PyCon US 2026参加レポート

#02PyCon US 2026カンファレンス後半 ―Python高速プロファイラー“Tachyon”とは⁠Pythonと音楽でコンピュータサイエンスを学ぶ⁠Djangoトレーニングコミュニティが育てる将来の開発者

2026年5月13日~19日にアメリカ、カリフォルニアで開催されたPythonの年次国際カンファレンス「PyCon US 2026」レポートの第2回をお届けします。第1回のレポートは以下で公開中です。

カンファレンス2日目

カンファレンス2日目です。この日は筆者と同行した寺田さんの発表、PSF Member Lunch、PyLadies Auctionなど、さまざまなイベントがありました。

PSF Member Lunch

PSF Member LunchはPython Software Foundation(PSF)のスタッフ、理事やメンバーが参加して、ランチをとりながらPSFの運営状況について共有、ディスカッションをする場です(筆者はメンバーとして参加⁠⁠。

各地域の支援金額のグラフでは、2024年から2025年かけて、アジア地域では12%から6%とかなり割合が減っています。これは、2025年の途中で資金が足りなくなり、助成金プログラムを停止した影響があると思います。2025年の後半にPyConを開催予定だった多くのアジアの国と地域が、PSFの助成を受けることができませんでした。

地域ごとの助成金額の推移
地域ごとの助成金額の推移

また、このイベントの中で「PyCon US 2027」がロングビーチで開催されることが報告されました。来年もロングビーチです。

Tachyon: Python 3.15's sampling profiler is faster than your code

本トークではPython 3.15で新しく追加されるプロファイラーTachyon(タキオン)の開発の背景や高速化のポイント、実際の使い方について紹介されました。プロファイラーとはプログラムの実行中の状態を監視や記録し、各処理の実行時間や関数の呼び出し回数などを解析するためのツールです。主にパフォーマンス改善に使用されます[1]

今までのプロファイラーは“The Slowest profiler on the planet”
今までのプロファイラーは“The Slowest profiler on the planet”

このプロファイラーの名前はTachyonですが、Pythonのモジュール名はprofiling.samplingです。公式ドキュメントにはロゴの画像もあり、他の公式ドキュメントにはない少し変わったモジュールだなと思いました。

Tachyonは現時点では最も高速なPythonのプロファイラーです。このプロファイラーは外部からプログラムのメモリを読み取る方式のため、対象となるプログラムの動作に負荷をかけることはありません。一定時間ごとにメモリの状況をサンプリングするため、その間に実行が完了した関数などは検出されない可能性があります。とはいえ、処理が遅いところを知りたいのでプロファイラーとしては問題がないという考えです。

Tachyonのアーキテクチャーの説明のあとは、具体的な使い方について説明がされました。

キャプチャーモードでは以下のようにpython -m profile.samplingコマンドのあとにrunサブコマンド付けてスクリプトを実行すると、そのスクリプトをプロファイルします。また、実行しているプロセスに対してattachサブコマンドで接続も可能です。

プロファイルを実施するコマンド
python -m profile.sampling run main.py
python -m profile.sampling attach <pid>

プロファイル結果の出力フォーマットにはさまざまなものがあります。デフォルトはpstatsフォーマット--pstatsです。pstatsフォーマットではプロファイル結果を色つきの表形式で、関数の場所、サンプル数、処理時間などが表示されます。

pstatsの出力イメージ(Python公式ドキュメントより)
pstatsの出力イメージ

この他、--flamegraphオプションを付けると、フレームグラフ形式で結果が表示されます。フレームグラフでは呼び出しのスタックが入れ子で四角形で表示され、幅が処理時間になります。視覚的にどの部分で処理に時間がかかっているかが把握できます。

フレームグラフの出力イメージ
フレームグラフの出力イメージ

オプションには--geckoというものもあり、これはFirefox Profiler用のファイルを出力します。Firefox Profilerを知らなかったのですが、Firefox上の機能やChrome拡張として提供されているツールで、元々はWebアプリケーションのパフォーマンス解析に使用するようです。このプロファイラーに対応することで、Firefox Profiler上で対話的に解析ができるようです。

動作中のサーバーに対しても、プロセスIDを指定してプロファイリングが行えるTachyon、便利そうです。パフォーマンス改善が必要なときに使ってみたいと思います。

PyLadis Auction

カンファレンス2日目の夜にはPyLadies Auctionがあります。このイベントはPyCon USの関係者(スポンサーやスタッフなど)がグッズを提供し、オークション形式で競り落とすというものです。落札されたお金は全てPyLadiesに寄付されて、PyLadiesの運営資金となるチャリティオークションです。

会場では丸テーブルでディナーを楽しみながらオークションに参加します。前方のステージでグッズを紹介し、参加者が札を掲げて商品を競り合います。

オークション会場
オークション会場

写真の通りさまざまなアイテムが出品されています。透明のスケートボードはSentry提供、Meta提供のPythonレゴセットはすごくほしいですが、当然ですが金額的に全然無理でした。

さまざまなアイテム
さまざまなアイテム
Meta提供のPythonレゴ
Meta提供のPythonレゴ

オークション会場で、PyCon JP 2026のキーノートスピーカーであるCarol Willingさんにあいさつをしました。Carolさんと筆者はPyCon Malaysia 2019[2]で初めて会って、その後東京でも一緒にビールを飲んだりしています。

「日本でまた会えることを楽しみにしています。ビールに行きましょう!!」といった話を振ると「東京でもなにかやりたいですね」とうれしい提案がありました。具体的にどうなるかはわかりませんが、ご期待ください。

Carol Willingさんと
Carol Willingさんと

カンファレンス3日目

カンファレンス最終日です。この日は筆者自身のライトニングトーク、PSFのセキュリティエンジニアや、Steering Councilからのトークなどがありました。

ライトニングトーク

PyCon USではカンファレンス中に4回(1日目夕、2日目朝、夕、3日目夕)ライトニングトークがあります。2日目の朝は寺田さんがライトニングトークをしていました。筆者は最後のライトニングトークに申し込んでスピーカーに選ばれたので発表してきました。タイトルは「Find Better 🐱 Cat Emojis with your text!」で、昨年のライトニングトーク[3]の続きとなるトークです。

今回も昨年同様、冒頭で「Do you like Cats?(ネコは好きですか?⁠⁠」と問いかけて会場から「Yeeees!!」と答えてもらうところから本題をはじめました。聴衆の中には「あれ、この流れ去年あったな?」と思ってくれた人もいたんじゃないかなと期待しています。

筆者のライトニングトークの様子
筆者のライトニングトークの様子

PSF - Update from our Security Engineers

PSF(Pythonソフトウェア財団)のセキュリティエンジニアであるSeth氏とMike氏からの発表です。

Seth氏(左)とMike氏による発表の模様
Seth氏(左)とMike氏による発表の模様

PythonではパッケージのリポジトリとしてPyPIが存在します。このリポジトリは日々攻撃にさらされており、セキュリティエンジニアのお二人はそれらの攻撃にも対処しています。直近では特定のプロジェクトではなく、依存関係にあるプロジェクトを狙う手法があり、LightLLMなどのサプライチェーン攻撃などが発生しています。

パッケージをアップロードするための認証情報を盗まれないための、Trusted Publishersプロトコルについても紹介されました。このプロトコルを適用すると短い期間で期限が切れるトークンを使用するため、より安全にパッケージが公開できます。

また、セキュリティ対策はAmazon、Google、Bloomberg、Alpha Omegaなどの企業の支援によって支えられています。

ポスターセッション⁠ジョブフェア

Day 3は、10時から13時までの3時間、ポスターセッションとジョブフェアが行われており、トークはありません。ポスターセッションはA0程度のサイズのポスターの前発表を行うスタイルです。ジョブフェアは企業がブースを出して求職者と直接話ができる場です。

ポスターセッションにはPyCon Taiwanのメンバーでもあるpetertc氏がいました。petertc氏はPyCon USに参加するのは初めてだそうです。発表の内容はPythonからC言語のIOCTLとやりとりすることで、デバイスを直接制御するというものです。実際に業務でも利用しているそうです。

ポスターセッションのpetertc氏
petertc氏

この他、朝のライトニングトークで紹介されていた火星探査をするローバーの実物が展示されていました。JPL Open Source Roverというプロジェクトだそうです。多くの来場者が興味深く見ていました。

火星探査ローバーの実物
火星探査ローバーの実物

ジョブフェアを眺めていると、Tower Research Capitalという会社のブースにたくさんの人がいます。近づいてみると結構しっかりしたバックパックをグッズとして配布しています。話を聞いてみると、特に登録とかしなくてもOKということで、お礼を言ってバックパックをもらいました。周りにもこのバックパックを持っている人がたくさんいました。

ベストPyCon US 2026グッズ
ベストPyCon US 2026グッズ

Learning Computer Science with Python and Music(21)

このトークは、music21というPython製の音楽分析ツールキットを使って、コンピュータサイエンス(CS)の基礎を学習する取り組みの紹介でした。

Michael氏のトーク
Michael氏のトーク

Michael氏は学生にCSを教えており、データベース設計やボット開発のようなアプリケーションは関心を引きにくいという課題があるそうです。そこで、CSの応用コースでmusic21と音楽理論を取り入れることによって、より学生の創造性を引き出し、CSへの理解度も高めることができているそうです。

music21のデモの様子
music21のデモの様子

筆者は趣味の吹奏楽でトランペットを吹いており、音楽関係のライブラリとしてmusic21は興味深いものでした。music21を使うと、JuyterLabの上でPythonのプログラムからその音やコードの楽譜を表示させたりMIDIを再生できたりします。確かに音楽は、同じようなパターンの反復や音程の移動を行うことがあるので、プログラミングの考え方と重なる部分があると思いました。個人的にmusic21を自分の音楽活動で活かせないか、ちょっと調べてみようと思います。

Keynote — Rachell Calhoun & Tim Schilling

PyCon US最後のキーノートは、Djangonaut Spaceの共同設立者であるRachell Calhoun氏とTim Schilling氏によるものでした。Djangonaut Spaceは、Python製のWebフレームワークであるDjangoのトレーニングプログラムを提供するコミュニティです。自己学習プログラムと8週間のメンターシッププログラムを提供しており、Djangoへのコードの貢献を行い、将来のDjangoのコア開発者やメンテナーを育成することを目的としています。

Tim Schilling氏
Tim Schilling氏

参加者をサポートするために「ナビゲーター」「キャプテン」という2つの役割があり、ナビゲーターはプロジェクトを推進するための技術的な支援、キャプテンは一人一人によりそった支援を行うそうです。過去の参加者が成長して次のナビゲーターやキャプテンを務めるといった、コミュニティ内での良い循環もあるそうです。

コミュニティの取り組みとして興味深いなと感じました。一方で、体制を維持して運営を継続するのはかなり大変なのではないかとも思いました。Djangoへの貢献に興味のある方は、ぜひこの取り組みを参照してみてください。

Python Steering Council

Pythonの言語仕様はPEP(Python Enhancement Proposal)というドキュメントで提案されますが、その採用、不採用を決めるのが5名のSteering Councilメンバーです。Steering Councilメンバーは毎年CPythonのコア開発者の投票によって決まります。2026年のメンバーについては以下のドキュメントを参照してください。

5名のSteering Councilメンバー
5名のSteering Councilメンバー

最初にSteering Councilメンバーの紹介や開発体制について話がありました。最近はコア開発者が一同に介して一週間程度の開発スプリントを行っています。2026年はOpenAIがホストとなって開催されるそうです。

続いて、2026年10月にリリース予定のPython 3.15の新機能について紹介がありました。Lazy imports(遅延インポート⁠⁠、immutable(不変)な辞書、標準ライブラリのCLIなどへのカラー表示の追加、新しいプロファイラー(Tachyon)などが紹介されました。

また、PEP 772によって、Packaging CouncilというPythonのパッケージングに関する委員会を設立することが紹介されました。

他にはPythonの将来についての話がありました。Free-threadingのデフォルト化は近い将来(3.16から3.20のどこか)で実現したいとのことです。標準ライブラリにRustを導入することが検討されているとのことで、現在は検証を行っているところだそうです。Rustの導入がどうなるかは注視していきたいと思います。

Python Software Foundation Update

Closingの前にPSFのExective DirectorであるDeb Nicholson氏より、PSFの最新情報についての共有がありました。PSFはPythonの権利を有しており、Python言語の普及、保護、発展を目指して活動している財団です。

Deb Nicholson氏
Deb Nicholson氏

PSFの大きなニュースとして、アメリカ政府(国立科学財団:NSF)からの150万ドル(約2.2億円)の助成金を辞退したことが報告されました。これは、助成金の契約の中に多様性、公平性、包含性(DEI)に関する活動を制限する内容が含まれていたためです。そのためPSFは助成金を拒否したとのことです。この件に関する詳細な情報は以下のブログを参照してください。

Closing

クロージングではイベントのChairであるElaine Wong氏が登壇し、関係者への感謝が述べられました。イベントを表す数字としては参加者数が2003名、そのうち57.2%が初参加者とのことです。また、オンサイトのボランティアは151名、発表者は148名で、135のオープンスペースが開催されました。PyCon USはやはり規模が大きいですね。

参加者数などの情報
参加者数などの情報

そしてPyCon US 2027のChairが発表されました。2026ではCo-Chairを担当していたJon Banafato氏が、2027ではChairとなるそうです。PyCon US 2027は2027年5月13日から18日に、2026と同じロングビーチで開催することが報告されました。

PyCon US 2027もLong Beachで開催
PyCon US 2027もLong Beachで開催

各国PyConの宣伝

いつもはここでイベントが終わりますが、今回はClosingのあとに各国PyConの宣伝タイムがありました(今までは朝のLightning Talkでした⁠⁠。1イベント1スライドを30秒程度で、各主催者が宣伝しました。なにげに私はこのイベント宣伝をPyCon USで行うのは初めてでした。1日に2回メインステージに上がることができて、ラッキーです。

他にアジアからはPyCon Singapore、Indonesia、Korea、Taiwan、Hong Kongなどが宣伝をしていました。

PyCon JP 2026を宣伝しているところ(後に他イベントの主催者)
PyCon JP 2026を宣伝しているところ

最後のパーティー

PyConのカンファレンスは終わりましたが、まだ終わりません!! 参加者が集まっているお店に行ってパーティーです。このお店で飲んでいるときに、韓国から参加している初めての人とあいさつをすると「takanoryなの!?」と私のことを知っているようでした。いったい、韓国でどういう噂をされているんだろう……。

カンファレンス終了後のパーティー
カンファレンス終了後のパーティー

そのあとはローカルのクラフトビールが飲みたいので、アジアメンバー中心でBeachwood Brewing: Downtown Blendery and Taproomに移動しました。疲れている?のか、なぜかみんな床に座ってビールを飲んでいます(謎⁠⁠。こうしてPyCon USのカンファレンスは無事に終わりました。

なぜか床に座って飲む人々
床に座って飲む人々

終わりに

次の日(5月18日)はスプリントに参加し、夜にアナハイムに移動しました。そして5月19日は2回目のカリフォルニアディズニーランドを訪問しました。前回同様、ほぼスターウォーズエリアに1日中いるというスタイルです。今年から出没するようになったハン・ソロがいたので「日本から来たんですよー」みたいに会話をして写真を撮ってもらいました。

ハン・ソロ(本物)と握手
ハン・ソロと握手

その後は飛行機の都合でシアトル(初訪問)に移動し、ビール友達のShaneと毎日ビールを飲みまくり、大量のビールをおみやげにもらって無事帰国しました。ビールが多すぎて、初めて関税を100円払いました。

シアトルのビールの店はどこも犬同伴が可能、とてもいい所
シアトルのビールの店はどこも犬同伴可能

来年もロングビーチ(とディズニーランド)に行きますか。


筆者と寺田さんがパーソナリティをしているPyCon JP TVでもPyCon USについて報告しています。もしよかったらこちらも見てみてください。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧