2026年8月にDebianプロジェクトが一般決議の投票を経て、(一定の条件の下での)AI/LLMの貢献を認める決定を下したことは記憶に新しいが、Debianプロジェクトはこの決定をさらに一歩進めた取り組みを進めているようだ。現在、フランスのクラウド事業者であるScalewayのスポンサードのもと、Debianの認証基盤であるSalsaアカウントをもつ開発者(DD:Debian Developer)やメンテナー(DM:Debian Maintainer)が無料でAI/LLMサービスを利用できる「Debian Inference Portal」の提供が始まっている。Debian開発環境にAIを組み込める共通のAPI基盤としても注目される。
- Debian Inference Portal
- https://inference.debian.net/
Debian Inference PortalはDDやDMといったDebianプロジェクトの開発者が、セルフサービスでAI推論サービスを利用できるようにしたポータルで、現在は「DeepSeek V4 Flash」と「GLM-5.2」の2つのモデルをAPI経由で利用することができる。スポンサーであるScalewayが毎月一定量のクレジットを提供し、それをアクセス権限をもつDebian開発者(DD/DM)たちで共有するしくみで、ユーザごとに週単位で利用できる予算がざっくりと設定されている(DD→25ドル/週、DM→10ドル/週がデフォルト)。なお、OpenAI API形式で接続できるエディタ/ツールであれば、どのツールからもAPIの呼び出しが可能だ。利用用途としては
- パッケージング
- バグのトリアージと修正
- ツール開発
- ドキュメント作成
- その他コントリビュータとして行っている作業
が想定されており、「個人的な無関係な作業」での使用は許可されていない。
Debianは8月にAI/LLMによる“責任ある使用”を認めたことが話題になったが、今回は開発者に対して(Debianが選んだ)共通AI環境(インフラ)を提供するフェーズにまで進んでおり、さらにOpenAI APIという共通の接続方式を用意したことで、開発者は比較的幅広い選択肢からツールを選ぶことが可能となる。オープンソースプロジェクトにおけるAI/LLMの貢献はいまも議論になることが多いが、少なくともDebianにおいては「AIを使う/使わない」というポリシーに関する議論のフェーズは終わったようだ。