Hugging Face CEOのClément Delangue氏は7月10日、AI関連ニュースを掲載するWebサイト「HuggingNews」をXで紹介した。AI研究者のNikolai Yakovenko氏が開発したサービスで、約1,200の主要なXアカウントによる投稿、返信、リポストを軸に、直近24時間に浮上した話題の記事をAIで作成し、順位付けする。
見出し、 短い記事、 発信元の投稿をひとまとめに
HuggingNewsは、AI企業や研究機関、オープンソースプロジェクト、記者、研究者などのX投稿を中心に、公式発表、論文、提出書類、リリースノート、報道、論評といった公開情報を収集する。複数の発信元が新しい話題に言及すると、関連する投稿をまとめ、調査を加えたうえで見出しと2~3段落の短い記事を作成する。処理は2時間ごとに実行しており、完全なリアルタイム配信ではない。
対象分野は、AIモデルや研究、オープンソース、開発者向けツール、半導体、インフラ、AIエージェント、資金調達、政策、セキュリティなど。各記事にはトピックやタグ、企業・製品・人物などの情報を付け、企業やプロジェクト、当事者による一次情報を優先して掲載する。記事の下には、情報源となったX投稿の重要部分や、背景の理解に役立つ反応、論評も抜粋して示す。各抜粋には元の投稿へのリンクが付き、必要に応じて全文を確認できる。
1日数十本を掲載、 重要ニュースは「TL;DR」に集約
HuggingNewsは1日数十本の記事を掲載しており、Yakovenko氏によると、目安は約50本。トップページ上部の「TL;DR」には、その中から重要な5~6件をまとめる。話題になっているモデル名などを示す「Trending」も用意し、多数の話題を短時間で見渡せるようにしたという。
サイトは画像やグラフィックスを極力使わず、モバイル端末でも読みやすい軽量な設計を採用している。未ログインで閲覧できるのは直近3日分で、Hugging Faceアカウントでサインインすると全記事のアーカイブを参照できる。
現時点では、利用者ごとに記事を並べ替えるパーソナライズ機能は提供していない。今後はHugging Faceのプロフィールを使い、関心のある企業やモデル、オープンソース関連の話題などを反映する機能の追加を予定している。利用者の関心に合わせつつ、その日の重要ニュースも見落とさない仕組みにするため、具体的な設計は検討中という。
AIエージェントからの読み取りも想定
HuggingNewsは、人だけでなくAIエージェントからの読み取りも想定し、記事ページの構成を統一している。今後、MCP、API、RSSも提供する予定。
コラム: 短い記事の執筆用にQwen 3.6 35Bモデルを調整して利用
Yakovenko氏はXに投稿した記事 で、HuggingNewsのニュース生成の流れと、執筆に使うモデルの調整方法を解説している。
HuggingNewsでは、大規模モデルが関連投稿をまとめ、主要な事実や反応を抽出して記事案を作成した後、ニュース執筆用にファインチューニングしたQwen 3.6 35Bモデルが最終的な見出しと本文を書いている。
同氏は当初、ClaudeやGPTに長いプロンプトを与え、下書きと推敲を重ねる方法を試したという。しかし、過剰なダッシュ記号やハイフンでつないだ複合語、「 Microsoft Says」のような「○○ Says」型の見出しなど、大規模言語モデルにありがちな書き癖を安定して抑えるのは難しかった。個別に修正を指示すると、文全体の流れや見出しの読みやすさが損なわれることもあったとしている。
そこで、文体や見出しに求める要素を評価する決定論的な採点処理を用意し、強化学習手法のGRPOで同モデルを調整した。報酬の大半には文体のスコアを使い、一部には大規模モデルで作成・検証した模範例との類似度も利用している。オンラインの大規模モデルによる評価を省くことで、学習の高速化と再現性の向上を図ったという。
同氏は、調整後のモデルが多くの場合、長いプロンプトを与えた大規模モデルや、未調整の同モデルよりも良い記事を書いたと評価している。ただし、現段階で主に学習させたのは書式と文章表現であり、ニュースの切り口の選び方までは学習させていないという。投稿の選別、クラスタリング、記事候補の作成、重複排除を含む処理全体の詳細は、今後別の記事で取り上げる予定としている。
コラム: MicrosoftのSatya Nadella氏が提起した「逆情報パラドックス」
HuggingNewsが最近取り上げたニュースの一つに、Microsoft CEOのSatya Nadella氏が提起した「Reverse Information Paradox(逆情報パラドックス) 」がある。同氏はXへの投稿 で、経済学者Kenneth Arrow氏の「情報パラドックス」を引き合いに出した。このパラドックスでは、買い手は内容を見るまで情報の価値を判断できず、売り手は価値を示そうとすると契約前に情報を開示してしまう。AIでは反対に、有料サービスの利用者が効果を得るために自社の知識を提供者側へ渡しかねないと説明している。
AIを自社の業務に合わせて調整するほど、モデルに入力するプロンプトやエージェントによるツールの利用履歴、誤りへの訂正、評価結果などが蓄積する。Nadella氏は、こうしたデータには組織固有の知見が含まれ、モデル提供者の学習に使われれば、利用料金を支払いながら、自社のノウハウまで提供者の学習に取り込まれることになると指摘した。
対策として、企業のデータ、利用履歴、評価、調整済みモデルの重み、メモリを社外へ出さず、自社で管理できる環境に蓄積する必要があるとしている。また、モデル、データ、ツールをつなぐオーケストレーション層を特定のモデルから切り離し、モデルを変更しても組織に蓄積した知識や評価基準を引き継げる仕組みを求めている。
コラム: 「AI 2040」が描く、 超知能競争を避けるPlan A
もう一つ、HuggingNewsが取り上げたニュースを紹介する。
高度なAIの将来予測と政策提言に取り組む非営利研究団体AI Futures Project は、筆頭著者のThomas Larsen氏らによるシナリオ「AI 2040: Plan A 」を公開した。
同団体が2025年に公開した「AI 2027 」は、AIがAI研究を自動化し、より高性能な後継AIを生み出す再帰的自己改善(RSI)を通じて、2027年中に人間の能力を大きく上回る超知能(ASI)へ到達する展開を描いた。その後、人類滅亡や不可逆的な権力集中に至る可能性も盛り込んでいる。これに対し、AI 2040のPlan Aは、こうした事態を避けながら、超知能の開発を2040年まで遅らせるための構想を示している。
Plan Aでは、2029年に米国と中国が無謀な超知能の開発競争を避けるための国際協定を結ぶ。2030年にはAI研究開発の完全な自動化が可能になるものの、協定によって超知能への移行を回避し、2035年までは人間の能力の範囲内で段階的に開発を進める。2035年には人間の専門家と同程度の水準で開発を一時停止し、人間による制御を維持したうえで、2040年に超知能へ移行する。AI Futures Projectは、Plan Aを将来予測ではなく、政策提言を具体化して検証するためのものと位置付けている。
また、AIのアルゴリズムやコード、文書を含むほぼすべての研究を公開する一方、モデルの重みや学習データの重要部分はデータセンター外へ出さない「Total Research Transparency」も提案している。