でOSS鳥瞰図のアップデート版が公開されたことをお知らせしました。このOSS鳥瞰図は、日本OSS推進フォーラムの鳥瞰図WGで作成とメンテナンスを行っていますが、実は私たちOSSコンソーシアムもこの鳥瞰図WGに参加して一緒に活動をしています。

OSS利用者がシステムにOSSを採用・導入する際の手引きとなる情報を提供すること、最新版に更新してOSSの選定をより安心感をもって短時間にできるよう手助けをすることなどを基本方針にしています。

OSS鳥瞰図にはさまざまなカテゴリーのOSSを含めています。データベースの部分を例にしてOSS鳥瞰図の見方を図に示します。

OSS鳥瞰図の見方(発表スライドより)
OSS鳥瞰図の見方(発表スライドより)

このOSS鳥瞰図を維持・更新するWGのメンバーは、必ずしも担当カテゴリーのエキスパートばかりではないので、どうしても偏りはあるでしょう。また選定の基準はある程度は設けていますが曖昧な部分もあります。そして、掲載しているOSSはどうしても増加する傾向になってしまいます。そのため、一緒に活動してくれるメンバーを常に募集しています。OSSそのものの開発コミュニティよりはハードルも負担も低いと思いますし、得意な分野についてご意見をいただくだけでも大丈夫です。

組込みへの第一歩! 名刺基板の作成と発注

平塚有吾さん(株式会社デジタル・ヒュージ・テクロノジー/OSSコンソーシアム AI IoT Robotis Automotive部会)の発表です。

上述のOSS鳥瞰図にはさまざまなカテゴリーが含まれていますが、難しいカテゴリーのひとつが組み込みソフトウェア分野です。稼働環境、開発環境、適用分野などが、いわゆるビジネスアプリーケーションとはかなり異なっています。そこで、この組み込み分野のOSS鳥瞰図については、OSSコンソーシアムのAI IoT Robotics Automotive部会(AIR部会)にて新たに検討を始めることにしました。当初は、その中間検討結果を今回のオープンソースカンファレンスで発表をしたかったのですが、思いの外、検討が難航しています。今回は、組み込み分野版のOSS鳥瞰図については今後の意気込みを表明するに留め、その他の組み込み分野のOSSでの興味深い話題を発表しました。

クロストーク(座談会)—⁠— 内向き思考打破が日本を救う!

最後のクロストーク(座談会)では、日本のIT、特にエンタープライズ系ITでの内向き思考打破のヒントになりそうな話題をいくつか取り上げて話し合いました。取り上げたネタ元や話題の多くは、オープンソースカンファレンス2026 Osakaで取り上げたものと重複していますが、メンバーを入れ替えて異なる意見を引き出したいと考えました。

  1. デジタル変革(DX)への取り組みとデータ活用についての日本企業の現状
  2. OSS以外のいくつかの技術テーマへの取り組み状況(デジタルツイン、ノーコード/ローコード、開発内製化、アジャイル開発)
  3. 企業としてのOSSへの関心と実際の取り組みとのギャップ

どのようなデータを示してどんな意見が語られたのかは、動画を公開していますので、是非そちらをご覧ください。

クロストークの様子
クロストークの様子

[MySQL]2026年3月の主な出来事

3月はMySQLサーバーのバージョンアップはありませんでした。2月21日にMySQL Shell for VS Codeがバージョンアップされ、バージョン番号の形式が「年.月.パッチ番号+同梱されるMySQL Shellのバージョン」に変更されました。今回のリリースは2026.2.0+9.6.1となっています。このバージョンではMySQLサーバからMySQL HeatWaveへの移行を支援するMigration Assistantで複数の改良が行われており、OCIのBastionを経由したデータ転送や一部のスキーマやテーブルのみの移行をサポートしています。

本連載の第127回でもご紹介したとおり、コミュニティとの連携の強化のための透明性の向上やエコシステムの拡大と強化のための方針を発表し、現在MySQLの開発チームでは準備できたものから順次展開を進めています。

3月に発表されたのが以下の3点です。

  • MySQL 9.7アーリー・アクセス版のリリース
  • MySQL Worklogsの再開
  • MySQLコミュニティ・デベロッパー・ガイドの公開

3月23日にはコミュニティからの要望のヒアリングや議論を行うオンライン・イベントである、MySQL Community Roadmap Discussionの第2回が開催されました。今後も同様のイベントは定期的に開催されることになっています。

MySQL 9.7アーリー⁠アクセス版のリリース

4月下旬にリリースが予定されている次期LTS(Long-Term Support)版となるMySQL 9.7の新機能を、ユーザに事前にテストしてもらい、フィードバックを寄せてもらうことを目的としたアーリー・アクセス版がリリースされました。これらの機能はこれまではMySQL Enterprise EditionやMySQL HeatWaveでしか利用できなかった機能となっています。

MySQL 9.7 アーリー・アクセス版の主な機能は以下の通りです。

MySQL 9.7アーリー・アクセス版はMySQL Labsからダウンロード可能となっています。ブログやダウンロード・ページにも記載されていますが、あくまでもテストや検証用途向けとなっており、本番運用は非推奨です。また、フィードバックはMySQLのバグデータベースから行います。

MySQL Worklogsの再開

開発中のMySQLの機能の仕様を公開するサイトWorklogsがこれまでもありました。開発チームのリソースがHeatWaveを中心とした開発に傾倒し始めた時期に、残念ながらWorklogsの更新が停止してしまいました。

3月6日からWorklogへの更新が再開され、MySQL 8.4や8.0に同梱されるOpenSSLを3.0から3.5に切り替えるWorklog WL#17209が、再開後の最初のものとして掲載されました。この記事で紹介済みの、Enterprise Editionの機能をコミュニティ版でも提供するWorklogも複数掲載されています。なお、このWorklogsは開発チームが注力している機能について掲載されており、特定のバージョンでの実装を確約するものではない点は注意が必要です。

MySQLコミュニティ⁠デベロッパー⁠ガイドの公開

機能追加要望の提出やパッチを含めたソースコードのコントリビューションの手順を解説したMySQLコミュニティ・デベロッパー・ガイドが新たに公開されました。

この中では、これまでのコミュニティとの連携の強化の要点や、エコシステム拡大のための今後の改善予定なども合わせて記載されています。現時点では透明性の向上にフォーカスをしており、今後はより情報を公開することやコミュニティからの参加を促すための活動を進め、さらにプロセスやツールの再評価を行って改良につなげるとしています。また、報告されたバグへの対応の進捗をよりタイムリーかつわかりやすい形で公開することや、コミュニティからの貢献をなんらかの形で定期的にレポートとすることも検討されていることも書かれています。

[PostgreSQL]2026年3月の主な出来事

3月はPostgreSQL本体のバージョンアップリリースはありませんでした。次回は5月にマイナーバージョンがリリースされる見込みです。そこで今回は、秋頃にリリースが計画されている次期メジャーバージョン19向けに開発中の期待の新機能を紹介します。新バージョンに組み込まれるかどうか不明なので、ちょっと気の早い紹介です。

「PostgreSQL 19への展望 —⁠— 開発中機能の紹介」の紹介

OSSコンソーシアムがセミナーを行ったのと同じオープンソースカンファレンス(OSC⁠⁠ 2026 Tokyo/Springでは、日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)の高塚さんによる、⁠PostgreSQL 19への展望 —⁠— 開発中機能の紹介」というセミナーがありましたので紹介します。ここではセミナー内容をすべては紹介できませんが、紹介しきれなかった部分については、公開されている動画や講演資料を参照してください

PostgreSQLは、コミットフェスト(Commitfest)というプロセスを経て、提案された新機能や修正コードをメインコードへ統合(コミット)するかを決めていきます。2026年3月の1ヵ月間がバージョン19に向けてのコミットフェストの最終回になります。4月には新バージョンに入るか入らないかが決まっているはずですので,次回に続報をお伝えします。

OSCでセミナーがあった段階で、紹介された大きい追加機能は新バージョンに入るかは未定だったようです。そして、高塚さんによると「全部が入るわけがない」ので、例年の傾向から類推すると次期メジャーバージョンに入るのは半分くらいではないかとのことです。

今回のセミナーでは検証結果も提示された項目がありました。これらはJPUGの合宿にて性能測定などの実機検証を実施された結果のようです。

では、紹介された新機能候補の中から、さらにいくつかをピックアップしてみます。繰り返しになりますが新バージョンに入るかどうかは不明です。新バージョンに入りそうなものを選んでいるわけではなく、どちかというと期待したいものを選んで紹介します。

COPY FROMのSIMD(Single Instruction, Multiple Data)化による性能向上
実機検証をされていて、CSVからの10万行のCOPY FROMローディングで所要時間を計測され、たしかに速くなっていることが示されています。
フルページ書き込み以外でのWAL圧縮
バッファページをそのまま書き出すフルページ書き込みについては、以前からWAL圧縮が行なわれていました。今回の新機能では、それ以外でも設定した閾値より大きいWALレコードを圧縮できます。検証されたケースでは30%ほどサイズが減少しています。
マテリアライズドビューの部分リフレッシュとIVM(Incremental View Maintenance)
IVMは元テーブルのデータを更新すると、マテリアライズドビューも自動で部分更新されるものです。ただし、利用可能なSELECT構文 / 関数に制限が数多くあります。
なお、この連載では以前からIVMの開発状況について取り上げていました第82回第88回⁠。pg_ivmという拡張機能としてはすでにリリースされていて、PostgreSQL本体へのIVMの組み込みが以前から期待されています。
グラフ問い合わせ SQL/PGQ(Property Graph Queries)
SQL/PGQは、リレーショナルデータベース内のデータをグラフ構造として表現、問合せするためのSQL:2023標準規格です。
CREATE VARIABLE / LETコマンド
トランザクション制御外のセッション変数を実現するもので、商用データベース製品のPL/SQLパッケージ変数の移植がしやすくなります。

その他、このセミナーでは次のような候補についても紹介されていました。

  • REPACK コマンド:空き領域回収コマンド
  • 行パターン認識:時系列データに対する値の変化のパターンの問い合わせ
  • pg_plan_advice:ヒント付与の助言(自動収集も可)やヒントを付与する機能
  • オンライン設定変更が可能になったパラメータ:wal_level(WALに書き出す情報量)と、shared_buffers(共有バッファサイズ)
  • モニタリング機能の追加

2026年4月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

HeatWavejp主催 HeatWavejp Meetup #18

日程 2026年4月13日(月)18:00~21:30
場所 [オフライン会場]PASONA SQUARE(東京都港区南青山3-1-30)
⁠オンライン会場]オンライン(Zoom)
内容 HeatWavejpは、MySQL HeatWave の良さを知っていただき、参加者同士でノウハウやナレッジを共有できるユーザーコミュニティです。ユーザ会設立3周年となる#18はLT大会を予定しています。⁠こんな使い方してみた!」をテーマに、MySQL HeatWaveの正攻法での活用法の紹介や、意外な使い方などの講演の予定です。
主催 HeatWavejp(MySQL HeatWave Japan User Group)

Oracle Cloudウェビナー - MySQL 9.7 LTSリリース & 新製品戦略 (仮)

日程 2026年5月13日(水)15:00~16:00
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 2026年4月にMySQLの2世代目のLTSとなるMySQL 9.7のリリースが予定されています。このイベントでは最新のMySQLの製品戦略をご紹介するとともに、MySQL 9.7 LTSに加わった新機能や改良点を解説予定です。お申し込みページは近日公開予定です。
主催 日本オラクル セミナー事務局

オープンソースカンファレンス(OSC)〔4月~7月開催分〕

日程 〔Kagawa〕2026年4月18日(土)10:00~18:00
〔Nagoya〕2026年5月23日(土)10:00~18:00
〔Sendai〕2026年6月6日(土)10:00または11:00~18:00
〔Hokakido〕2026年6月27日(土)10:00~18:00
〔Shimane〕2026年7月11日(土)10:00~17:00
場所 〔Kagawa〕e-とぴあ・かがわ(香川県高松市)
〔Nagoya〕中小企業振興会館(名古屋市千種区)
〔Sendai〕東北電子専門学校(仙台市青葉区)
〔Hokakido〕札幌市産業振興センター(札幌市白石区)
〔Shimane〕松江テルサ(島根県松江市)
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。今回ご案内する開催地はすべてセミナーと展示の両方とも会場開催です。
〔Kagawa〕セミナーのタイムテーブルが公開されています。
〔Nagoya〕出展者募集中です(4/13締切⁠⁠。
〔Sendai〕出展者募集中です(4/22締切⁠⁠。
〔Hokakido〕4月下旬から出展者募集予定です。
〔Shimane〕サイトを公開しましたが詳細はしばらくお待ちください。
OSSデータベース関連の発表の詳細は、公開される各回のプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

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