写真で振り返るCOMPUTEX 2026

先端GPUを支える電力供給と冷却技術(前編)

2026年6月2日から6月5日まで、台湾・台北にてCOMPUTEX 2026が開催されました。今年のCOMPUTEXは当然ながらAI指向が非常に強いものになりました。

近年、GPUやサーバシステムなどAI開発・利用に直接関わる部分への投資が集まっています。COMPUTEX会場でもそこが大きくアピールされていました。その一方で、電力と冷却に関する出展・発表も多くありました。これまで、電力や冷却の話題は「AIシステムのボトルネック」として語られがちでしたが、いまやAIシステムの技術開発の中核技術の1つとなっています。

本稿では写真を中心に、COMPUTEX会場の展示やフォーラムでの発表から、電力と冷却関連の話題を拾ってみます。

液冷ラック

より高いAI処理能力を求めた結果、AIサーバシステムは大量の熱を発生させるようになりました。それを冷却するために、多くのサーバメーカが従来的な空冷から液冷システムの採用を進めています。

写真1はMITACの液冷サーバ群ですが、ラック下部に250kWのCDU(外部から供給される水との熱交換器)があります。なおパワーシェルフは村田製作所、CDUは日本電産と、日本製品も目立っています。

写真1 MITACの液冷サーバラック

液冷ラックは表から見ると普通の空冷サーバと大差ないのですが、背面はこのとおり液冷のパイプが張り巡らされています(写真2⁠⁠。各サーバと下部のCDU(こちらは200kW製品)の配置・接続がよくわかります。

写真2 液冷ラック背面・CDUと配管に注目

サーバの冷却

ではラックの中の機器を見てみましょう。写真3はASUSブースのVera Rubin NVL72の展示で、左がNVLink Switch、右が計算ノードです。DLC(直接液冷)と呼ばれるタイプのものです。

写真3 ASUSのVera Rubin NVL72ユニットの展示

空気を流すことがないため銅パイプやホースが目立ちます。が、最近のシステムは隙間がほとんどなく、蓋がされていることが多いため中の構造がよくわかりませんね。

一方、FoxconnブースのGB300向け冷却システム展示(写真4)は冷媒の経路やコールドプレートの配置がよくわかるものでした。

写真4 FoxconnのGB300向け冷却システム展示

写真4の奥にある2つの銅パーツがGB300(GPU✕2+CPU✕1)向けのコールドプレートですね。機体中央のユニットはPDB(Power Distribution Board)用、そのさらに下のユニットはNVMeストレージの冷却用と思われます。左右手前側にある4つの細長いプレートはNICに差し込む光トランシーバのためです(なお、FoxconnはNVIDIA向け基板を製造していますが、この展示が実際の製品そのものか、展示用モデルなのかは確かめていませんので念のため。よく見ると右側のNICの冷水経路がつながれていませんね!⁠⁠。

1.6Tbpsネットワーク

AIサーバシステムは非常に高額なため、それを少しでも効率良く動作させることが重要です。そのためネットワークの高速化も急速に進んでおり、今回は 1.6Tbpsの製品がいくつも見られました。

写真5はFoxconnブースの1.6Tbps OSFPトランシーバのライブデモです。黄色いファイバがループバックしており、自分が送信したパケットを自分で受信させる実験であることがわかります。

写真5 Foxconnの1.6Tbps光トランシーバのデモ

シリコン・フォトニクス技術によって発熱は抑えられているとは言え、それでもトランシーバは大変に熱くなるために、サーバやスイッチの中では冷却する必要があります。液冷サーバは筐体内を風が通り抜けないのでトランシーバが排熱できず、先に示したFoxconn展示のようにコールドプレートを当てて液冷するなどします。このデモ基板の裏側(写真6)を覗くと、仮付けと思われるコールドプレートと冷媒のパイプがあり、さらにファンをたくさん置いて強く風を当てていました。

写真6 1.6Tbps光トランシーバの裏側

試しに(Foxconn とは別の展示で)実際に動いていた1.6Tトランシーバに触ったのですが、相当に熱くなっていましたね。

液浸冷却

AIによる処理能力要求はとどまる様子がなく、今後も発熱量が大きくなるものと思われます。それをにらんで、ここ何年かのCOMPUTEXではさらに高い排熱性能を期待できる液浸冷却のデモをいくつかの企業が出展しています。GIGABYTEはその1つでしたが、今年はかなり大きくフィーチャーされていました。

写真7はGIGABYTEの(サーバ系の)ブースを正面から撮ったものです。モジュール型データセンター(後述)を意識した、プレハブのような簡単な建屋の中にDLCによる液冷ラックが並んでいます。

写真7 GIGABYTEのサーバ展示ブースエリア正面

このちょうど裏側が次の写真8ですが、中には液浸冷却(Liquid Immersion Cooling)のタンクがずらっと並んでいます。Immersionとは「ドボンと浸ける」ことを意味します。⁠イマーシブな(没入感のある⁠⁠」などで用いられていますね。

写真8 GIGABYTEのサーバ展示ブースエリア裏側

展示の中を見ると写真9のとおり、タンクが確認できます。招待客限定ブースのため筆者は中を見られませんでしたが、タンクは導電性のないオイルで満たされており、その中に液浸用サーバが縦に並んで(吊るされて)いたものと思います。

写真9 GIGABYTEの液浸タンク展示

多孔質材料のヒートシンク

液浸冷却には対流で熱を運ぶ1相式と、気化熱を利用する2相式があります。GIGABYTEは1相式ですが、2相式の展示もいくつかありました。そのうちの1つ、エレマテック株式会社のブースにあったロータス・サーマル・ソリューションという日本企業のデモを紹介します(写真10⁠⁠。

写真10 ロータス・サーマル・ソリューションの多孔質材料とデモ

このシステムは多孔質形状の銅プレートをCPUなどに付けて2相式、つまりそこで気化する冷媒に浸けます。写真左から2つ目のチップがNVIDIAのBlackwell GPUで、ちょっとわかりにくいですがプレートからの発泡が確認できます。一般的な多孔質材料とは異なり、蓮根(レンコン)のように一方向に小さな穴が通る形状のため、圧力損失(流体の抵抗)が小さく、冷媒の通りが良いのが特徴です。

ところでこの形状は連続鋳造で作られています。筆者は驚いて「3Dプリンティングではなく鋳造で?」と聞き直してしまいました。押し出し材のように長く作り、それを薄く切って使います。写真11のようにチップに貼り付けるプレートとの間に少し隙間を設けて、気泡が上がる際に周囲から冷媒を吸い込むことで効率良く機能するとのこと。

写真11 チップ貼り付けプレートとの接合

もとは大阪大学で作られた技術とのことで、2016年の起業時の記事(⁠⁠PC Watch⁠⁠/インプレス)などを見ることができます。放熱が注目を集めている現在、液浸などの場面で伸びてくることを期待します。

もう1つ、GIGABYTEブースでも多孔質材料のAI Gyroid M.2 heatsinkが展示されていました(写真12⁠⁠。

写真12 GIGABYTE AORUS X870Eの展示

ロータス社のものに比べて穴のサイズがかなり大きく、製造も3Dプリンティングによるものですが、こうしたコストの掛かる技術がこの規模の量販品に適用されたことからも、多様な放熱に対する要求の大きさを実感します。

おわりに

今年のCOMPUTEXはどこを見てもNVIDIA、あっちもこっちもAI Factory、という状況でした。

たとえば先に示したGIGABYTE展示で触れたモジュール型データセンターとは、電源設備や冷却設備、IT設備などを工場であらかじめモジュールとして構築し、需要に応じて段階的に増設・更新できる設計・運用手法です。AI向けシステムの急速な世代交代や、急成長に伴う設備拡張にも短期間で対応できます。COMPUTEXではこうしたモジュール型AI Factoryのコンセプト展示が多くありました。

本稿ではAIシステムの発熱とその冷却に関する話題に絞ったため、大企業の事例に集中して取り上げました。一方で(今年はかなり弱くなったとは言え⁠⁠ COMPUTEXはスタートアップの出展も重要なので、最後に日本発の技術としてロータス・サーマル・ソリューションを取り上げました。

後編では、さらに「熱い⁠⁠、1MW級ラックの電力供給に関する技術展示を取り上げようと思います。

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