Anthropicは7月24日、新たなAIモデル「Claude Opus 5」を発表し、同日から提供を開始した。コーディングや長期にわたるエージェントタスク、知識労働を中心に、Claude Opus 4.8から性能を高めている。
コーディングや知識労働の性能を向上
Anthropicによると、Opus 5の性能は上位モデルのClaude Fable 5 に近い。システムカード の評価一覧では、ターミナル上で科学・工学を含む実務的な課題を解く「FrontierBench v0.1」で43.3%を記録した。Opus 4.8は21.1%、Fable 5は33.8%、GPT-5.6 Solは34.4%だった。未知の課題を解く「ARC-AGI-3」でも、次点モデルを上回った。
このほか、実際のソフトウェア操作を測る「OSWorld 2.0」 、知識労働の「GDPval-AA v2」 、業務自動化の「AutomationBench」などでも、比較対象のモデルを上回った。科学分野では、分光データから分子構造を推定する社内評価でOpus 4.8を10.2ポイント、タンパク質配列の変異が機能に与える影響を予測する評価で7.7ポイント上回ったという。
100万トークンのコンテキストと、 思考をデフォルトで有効化
Opus 5のコンテキストウィンドウは既定値、最大値ともに100万トークンで、最大出力は12万8000トークン。Anthropicのモデル一覧 によると、信頼できる知識のカットオフは2026年5月となる。
APIのモデルIDはclaude-opus-5を使う。Opus 4.8では、thinkingを指定しないAPIリクエストは思考なしで処理していたが、Opus 5では思考がデフォルトで有効になり、モデルが各ターンで思考の要否と量を判断する。デフォルトのeffortはhighで、low、medium、high、xhigh、maxの5段階から変更できる。難しいタスクでは高く、応答速度やトークン消費の抑制を優先する場合は低く設定することになる。
開発者向けページ によると、Opus 4.8から移行する場合は、effortがxhighまたはmaxの状態でthinking: {"type": "disabled"}を指定すると400エラーになる。
Anthropicは、Opus 5向けのプロンプト設計ガイド も公開した。Opus 4.8向けの既存プロンプトでも良好に動作する一方、ユーザー向けの応答や生成文書は長くなる傾向があるという。effortを下げても表示される応答が確実に短くなるわけではないため、必要な長さはプロンプトで明示するよう案内している。また、モデルは自発的に検証し、以前のモデルよりサブエージェントへ委任しやすいため、既存の検証指示を見直し、作業範囲や委任条件を明示することを推奨している。[1]
Claude Platformでは、会話中にツールを追加・削除してもプロンプトキャッシュを維持できる「Mid-conversation tool changes」をベータで提供する。Opus 5では、キャッシュ可能なプロンプトの最小長も、Opus 4.8の1024トークンから512トークンに短縮した。このほか、安全性分類器が拒否したリクエストを、拒否理由に応じてAnthropicの推奨モデルへ振り分ける「デフォルトフォールバック」もベータで追加した。
整合性評価では過去最高、 一部評価でハルシネーション率は上昇
Anthropicの自動行動監査では、Claudeの憲法 への順守度や、欺瞞的な行動・悪用への協力の少なさ、取り返しのつきにくい行動を避ける慎重さなどで、Opus 5が同社の最近のモデルを上回った。同社はOpus 5を「これまでで最も整合性の高いモデル」と評価している。
Opus 5はサイバーセキュリティに特化した訓練を受けていないものの、ソフトウェアの脆弱性を特定する能力はOpus 4.8から向上した。ただし、脆弱性を悪用する能力はMythos 5を大きく下回った。安全対策では、ソースコードからの脆弱性発見を許可する一方、コンパイル済みバイナリからの脆弱性発見は分類器で引き続き制限する。
正確性については、Web検索や知識ベースを使わず、41分野の事実問題に答える「AA-Omniscience」で、正答率がOpus 4.8の60%から71%に上がった一方、誤答率も17%から22%に上昇した。システムカードは、Opus 5の正確性が全体として向上したものの、実際には確信を持てていないにもかかわらず、自信ありげに回答する例が予想よりも多く見つかったとしている。
全有料プランと主要クラウドで提供、 API価格は据え置き
Opus 5は同日から、Claudeの全有料プラン、Claude Code、Claude APIで利用できる。Claude Maxではデフォルトモデルとなり、Claude Proでは利用可能なモデルのうち最も高性能な選択肢になる。Claude APIに加え、Amazon Bedrock、Claude on Google Cloud、Microsoft Foundryにも対応する。
Claude APIの標準価格は、入力100万トークン当たり5ドル、出力100万トークン当たり25ドルで、Opus 4.8と同額となる。Fable 5は入力100万トークン当たり10ドル、出力100万トークン当たり50ドルで、Opus 5はFable 5の半額に当たる。Opus 5のFast modeは通常の約2.5倍の速度で動作し、入力100万トークン当たり10ドル、出力100万トークン当たり50ドルで提供する。Claude APIではリサーチプレビュー、Claude Codeでは追加使用分として利用できる。
コラム: Claude 5世代向けコンテキストエンジニアリングの新ルール
AnthropicのThariq Shihipar氏は同日、「The new rules of context engineering for Claude 5 generation models」 を公開した。Claude Codeでの見直しを主な題材に、プロンプトだけでなく、システムプロンプト、スキル、CLAUDE.md 、メモリなど、Claude 5世代のモデルへ渡す情報全体を設計する「コンテキストエンジニアリング」を扱っている。
AnthropicはOpus 5やFable 5向けに、Claude Codeのシステムプロンプトを80%以上削減したが、コーディング評価で測定可能な性能低下はなかったという。同社は、旧来の細かな制約が新しいモデルの判断に余分な負荷をかける場合があるとしている。モデルの能力向上に加え、スキル、メモリ、Artifactsといった情報の受け渡し手段が増えたことを踏まえ、Claude Codeでモデルに渡すコンテキスト全体の設計を見直した。
その知見を踏まえ、ブログでは次のような設計方針を示している。
ルールを与える→判断を委ねる :以前はコメントや文書の作成を細かく制限していたが、新しいシステムプロンプトでは、周囲のコードに合わせてコメント量、命名、書き方を選ぶよう求めている。
使用例を与える→インターフェースを設計する :ツールの使用例は、モデルが探索する範囲を狭める場合がある。代わりに、引数や選択肢、状態の定義そのものから使い方が分かるよう、ツールのインターフェースを設計する。
情報を最初から与える→段階的に開示する :コードレビューや検証の手順は個別のスキルへ移し、必要なときだけ読み込むようにした。ツール定義にも遅延読み込みを使い、必要になるまでコンテキストを占有しないようにした。
同じ指示を繰り返す→説明を一か所にまとめる :システムプロンプトとツール説明の両方に同じ例を書かず、ツール固有の指示はツール説明側にまとめる。
CLAUDE.md をメモリにする→自動メモリを使う :以前は利用者に情報をCLAUDE.md へ保存するよう勧めていたが、現在は作業や利用者に関係する内容をClaude Codeが自動で記憶する。
単純な仕様書を渡す→豊富な参照資料を渡す :単純なMarkdownの仕様書だけでなく、テストスイート、コード、HTMLのモックアップ、評価基準など、より具体的な参照資料を使う。
利用者向けには、CLAUDE.md を簡潔に保ち、リポジトリの目的や、コードを読んだだけでは分かりにくい注意点を残すことを勧めている。検証方法などの長い手順は必要なときに読み込むスキルへ分け、スキルでは、特に重要な領域を除いて制約を増やしすぎないようにする。Claude Codeには、スキルやCLAUDE.md の分量が多すぎないか確認する/doctorコマンドも追加された。