2018年12月に中国のRoyoleがFlexPaiを発表して以来、折りたたみスマホの市場はAndroidが開拓を続けてきました。当時は画面を折りたたむ構造自体が極めて挑戦的であり、市場へ投入された初期の製品は多くの技術的課題を抱えていました。ヒンジの構造的欠陥やゴミの侵入による画面破損、内側ディスプレイのフィルムがはがれるトラブルなど、予期せぬ問題が相次いで発生した時期を覚えている方も多いはずです。
こうした難題に対し、Android各社は絶え間ない改良を重ねてきました。
SamsungのGalaxy Z Foldシリーズを皮切りに、OPPOやXiaomi、そしてGoogleなど多数のメーカが参入し、ハードウェアとソフトウェアの両面で進化が加速しました。
ハードウェア面では、ヒンジの密閉性を高める防塵構造や、水滴型ヒンジと呼ばれる屈曲部の負荷を減らす機構が開発されました。画面表面の素材もプラスチックから薄型ガラスへ進化し、耐久性が飛躍的に向上しています。
ソフトウェア面でも、画面を半開きの状態で固定して使うカメラ機能や、複数アプリを並べて表示するマルチウィンドウのUIが洗練されていきました。さらにAndroid OSでも、大画面や折りたたみ形状に対応するAPIの整備が進み、アプリ開発者が柔軟なレイアウトを構築できる基盤が整いました。
こうして7年の歳月をかけて、折りたたみスマホは実験的なガジェットから、高い実用性を持つフラッグシップモデルへと成長を遂げた歴史を持っています。筆者は、初代Galaxy Foldを愛用していたことがあります。当時、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入したスマホだったので、いまだ手元に残してあります。
満を持して登場したAppleの解答
Androidが試行錯誤を積み重ねる中、Appleは静観を続けていました。そして今回、市場への満を持って投入されるのがiPhone Duoです。
実機を触る機会はありませんが、さまざまなメディアから得られる情報からは、ハードウェアの細部に対するこだわりが伝わってきます。たとえば、本体重量は254gで数字だけを見れば重量級ですが、重量の大半が手のひらに収まる位置へ集中するよう、巧妙な重量バランス設計されており従来のスマートフォンと比較しても扱いやすく感じられるようです。
ヒンジの開閉感覚も極めて滑らかで、自由な角度で正確に固定できるテンションが保たれておりグラつくことがないとされています。
また、本体を閉じるときには、磁石で固定されて心地よい手ごたえが伝わるようです。話題の開閉時の画面アニメーションも所有感を満たす演出としては抜群です。こうした作り込みは、後出しだからこそ冷静に取り組めたとみることも出来ますし、Appleらしい部分と見ることもできます。
ナノテクスチャ加工がもたらしたシワ低減の衝撃
iPhone Duoの注目点は、内側の7.
これのおかげで、折りたたみスマホが抱え続けてきた宿命とも言える画面中央の折り目が、ほとんど気にならないレベルに抑え込まれています。
正面から画面を見る限り、折り目の存在を識別するのは困難で、角度をつけて光を当ててようやく微かに認識できる程度で、日常的な使用で意識に上ることはまずないようです。
従来の折りたたみスマホでディスプレイの折り目が目立つ理由は、表面処理が光沢仕上げで、折り目の凹みに光が反射していたためです。これを目立たなくするために、光の反射を抑える表面仕上げのナノテクスチャを使ったのはAppleのアイデア勝利です。ほとんどの人が折りたたみスマホを経験したことがないので、気にならないと言っても折り目をネガティブな要素として見るのは事実、こうしたアプローチが今後の主流となりそうです。
画面比率の変化とエコシステムへの影響
iPhone Duoは、カバー画面とメイン画面の双方に1.
幅広の画面は、Webページの閲覧や複数アプリの左右並列表示に優れた閲覧性をもたらします。一方で、片手で画面端の操作要素に指を届かせるのが難しい場面もあり、UIデザインの最適化にはまだ改善の余地が残されているとの指摘はあります。
Apple参入がもたらす最大の波及効果は、サードパーティ製アプリのエコシステム全体に及ぶ表示最適化の波です。主要なサードパーティアプリが折りたたみ画面や大画面レイアウトへ対応を開始すれば、大画面向けUIの設計ガイドラインが業界全体で洗練され、Androidの折りたたみスマホでのアプリ体験の向上にも大きく寄与するはずです。
競争再燃となるか折りたたみスマホの未来
iPhone Duoが完全無欠というわけではありません。
たとえば、画面下埋め込み型の内側カメラが目立つといったレビューもあります。また、iOSベースゆえ、マルチタスク機能の自由度に関しても、Androidの成熟度には届いていない部分が見受けられます。
しかし、先行者が築き上げた基盤に対し、独自のアプローチで完成度を高めた製品が投入された意味は大きく、成熟しつつあった折りたたみスマホ市場に再び強い競争の風が吹き始めました。
今週は、このあたりで、また来週。
