Microsoftは2026年4月15日、Visual Studio Code(以下VS Code)のバージョン1.116を公開した。VS Codeは、3月4日にバージョン1.110(February 2026)をリリースし、1.111から週次アップデートに移行している。今回の1.116では、GitHub Copilot Chat拡張が標準搭載となり、新たにインストールしなくても利用を始められるようになった[1] 。Microsoftはこれを、VS CodeをオープンソースAIコードエディターにしていく継続的な取り組みの一環と説明している。
この記事では、開発が進んできた統合ブラウザ機能と、「 Visual Studio Code Agents - Insiders」を主に取り上げる。後者は現在のところVS Code Insidersでのみ利用でき、VS Code本体とは別アプリとして起動する[2] 。
[1] すでにGitHub Copilot Chat拡張をインストールしていても、そのまま問題なく動作する。AI機能を使わない場合は、設定のchat.disableAIFeaturesで無効化できる。
なお、バージョン1.116 では主に以下の機能が強化されている。
過去のエージェントセッションを追跡しやすくする「Agent Debug Logs」 。
エージェントセッションからターミナルを操作できる「Terminal agent tools」 。
Copilot CLIセッションでも、推論モデルの「推論の労力」を設定できる。
統合ブラウザ機能
統合ブラウザ(Integrated Browser)は、VS Codeの画面内でWebページを開き、操作やデバッグをそのまま行える機能で、1.109でプレビューとして導入されて以降、段階的に機能強化が続いている。
これまでの経緯
統合ブラウザはバージョン1.109 でプレビューとして導入された。それまでのブラウザ機能はiframeベースだったため、Webサイトへのサインインができず、一般的なWebサイトの利用にも制約があった。統合ブラウザではこうした制約がなくなり、Webサイトにサインインしたうえで任意のページを閲覧できるようになった。また、保存データの扱いを選べるストレージ管理、要素を選んでチャットへ渡す「Add element to chat」 、DevTools、ページ内検索なども利用できるようになった。
バージョン1.110 では、ブラウザ上のWebアプリをエージェントが操作し、変更内容を検証できるエージェント向けブラウザツール(Agentic browser tools)が追加された。このツールは追加の依存関係なしで利用でき、ページの変化やコンソールの警告・エラーもエージェント側で確認できる。ページはデフォルトでプライベートなインメモリセッションで開かれ、エージェントが扱えるのはユーザーが明示的に共有したページに限られる。
バージョン1.112 ではeditor-browserデバッグタイプが追加され、Launch構成とAttach構成の両方で統合ブラウザのタブを起点にWebアプリをデバッグできるようになった。また、右クリックのコンテキストメニューの利用や、サイトごとにズーム設定を個別に記録できる機能など、UX面も改善された。
バージョン1.113 では、ローカル開発などで使う自己署名証明書を、一時的に信頼してHTTPS接続を継続できるようになった。自己署名証明書は通常、信頼された認証局による裏付けがないため、そのままではブラウザに信頼されない。この信頼は現在のホストとその証明書に対して1週間有効で、URLバーからいつでも取り消せる。また、ブラウザタブのクイックオープンや一括クローズなど、タブ管理も強化された。
バージョン1.114 では、VS Code側のショートカットがページ側のショートカットより優先される問題や、「 チャットに要素を追加する」がデバッグ停止中に動かない不具合が修正された。
バージョン1.115 では、エージェント向けブラウザツールの呼び出し表示が、何をどのページで行った操作なのか分かりやすくなり、操作対象のブラウザタブを直接開けるリンクも追加された。ツール「Run Playwright Code」では、デフォルトで5秒を超えるスクリプトがdeferred resultを返すようになり、長時間実行にも対応しやすくなった。また、同一ホストのタブが開いていれば、不要な新規タブを開きにくくなった。macOSではトラックパッドのピンチ操作による最大3倍の拡大表示にも対応した。
バージョン1.116 では、統合ブラウザの起動方法がさらに増えた。それまでも「Browser: Open Integrated Browser」コマンド、localhostリンクのクリック、タイトルバーのアイコン、エージェントへの指示による起動で統合ブラウザを開けたが、新たに、メニューのView > BrowserとキーボードショートカットCtrl+Alt+/も加わった。どちらも、タブがなければ統合ブラウザを開き、すでにタブがあれば既存タブをすぐ確認して切り替えられる。
統合ブラウザの使い方
統合ブラウザは、エージェントによる操作だけでなく、開発者自身がWebアプリを確認したりデバッグしたりするときにも使える。
利用時の前提と注意点
まず、利用時の前提と注意点を見ていく。公式ドキュメント によると、統合ブラウザはhttp://、https://、file://を扱える。ポップアップはブロックされる一方で、新しいタブで開くことは許可されている。権限リクエストは、カメラ・マイク・位置情報などを自動で拒否し、通知、クリップボードアクセス、ファイル選択は許可される。
セッションデータは、設定のworkbench.browser.dataStorageで管理する。永続化され、すべてのタブとワークスペースで共有されるglobal、ワークスペース内に限定されるworkspace、共有も永続化もしないephemeralの3モードがあり、信頼されていないワークスペースでは常にephemeralが使われる。
エージェントを使う
チャット上で統合ブラウザを使うには、設定のworkbench.browser.enableChatToolsをtrueにする。それによりエージェントは、VS Codeに組み込まれたブラウザツールを使って、統合ブラウザ上でのページ移動、内容取得、ユーザー操作の再現を行える。さらに、Playwrightコードを実行するブラウザツールrunPlaywrightCodeを使うことで、統合ブラウザ上のページに対する操作や検証を、より柔軟に行える[3] 。
なお、エージェントが開いたページでは、通常のタブのCookieは引き継がれない。もし既存セッションをエージェントに使わせる場合は、ツールバーの「エージェントとの共有」から明示的に許可する必要がある。
[3] runPlaywrightCodeは、ユーザーが手動で「チャットに要素を追加する」とは別の仕組みで、エージェントが統合ブラウザ上のページに対してPlaywrightベースの操作や検証を行うためのブラウザツール。
開発者自身が使う
開発者自身がWebアプリをデバッグするときにも使える。.vscode/launch.json に統合ブラウザ向けのLaunchまたはAttachのデバッグ設定を追加すれば、外部ブラウザを別に立ち上げず、VS Code内の統合ブラウザでデバッグできる。
Visual Studio Code Agents - Insiders
「Visual Studio Code Agents - Insiders」( 以下、Insiders版VS Code Agents)はエージェントネイティブな開発向けに設計されたアプリで、プレビュー扱いで提供されている。ここでは使い方を簡単に紹介する。
起動方法
Insiders版VS Code AgentsはVS Code Insidersに同梱されるアプリで、VS Code Insidersをインストールすれば利用できるようになる。
起動はOSのスタートメニューなどから直接行えるほか、VS Code Insidersのコマンドパレットから「Chat: Open Agents Application」を実行して起動できる。バージョン1.116リリース時点では、VS Code Insidersのウェルカムページにも「Try out the new Agents app」という起動リンクが追加された。
画面構成
Insiders版VS Code Agentsを起動すると、左側には、セッション一覧を表示するSessionsとエージェント・スキル・インストラクション・MCPサーバー・プラグインを確認するcustomizationsがある。中央はチャット領域で、初期状態だとワークスペースを選択するドロップダウンと、プロンプト入力欄がある。
ウィンドウ右上にはアイコンが並んでいて、「 タスクを実行する」「 VS Code Insidersを開く」「 ターミナルを開く」「 ファイル変更を確認するChanges(とファイルエクスプローラー)を開く」「 プロフィールアイコンから設定画面を開いたり、GitHub Copilotのプレミアムリクエストの残量を確認したりできる」といった操作が可能になっている。
プロジェクトの選択
エージェントセッションを実行するには、ローカルのフォルダまたはリポジトリを選択する必要がある。その際、そのフォルダ内でエージェントが作業することを確認するダイアログが一度表示される。
セッションの進め方
プロジェクトを開くと、右側にファイルエクスプローラーが表示される。あとは、プロンプトを入力して、セッションを進めればよい。スキルを明示的に指定するには現状、プロンプトの最初で/コマンドを入力するかたちになる。
その際、プロンプト入力欄の直下、右側で作業環境を指定する。デフォルトで「Worktree」に設定されているので、プロジェクトフォルダ内のファイルを直接編集したい場合は、最初のプロンプトを入力する前に「Folder」を選択するとよい。もしWorktreeでセッションを開始した場合は、Copilot CLIセッション用にWorktreeが作られる。
プロンプト入力欄の直下、左側には、エージェントの実行をGitHub Copilot CLIとクラウドのどちらで行うか、また、コマンド承認の設定を切り替えるためのUIが用意されている。
ここではWorktreeを選択してプロンプトを実行したとする。エージェントがファイルを編集して応答が終わると、右側のファイルエクスプローラーの表示が、ファイル変更を示すChangesタブに切り替わる。
Changesタブのファイル名をクリックすると、変更内容を確認できる。
ファイルが編集されている場合、Changesの上部の「Merge Changes」ボタンが有効になる(チャットが停止している必要がある) 。ドロップダウンでいくつかの選択肢が表示されるが、ここでは素直に「Merge Changes」を選ぶとする。
するとチャットで、mainブランチに変更内容をマージするための/mergeがプロンプトとして実行される[4] 。コミットがされていない状態なので、エージェントによる差分確認とコミットが行われ、マージされる。
マージしてエージェントからの応答が終了すると、「 Merge Changes」ボタンが「Mark as Done」ボタンに変更される。注意したいのが、このときこのボタンを押すと画面中央のチャットも同時に消え、セッション一覧からもこのセッションが表示されなくなることだ。そして現在、セッション一覧の上部にあるFilter Sessionsボタンを押して「Done」を有効にしても、消えたセッションが表示されないようだ(GitHub Copilot CLIをターミナルから起動して/resumeコマンドを使ってセッションを見ることはできる) 。
おおよその基本的な操作機能や設定画面はそろっている。もうすこし調整されて、今後、VS Code安定版でいつ展開されるかが注目される。