OSSデータベース取り取り時報

第129回MySQL 9.7.0 LTSリリース⁠PostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアム成果報告会がまもなく

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2026年4月の主な出来事

4月には2年ぶりとなるMySQLサーバーの長期サポート版である、MySQL 9.7.0 LTSがリリースされました。このバージョンは8年後の2032年4月までパッチ提供が行われる予定となっています。MySQLのエコシステム拡大のために2026年に入ってから大きく方針転換をしたコミュニティとの連携に関する方針のもと、コミュニティ版への機能追加の加速や、コミュニティからのフィードバックを積極的に取り込む形となった中での最初のリリースとなっています。予定していた機能追加の全ては実現しておらず、まずはリスクや難易度が低いものからの対応となっています。

MySQL 9.7.0 LTS以外にも、MySQL 8.4.9 LTSおよびMySQL 8.0.46もリリースされました。特にMySQL 8.0.46は8.0系列最後のマイナー・バージョンとなっており、LTSへのバージョンが推奨されています。クラウド版のMySQL HeatWaveでは、作成済みの8.0のインスタンスは5月上旬に自動的に8.0.46にバージョンアップされ、さらに2027年4月には自動的に8.4 LTSにバージョンアップされることとなっています。また新規に8.0のインスタンスを作成することもできなくなりました。

コミュニティからの開発への参加を促すため、ロードマップ策定をオープンな形で議論するMySQL Community Discussionを毎月開催し、4月には第3回が開催されています。MySQLの開発に参加や貢献をするためのガイドとしてMySQL Community Developer Guideが公開されており、このガイドは新しいツールやプロセスが追加されるごとに継続的に更新されていきます。

MySQL 9.7.0 LTSの新機能

コミュニティ版のMySQL 9.7.0 LTSでは、これまで商用版のみで利用可能だった以下の機能が利用可能になっています。

性能関連
  • PGOで最適化したコミュニティ版バイナリ
  • ハイパーグラフ・オプティマイザ
アプリケーション開発関連
  • JSON Duality ⁠DMLの利用⁠⁠ ※従来のコミュニティ版はSELECTのみ可
  • 可観測性関連
  • OpenTelemetryサポート
レプリケーション関連
  • マルチスレッド・アプライヤーやInnoDB Clusterフロー制御のメトリクス
グループ⁠レプリケーション
  • レプリケーション遅延やリソース使用状態の監視、自動ノード削除、自動復旧
  • フェイルオーバー時の最新のトランザクションを考慮したプライマリ選定

他にも、OpenSSLを同梱するバイナリではOpenSSLが3.0から3.5にバージョンアップしています。また、システム変数 replica_allow_higher_version_source が追加され、バージョンが上のソースから下のバージョンのレプリカへのレプリケーションがサポートされるようになりました。Linuxのcgroupで割り当てられた論理CPUを正しくハンドルできるようになり、割り当てられた論理CPU内でのリソースの効率的な利用と性能向上が見込めます。

商用版のMySQL Enterprise Editionには、動的データマスキングが追加されました。MySQLでのこの機能は、ユーザーアカウントやロールによって、見せるデータをマスキングするかどうかを設定できます。特にAIがMySQL内のデータを利用する場合やレポート生成などの際に、機密データの一部を伏せた状態で利用させる必要がある場合に役立ちます。

MySQLコミュニティ⁠ロードマップ

MySQLのロードマップはこれまではオラクルが単独で決定してきていました。もちろん利用者の方々からの意見はある程度は反映されていたものの、特にここ数年は十分に意見を取り込めているとは言えない状態が続いていました。この反省も踏まえ、2月からMySQL Community Discussionという名称のオンライン・イベントを開催し、オラクルの方針の共有とコミュニティからのフィードバックを議論する場を設けています。

この中で、MySQLコミュニティ・ロードマップとして示されたのが以下の図です。

MySQLコミュニティ・ロードマップ
MySQLコミュニティ・ロードマップ

このロードマップでは4つのカテゴリが挙げられています。なお、このロードマップの図は開発の時系列を表したものではありません。

  1. AIとクラウドへの最適化
  2. 開発エンジニアとDBA向け機能
  3. 機能の拡張性とエコシステム
  4. パフォーマンスと可観測性

このカテゴリをもとに、MySQLの開発に参加または貢献したい方々を募っています。5月26日には具体的なロードマップを固めていくことと、MySQLのエコシステムに参加して他の開発者との協力体制を整えていくことなどを議論するMySQLコントリビューター・サミットを開催します。

MySQLコミュニティ版の脆弱性情報サイト

これまでMySQLの脆弱性情報は、オラクルのCritical Patch Update(CPU)のサイトで公開されていました。新たにMySQLコミュニティ版に関する情報のみをまとめたサイトMySQL Community Edition Vulnerability Advisoryを4月にオープンしました。

[PostgreSQL]2026年5月の主な出来事

4月はPostgreSQL本体のリリースは無く、5月にマイナーバージョンがリリースされる見込みです。今回はPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの成果報告セミナーの案内や、前回につづき次期メジャーバージョンに入りそうな新機能や改善を紹介します。また、次世代高速RDB(国産OSS)Tsurugiの最新情報を久しぶりに取り上げます。

5月29日にPostgreSQLエンタープライズ⁠コンソーシアムが成果報告セミナーを開催

国内の有力企業が集まり、共同でPostgreSQLの普及・啓蒙活動や技術検証活動を行っているPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)では、定期的に活動成果を発表をしています。前期2025年度の活動成果の成果報告セミナーが5月29日(金)にオンラインで開催されます。セミナーの内容ですが、技術部会の3つのワーキンググループ(WG)とコミュニティリレーション(CR)部会から活動成果が報告され、運営委員会から2026年度活動計画の概要が発表される予定です。開催概要や申し込み方法については、後述のイベントコーナーをご覧ください。

毎年、PGEConsの成果報告セミナーはテーマのバリエーションも多く、個々の発表の密度も高い、硬派系のイベントとなっています。その分、他では聞けない貴重な知見もたくさん発表されるのではないかと期待しています。

新バージョン19に向けたコミットフェストはどうなった?

前回のこの連載で、2026年秋にリリース予定の次期メジャーバージョンに入ることが期待される新機能や改善を紹介しました。今回は前回に取り上げたものの中から、バージョン19に向けた最終のコミットフェストやそれ以前にコミット済みのものをいくつかピックアップします。これらは新バージョンに入る可能性はかなり高いでしょう。

また、期待されていたもののバージョン19には入らず、更に次のバージョンに向けて見送りになったものもあります。

Commitfest PG19-FinalのWeb画面
Commitfest PG19-FinalのWeb画面

IVMの機能拡張pg_ivmのバージョンアップ

IVMはPostgreSQL本体の機能として組み込まれるのは今回も見送りになりそうですが、拡張機能としては既にリリースされており、3月31日、その機能拡張pg_ivmは新バージョン1.14がリリースされました

Tsurugi最新情報

4月6日、国産OSSデータベースTsurugiの新バージョン1.10.0 がリリースされました。このバージョンでは次の様な追加機能や改善がされています。

  • SQL機能追加として、スカラーサブクエリー、EXISTS演算子、IN句内でのサブクエリーに対応
  • SQLでは他にも機能追加があり、VALUES句(テーブル構築式)の拡張、およびFROM句を省略したSELECT文に対応
  • クライアントライブラリの拡充として、Pythonの標準的なデータベース接続APIであるPython DB-API 2.0(PEP 249)に対応したTsurugi Python DB-APIを公開

また、この新バージョンリリースとは別に、3月31日、Tsurugiのプラットフォーム対応の状況を説明するブログ記事が公開されています。この情報は、TsurugiのソースファイルをGitHubからダウンロードして自分でビルドする人を対象としたもので、さまざまなプラットフォームについてのTIPSになります。なお情報は2026年3月時点のものです。

2026年5月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

Oracle Cloudウェビナー - MySQLの最新ロードマップを展望 - 9.7 LTSの注目機能とエコシステム拡大のための新方針

日程 2026年5月13日(水)15:00〜16:00
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 2026年4月にリリースの最新の長期サポート版であるMySQL 9.7 LTSの注目ポイントをはじめ、2026年に入って活発化しているMySQLのエコシステム拡大のためのコミュニティとの連携強化の最新動向を、エンジニアの皆さま向けにわかりやすくご紹介します。
コミュニティとのロードマップに関する公開ディスカッション、いち早く新機能を検証いただくためのアーリー・リリースの提供、さらに開発中の機能の公開による透明性向上など、MySQLを取り巻く開発・発信のあり方は大きく進化しています。本セッションでは、MySQL 9.7 LTSの機能概要に加え、こうした動きが今後のMySQL活用にどのような意味を持つのかをお届けします。
主催 日本オラクル セミナー事務局

PGEConsセミナー - 2025年度活動成果報告会

日程 2026年5月29日(金)13:30〜16:15(予定)
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 本文でも紹介しましたが、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)の2025年度分の活動成果の報告セミナーです。各部会・ワーキンググループが勢揃いして成果をまとめて報告します。技術検証WG(WG1⁠⁠、移行WG ⁠WG2⁠⁠、課題検討WG ⁠WG3⁠⁠、CR部会 のWGと部会から報告がある予定です。遅くともゴールデンウィーク明けには詳細の発表と参加募集が始まるはずです。PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムのWebページに掲載されますのでそちらに注意してください。
主催 PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)

MySQL Technology Cafeリターンズ - MySQL 9.7.0 LTSリリース & シン⁠開発戦略

日程 2026年7月27日(水)19:00〜20:30
場所 オンライン
内容 4月にリリースされたMySQL 9.7 LTSの新機能の解説とともにMySQLの新しい開発方針をご紹介します。MySQL 9.7は2032年までパッチ提供を行う長期サポート版の最新バージョンです。これまでMySQL Enterprise EditionやMySQL HeatWaveのみで利用可能であった機能を、積極的にコミュニティ版にも提供していく新方針の元、複数の機能がMySQL 9.7 LTS コミュニティ版に導入されています。
MySQLの開発チームでは、3月に発表した新しい「三本柱」の方針を実行に移すべく、MySQLコミュニティの皆さんにロードマップ策定に参加していただくためのウェビナーを開催しています。この中では意味のあるイノベーションをより速く進めること、そして同時に 透明性を高め、コミュニティからのフィードバックや参加の道筋をより明確にすることなどが議論されてきました。
今回のウェビナーではこれらのアップデートもあわせてご紹介します。申し込みサイトは近日公開予定です。開催はオンラインのみの予定です。
主催 Oracle Code Night

オープンソースカンファレンス(OSC)〔5月〜8月開催分〕

日程 Nagoya〕2026年5月23日(土)10:00~18:00
Sendai〕2026年6月6日(土)10:00または11:00~18:00
Hokakido〕2026年6月27日(土)10:00~18:00
Shimane〕2026年7月11日(土)10:00~17:00
Kyoto〕2026年8月1日(土)10:00~18:00(予定)
場所 Nagoya中小企業振興会館(名古屋市千種区)
Sendai東北電子専門学校(仙台市青葉区)
Hokakido札幌市産業振興センター(札幌市白石区)
Shimane松江テルサ(島根県松江市)
Kyoto京都リサーチパーク 4号館(京都市下京区)
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。今回ご案内する開催地はすべてセミナーと展示の両方とも会場開催です。
Nagoya〕プログラムが公開されています。
Sendai〕出展者募集は4月22日に終了しています。
Hokakido〕出展者募集中です(5月15日締切⁠⁠。
Shimane〕参加ご希望の方はWebサイトをご参照ください。
Kyoto〕5月中旬から出展者募集予定です。
OSSデータベース関連の発表の詳細は、公開される各回のプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

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