OSSデータベース取り取り時報

第132回MySQLコミュニティのステアリング⁠コミッティにAWSとGoogle Cloudが参画⁠注目のPostgreSQL 19ベータ版追加情報⁠Tsurugi最新情報

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2026年7月の主な出来事

7月は、原稿締め切りの時点では製品のリリースはありませんでした。7月はオラクルのCritical Patch Update(CPU)が公開され、MySQLのマイナー・バージョンもリリースされる月となっています。MySQLのCPUは公開されていますが、ソフトウェアがダウンロード可能となっていません。また、次期イノベーション・リリースであるMySQL 26.7のリリースも予定されていますが、これらのリリースについては次回解説予定です。

2026年に入ってから、MySQL Community Engagement Strategyを軸として改革が進むMySQLのエコシステムの拡大施策ですが、6月末から7月にかけて大きな進展がありました。また、その内容を踏まえたユーザ会のイベントが、東京、ソウル、台北の各地で開催されました。

MySQLコミュニティ⁠ガバナンス⁠モデル

6月25日に、新しいMySQLの開発の仕組みを定義する「MySQLコミュニティ・ガバナンス・モデル」が発表されました。このモデルで、これまでのオラクル単独でのMySQLコミュニティ版の開発から、より多くのコミュニティの開発者が開発に参加するための枠組みを定義しています。

MySQLコミュニティ版の開発の方向性や全体のガバナンスのため、新たに「ステアリング・コミッティ」が組織され、オラクルに加えてAWSとGoogle Cloudが全体の管理の主体となります。さらに複数の企業または団体の参加も予定されています。

パッチなどの提供のみならず、バグ報告や機能追加要望、ドキュメントの修正など、幅広い形での貢献に携わる人々を「コントリビューター」としています。コントリビューターとして一定数の貢献を行い、その貢献が受け入れられた実績を積むことで、⁠コミッター」として詳細なコードレビューや承認、コードのマージなどを担当する役割になります。さらに、特定の機能やコンポーネントの管理者として大がかりな変更の承認を行う権限を持った「プロジェクト・リード」や、MySQLサーバー全体に関わるようなレベルや複数の機能にまたがる変更の調整などを行う「コア・プロジェクト・リード」が定義されています。

短期的にはコミッターはオラクルのMySQL開発チームに所属するエンジニアのみですが、なるべく早い時期にオラクル以外からのコミッターが出るように、メンターが付いて支援も行う旨が発表されています。

オラクルとAWSのキーパーソンが来日した日本MySQLユーザ会イベント

6月30日には、MySQL Community Engagement Strategyによる施策を取り仕切るオラクルのVice PresidentであるHeather VanCuraが来日し、日本MySQLユーザ会のイベントで講演を行いました。タイミングとしては、MySQLコミュニティ・ガバナンス・モデルの発表後、初のイベントとなっています。

象徴的だったのが、AWSでMySQL系サービスのGTMを担当するAndrew Bowles氏も講演を行い、これまでのAWSのオープンソースへの貢献と、今後のオラクルとの協業への期待を語っていました。

Heatherの講演の中では、MySQLコミュニティ・ガバナンス・モデルに加えて、コミュニティによるMySQLロードマップ作成や、これまでMySQLのバグデータベースに報告のあったバグや機能追加要望の対応状況の可視化が紹介されました。また、大きく時間を使っていたのは、MySQLコミュニティ版の開発を、GitHubに移行していくという点でした。MySQLコミュニティ・ロードマップもすでにGitHubのMySQLコミュニティのレポジトリにてプロジェクトとして公開されています。

今後の機能追加要望は、コミュニティからの意見を募る形でGitHubのDiscussionsに議題を作り、その上で、Issuesで具体的なものを登録する流れになります。バグ報告もIssuesを使うこととなります。現時点では、オラクルのMySQL開発チームによるコミュニティ版のコードの修正などはGitHub上では行われていませんが、MySQL Community Engagement Strategyのフェーズ3として、10月頃をめどに、オラクルの活動もGitHub上に移行することも公表されました。

本連載の著者も、MySQLでのUnicode 17サポートの機能追加要望のDiscussionと、該当するIssueを作成しています。また、台湾で使われる中国語のソート順や照合のサポートを提案するDiscussionも作成し、こちらは8月に開催される台湾のオープンソースのイベントCOSCUPにて、MySQLユーザーグループのみなさんと議論の上で、Issueを作成する予定です。なお、Issueの作成の際には、AIの力を借りながらMySQL Community Design Proposalで用意されている必要項目を埋めています。このツールによって、各Issueのフォーマットを揃えることで、コミュニティでの議論が行いやすくなることが期待されています。

[PostgreSQL]2026年7月の主な出来事

今回も次期メジャーバージョン19の情報を中心にお知らせします。

次期メジャーバージョン19の2回目のベータ版がリリース

6月にリリースされたばかりの次期メジャーバージョン19のベータ版ですが、7月16日にベータ2が公開になりました。今回のリリースは、最初のベータ版の公開以降に報告された不具合の修正が中心です。

  • SQL/PGQ関連の修正などが行われました。
  • 並列自動バキューム(Parallel Autovacuum)ワーカーの調整や、REPACK CONCURRENTLY などのロック処理が改善されました。
  • その他10数件の変更が加えられています。

今回のベータ2での変更の他、新バージョン19のすべての機能と変更点に関する情報はリリースノートに記載されています

また、この新バージョンはベータ版であり正式リリースではありませんが、Amazon Web Services(AWS)で一足早く利用可能になっています

繰り返しになりますが正式リリース前のベータ版ですから、本番環境として利用するには適していません。しかし、正式リリース前に先行して評価やテストをしたい方には重宝するでしょう。

バージョン19ベータ版について解説された各種情報

6月にベータ版がリリースされてから、さまざまな組織から検証報告や解説が出てきています。先に述べたようにベータ2がリリースされましたが、以下に紹介する情報は最初のベータ版かそれ以前の情報に基づいたものになります。

SRA OSSのPostgreSQL 19検証報告
SRA OSSから94ページに及ぶ「PostgreSQL 19検証報告」が公開されています
  • REPACKコマンド、SQL/PGQ対応、データチェックサムの動的有効化などの主要な追加機能について解説されており、非互換変更点についても触れられています。
  • インストールやコマンド実行の手順も記載されています。
EnterpriseDB(EDB)の技術ブログ
EDBから「Jumping the gun: looking ahead at PostgreSQL 19(フライング気味:PostgreSQL 19の展望⁠⁠」と題した技術ブログが出ています。次期バージョンPostgreSQL 19の開発動向やスケジュールについて解説されています。
Snowflakeのエンジニアリングブログ
Snowflakeからも「Looking Ahead to Postgres 19(Postgres 19の展望⁠⁠」という技術ブログが出ています。新機能のREPACKやパーティショニング、論理レプリケーション強化などの主要な機能について解説されています。

[Tsurugi]2026年7月の主な出来事

次世代高速RDB劔"Tsurugi"は精力的に機能向上・改善が進んでいます。

Tsurugi 1.11.1と1.11.2がリリース

6月末から7月にかけて2回のバージョンアップがありました。利用できるSQLの機能が広がってきています。また精力的なバージョンアップに伴い発見された不具合も修正されています。

  • 6月末にリリースされたバージョン1.11.1では、SQLの機能が追加されました。UPDATE文、DELETE 文でテーブル別名の指定に対応しました。また、相関サブクエリーを含む特定の条件を満たすクエリーの実行で、データベースが異常終了することがある点が修正されています。
  • 7月16日にはバージョン1.11.2がリリースされました。これはバージョン1.11.1 に対する不具合修正を中心としたメンテナンスリリースです。オフラインコンパクションツール tglogutil compaction に関するものが主な修正点の様です。

2026年8月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

MySQL 26.7イノベーション⁠リリースから始まった新しいリリースモデル

日程 2026年8月6日(木)19:00〜20:30
場所 オンライン
内容 MySQL 26.7イノベーション・リリースは、新しいYY.M形式のバージョン番号を採用する最初のバージョンです。
本ウェビナーでは、オラクルに加えてAWSとGoogleをステアリング・コミッティに迎えたMySQLコミュニティ版の新しい開発体制であるガバナンス・モデル、MySQL 26.7イノベーション・リリースの位置づけと新しいバージョン番号ポリシーの概要を紹介したうえで、レプリケーション、ポスト量子暗号(耐量子暗号⁠⁠、アップグレードチェック、スレッド・プール・プラグインなど、今回のリリースで注目すべき技術的な更新点を解説します。MySQLの最新機能をいち早く把握したい開発者、DBA、インフラ担当者におすすめです。
主催 Oracle Code Night

低遅延AIの最前線~OT/Physical AI/モビリティでのAI利用の実際(AI⁠人工知能EXPO NEO での劔"Tsurugi"講演)

日程 2026年8月6日(木)16:15 ~16:45
場所 東京国際フォーラム(⁠⁠AI・人工知能EXPO NEO」内)
内容 「AI・人工知能EXPO NEO」の中で、⁠低遅延AIの最前線~OT/Physical AI/モビリティでのAI利用の実際」と題して劔"Tsurugi"の講演が行われます。
産業用機器・制御系OT・ロボット制御・等々でのエッジ系でのAI利用は、もはや通常運用になっています。ここに生成AIを利用することもまた主流になりつつあります。しかしながら、エッジ系での制御では遅延が最大の課題です。特にクラウド系LLMでは処理に時間がかかるため、ミリ秒スケールでLLMを利用するのは困難です。また、特定の推論チップでの処理は、コスト/開発に時間が掛かります。オンサイトで超高速RDBのTsurugiをデプロイして、同時にLLMもローカルで動かすことにより、人間の反射速度・処理能力を超えたAIを稼働させ、またオープン系の仕組みを利用することで開発コスト・納期を短縮するソリューションを実際のデモを見せつつ解説します。
主催 RX Japan 合同会社(上記講演の担当: 株式会社ノーチラス・テクノロジーズ

オープンソースカンファレンス(OSC)〔8月〜12月開催分〕

日程 〔ODC〕2026年8月29日(土)10:00~17:45
〔Hiroshima〕2026年9月12日(土)10:00~18:00
〔Online/Fall〕2026年10月2日(金⁠⁠~3(土)10:00~18:00
〔Tokyo/Fall〕2026年10月17日(土)10:00~16:00(展示のみ)
〔Fukuoka〕2026年12月12日(土)10:00~18:00
場所 〔ODC〕日本工学院専門学校 蒲田キャンパス 3号館7F(東京都大田区)
〔Hiroshima〕サテライトキャンパスひろしま(広島県民文化センター 5F)
〔Online/Fall〕オンライン開催 ⁠Zoom,YouTube Live
〔Tokyo/Fall〕東京都立産業貿易センター台東館
〔Fukuoka〕福岡大学 A棟 7F交通アクセスキャンパスマップ
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。今回ご案内する開催分では、Online/Fall(オンライン)はセミナーのみ、Tokyo/Fall(東京)は会場で展示のみ、その他は会場開催でセミナーと展示の両方が実施されます。
〔ODC〕7月下旬タイムテーブル公開予定
〔Hiroshima〕8月中旬タイムテーブル公開予定
〔Online/Fall〕発表者(団体)募集中(8/24締切)
〔Tokyo/Fall〕8月上旬から出展者募集予定
〔Fukuoka〕9月下旬から出展者募集予定
OSSデータベース関連の発表の詳細は、公開される各回のプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

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