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画面のないFitbit Airを1ヵ月使って見えた「引き算」価値

スマートウォッチの市場を見渡すと、大画面化や多機能化の波が止まりません。

手元でメッセージを返し、電子決済を済ませ、体調の変化をリアルタイムで監視する。そんな万能なデバイスが腕にある利便性は疑いようがありません。しかし、その便利さの裏側で、絶え間なく手元に届く通知に疲弊し、毎日の充電サイクルに追われる生活に息苦しいと感じるユーザも増えています。

こうした「通知疲れ」「デジタルデトックス」への答えとして登場したのが、ディスプレイを完全に排除した「Fitbit Air」です。今回は、この画面を持たないこのミニマルなウェアラブルを1ヵ月使い込だ印象をまとめておきます。

できることと⁠できないこと

Fitbit Airを理解するには、割り切った仕様を整理する必要があります。

まずは「できること」からです。

このデバイスの最大の強みは「常時装着のストレスフリー化」「圧倒的な長寿命バッテリ」の2点に集約されます。

ディスプレイを廃した結果、本体は極めて薄く、羽のように軽くなりました。シャツの袖口に引っかかることもなく、衣服の脱ぎ着で邪魔になるシーンも皆無です。とくに就寝時は、時計を着けて寝ることに抵抗がありましたが、この軽さと薄さのお陰で異物感を覚えることはありません。

さらに、電力を最も消費する画面がないため、バッテリの持ちは驚異的です。1回の充電で、1週間から10日間は余裕で駆動します。毎日充電のタスクから完全に解放される価値は想像以上です。筆者の使い方であれば、週イチで、入浴中の数十分だけ充電すれば運用サイクルが完結します。

次は「できないこと」です。

ベタですが手元で時間を確認できません。また、スマホに届いた着信やメッセージの通知の閲覧も不可能です。バイブレーションを使った通知機能もありません。よって、腕が震えて作業を中断させられるリスクはゼロですが、重要な連絡に気づくこともできません。

その他、ウォーキングなどのアクティビティ中に、手元で現在のペースや心拍数をリアルタイムでチェックする手段も用意されていません。GPSも搭載されていないので、ルートを記録する際はスマートフォンの携行が必須となります。これらを求めるユーザーは、Fitbit Airを選ぶべきではありません。

手元での情報の確認や操作を完全に諦める代わりに、完璧なライフログと快適さを手に入れる。これが、Fitbit Airです。

Fitbitアプリの的確なコーチング

Fitbit Airを評価するうえで、核心となるのがGoogle Healthの「コーチング機能」です。手元でリアルタイムにデータを見られないからこそ、アプリを開いた瞬間に得られるフィードバックやアドバイスの質が、この製品の価値を決定づけます。

1ヵ月使ってみて感銘を受けたのは、アプリ内のコーチが提示するアドバイスの的確さとわかりやすさです。専門的なグラフや「深い睡眠が何%」といった数値を並べた結果表示ではなく、収集したデータを人間の行動レベルに翻訳して提示してくれます。

たとえば、⁠昨夜は深い睡眠が不足しています。今日は午後のカフェインを控え、いつもより15分早く布団に入りましょう」といった、今すぐ実践できる具体的なアクションを教えてくれるので、迷うことなく生活習慣の改善に取り組めます。

また、設定した目標を達成するための指針の示し方もブレがありません。

「日々の歩数を維持する」⁠睡眠スコアを改善する」といった目標を設定すると、現在の蓄積データとのギャップを精密に算出します。

たとえば「今週の目標を達成するには、あと2回、20分の早歩きを追加する必要があります」のように、ゴールに至るロードマップを具体的な数字で明確に示します。具体的な指針を示されるので、モチベーションが途切れることなく健康管理が継続できます。

さらに、体調が優れない日やストレススコアが高い日には、無理な運動を促すようなことはしません。代わりに「今日は軽いストレッチをして、身体を休めましょう」といったアクティブレストを提案する柔軟さも備えています。まさに、腕の中に優秀なパーソナル指導員が並走しているかのような心強さがあります。

画面のない生活がもたらした変化

Fitbit Airとともに1ヵ月生活してみて、筆者の日常には変化が生じました。

まずは、目の前の仕事や会話への集中力が劇的に向上した点です。スマートウォッチを着用していたころは、重要性の低い通知に集中力を奪われていました。これが遮断される心地よさは、一度体験すると手放せません。時間が確認できないのは、日常的に腕時計を着けているので、デメリットに感じることはありませんでした。

これまで通知に追われることの多い生活でしたが、1日のうち数回アプリを開いて、自分の体調の手応えを答え合わせすることが楽しさへと変化しました。精神的なゆとりにつながったと書けば大袈裟ですが、人とコンピュータの関係は、本来、この程度で十分なのかもしれません。

腕にディスプレイを着けるようになって10年近くになりますが、引き算の美学が生んだ静かなウェアラブルは、現代の健康管理の完成形を示しています。

今週は、このあたりで、また来週。

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