2026年4月20日から23日にかけて、SUSEはチェコ・
SUSEはもともとLinuxディストリビューション
本稿では、SUSECON 2026で実施されたロードマップセッションや関連インタビューをもとに、SUSEが進めるLinux戦略についてレポートする。
オープンソースをエンタープライズ品質へ変換する
同社のLinux戦略は、オープンソースコミュニティによって開発されたSUSE Linuxをビジネスに活用する
この考え方は非常に重要だ。オープンソースコミュニティによるSUSE Linuxや関連するツール群の開発は活発であり、その成果物は高速に進化を続けている。一方で、企業システムには10年単位で安定稼働することが求められる。SUSEはこのギャップを埋める存在として自らを位置付けている。
Švec氏はSUSE Linuxに求められる要件として以下の要素を挙げている。
- 長期サポート
- スケーラビリティ
- ハードウェア普遍性
- セキュリティ
- コンプライアンス
- レジリエンス
- 選択の自由
Švec氏の説明でとくに印象的だったのは
SLES 16で始まる新しいライフサイクル
現在のSLESの最新メジャーバージョンは2025年11月にリリースされたSLES 16だ。このSLES 16における最大の変化の一つが、長年続いてきたService Pack文化からの脱却である。これまでのSLESは、
しかしSLES 16からは、
このリリースモデル変更の背景には企業におけるIT環境の変化がある。従来はOSの更新そのものが巨大プロジェクトとされてきたが、現在はクラウドの利用に加えて、コンテナやCI/
SLES 16の新リリースモデルでは、2年間の通常サポートと、3年間の長期サポート
各バージョンのサポート期間には1年間のオーバーラップがあるため、顧客は余裕を持って自社の環境をアップデートできる。SLES 16系全体としては2041年までサポートが継続される予定であり、超長期運用にも対応できるとしている。
なお、SLES 15系についてはサポート期間が2037年末までとなっているが、これは
SLES 16は「次世代Linux基盤」として再設計された
SLES 16は単なる機能追加ではなく、設計思想そのものが大きく変化している。
まず、長年SUSE Linuxの象徴だったYaST中心の運用モデルが大きく見直された。YaSTはインストールから設定、運用までを広くカバーするオールマイティなツールだったが、SLES 16ではこのような万能管理ツール型アプローチをやめ、専門ツールへの分離が行われた。これは、単純な機能を持つ小さなプログラムの連携でシステムを構成するという、伝統的なUNIX哲学に基づくものだ。
具体的には、インストールは
さらにSUSEは、SLES 16.
セキュリティフレームワークも大きく変わった。SLES 16では、長年採用してきたAppArmorではなく、SELinuxが標準となった。背景には、Immutable OSやAIエージェント、Kubernetes統合などのニーズによって、より高度な強制アクセス制御
AIの導入については、AIワークロードを動かすための基盤としてSLESを進化させることに加えて、日々のLinux運用をAIで支援する仕組みを提供することにも力を入れている。後者については、MCP
重要なのは、SUSEが決して
SUSEは「Linux全体」をサポートする
冒頭で触れたように、SUSEがサポート対象とするのはSUSE Linuxだけではない。その姿勢を象徴するものとして、最近同社は、Linux環境管理ツールの
MLMは現在、SUSE Linuxに加えて、Red Hat系、Ubuntu系、Debian系、Raspberry Pi OSなどをサポートしており、異なるLinux製品群を統合的に管理できるプラットフォームに進化している。
SUSEのマルチLinuxサポートは、ツールによるものだけでなく、顧客向けのサービスとしても展開されている。それが
一般的な移行サービスは、他社ディストリビューションをSUSE Linuxへ置き換えるようなOS移行を前提とすることが多い。しかしSUSEのMLSは、既存のLinux環境そのものを維持しながら、サポート提供者だけをSUSEへ切り替えるという仕組みを採用している。
つまり、既存のRHEL系や他社Linuxをそのまま利用しつつ、署名済みパッケージやサポート体系だけをSUSE側へ移行し、SUSEが長期サポートや運用支援を提供するというモデルなのだ。SUSEのProduct Management Multi-Linuxを務めるStefan Behlert氏はこのモデルを、
SUSEがこのような戦略を取る背景には、近年のLinux市場の変化がある。Red Hatがライセンス方針を変更して以降、多くの企業が単一ベンダー依存へのリスクを意識し始めている。一方で、既存のLinux環境を全面的に再構築することは容易ではなく、とくに金融系システムのような長期運用基盤では、OSの変更そのものが大きなリスクになる。
SUSEはそのような企業に対して、今使っているLinuxを維持したまま運用・
みずほ銀行が示したMLSの実践例
SUSECON 2026では、マルチLinuxサポートが現在のSUSE戦略の中核に位置付けられていることを強く印象付ける出来事があった。日本のみずほ銀行によるMulti-Linux Supportの採用が、2026年のSUSE Customer Awardsに選ばれたのだ。
みずほ銀行は現在、10年規模の大規模モダナイゼーション計画を進めているが、OSサポート期限が迫る約20システムのレガシー環境を抱えていた。その中核的な施策の一つとして200台以上のレガシーサーバをMLSへ移行した。
とくに重要なのは、このプロジェクトが単なるOS移行ではなく、従来の環境をそのまま維持しながら、サポート基盤と運用モデルだけをSUSEへ切り替えたという点だ。
みずほ銀行のプラットフォームエンジニアリング部ディレクターを務める森圭司氏によれば、従来型のOSアップグレードでは、OSだけでなく関連システムやミドルウェア、周辺ソフトウェアまで含めて移行範囲が拡大し、莫大なコストと長期間の移行作業が必要になるのが大きな課題だったという。
金融システムではセキュリティパッチ適用を止めることは許されない一方で、ミッションクリティカルな基盤を短期間で全面刷新することも現実的ではない。
興味深いのは、みずほ銀行ではMLSを単なる延命策ではなく、クラウドネイティブ時代への橋渡しとして位置付けている点だ。同行では、将来的にはレガシーシステムを順次モダナイゼーションしていく計画を持っており、MLSはその移行期間を支える現実解となっている。
SUSE日本法人のカントリーマネージャである渡辺元氏は、この事例を
みずほ銀行のAwards受賞からは、SUSEがMLSを単なるサポートサービスではなく、企業の長期モダナイゼーションを支える次世代Linux運用戦略として位置付けていることが見えてくる。
「どのLinuxを使うか」から「どう運用するか」へ
Linux市場ではこれまで、
SUSEは、SLES 16による次世代Linux基盤の再設計や、MLS/