2014年の創業以来、クラウドインフラ運用、クラウドインフラ開発に携わり、さまざま企業のビジネス基盤をインフラエンジニアリングで支えてきた株式会社grasys。今はグローバル展開をする企業を数多くサポートし、ワンランク上のクラウドインフラの専門家として、成長を続けています。
世の中にAIが浸透してきた中、これからの株式会社grasysはどのような戦略でさまざまなインフラを支えていくのか――今回、CloudTech Div. Cloud Infrastructure Sec.のManagerである泉水朝匡氏に、企業の成長の歴史とともに次のステップアップに向けた展望について伺いました。
世界に出て、ビジネスとエンジニアリングの境界を知る
――本日は
泉水: 私が株式会社grasys
グローバル展開において最もシビアな課題となるのが、ネットワークのレイテンシ
このインフラ要件とビジネス要件のトレードオフを緻密に設計した経験は、会社としても私自身のエンジニアとしてのキャリアとしても、大きなターニングポイントになったと感じています。このタイミングで、改めてインフラエンジニアリングの重要性を考え、エンジニアリング、とくに設計力を高めることが、ビジネスを広げられると考えるようになりました。
――当時は少数精鋭のチームで運用されていたと伺っています。その後、組織の規模が拡大するにつれて、運用体制はどのように変化していったのでしょうか?
泉水: 私が入社当時は、インフラエンジニアやゲーム開発のバックグラウンドを持つシニア層を中心に10名に満たない、数名の小さな組織でした。その後少しずつ増員し、今は13名程度のチームになっています。
当時は人数が少なかったため、必然的に一人ひとりの裁量が大きくなっていたことを覚えています。もちろん、きちんとクライアントのビジネスを成立させなければいけませんから、メンバー皆、インフラ全般のドメイン知識を深く持ったシニアエンジニアばかりでした。
しかし、組織が成長し、バックグラウンドやスキルセットが多様なメンバーが増えていく中で、次第に
具体的には、手動オペレーションによる
また、対応するシステム規模が大きくなると、誰が・
ボトムアップによるOSS導入、そして、承認フローの仕組み化と厳格化
――属人化を防ぎ、インフラの品質を一定に保つために、具体的にどのような技術的アプローチをとられたのでしょうか。
泉水: まずはIaC
最初期は、管理用の踏み台サーバ
その後、組織規模の拡大に伴うランニングコストの最適化や、より細やかなRBAC
このOSS導入の背景には、エンジニア自身がTerraformに精通し、各々の理解が深かったこと、その流れから自分たちでホスティングし、実行基盤を構築したほうがコスト面に加えて、業務に合わせた柔軟性が高まるからと考え、ボトムアップでの提案があったからです。
冒頭でも話したようにgrasysはエンジニアの裁量が大きいことが特徴で、その結果として一人ひとりが良いと思ったことは気軽に提案し、自分を含めたリーダーを交え、フラットに議論して検討できる環境があります。これは、私が入社した当時から変わらない雰囲気、もっと言えば、grasysのエンジニア文化と言えます。
話を戻して、現在の運用では、エンジニアがGitHubなどのリポジトリにコードをプッシュすると、Terrakube上で自動的にterraform planが走り、その実行計画の差分結果がレビュアーに通知されます。権限を持った承認者が確認し、承認
Policy as Codeで心理的安全性というエンジニアのガードレールを整備
――承認フローをシステムに組み込んだことで、統制は取れるようになった反面、新たな課題などは生まれましたか?
泉水: 課題というほどではないですが、承認フローの仕組み化と厳格化を進めた結果、
たとえば、大規模アップデートのリリース前夜など、非常にタイムセンシティブな時期に、休前日の夜間や休日にインフラ構成を一気に組み上げたい場面があります。しかし、承認待ちのキューが溜まってしまい、CI/
これは統制を強めた結果、アジリティ
――その
泉水: はい、そのとおりです。Terrakubeへの移行を進めるタイミングで、この課題に直面していた有志のエンジニアが旗を振り、PaCの概念を積極的にCI/
PaCとは、インフラのセキュリティ要件や社内の運用ルールを
PaC導入のおもな目的は、弊社が定義しているTerraformの標準モジュールから逸脱した書き方や、セキュリティインシデントに直結するような危険な設定を、人間の目視レビューに頼る前に、システム側で自動検知して弾く
そうすれば、先ほどの承認フローにおいて余計なチェックをしなくて済むようになります。
また、承認フローの徹底によりアジリティが犠牲になっていることが課題だとは言いましたが、PaCの導入とは別に、リーダーや現場のエンジニアそれぞれが、全体のスケジュールをしっかりと見直すようになり、余裕を持ったスケジューリング設計をする意識が高まるという良い効果も出ています。
――実際にPaCをCI/
泉水: インフラ定義の明らかなアンチパターンや、致命的なセキュリティホールになり得るコードを、パイプラインの早い段階
一方で、技術的な難易度とは別の次元で
ルールをガチガチに固めて例外を一切許容しない設定にしてしまうと、インフラ運用に不可欠な
――非常にリアルな運用課題ですね。そうした
泉水: 運用の中でチューニングを重ね、現在はポリシーの評価レベルを多段階に設定しています。
絶対にシステムに混入させてはならない致命的になりうる設定については
「会社として絶対に死守すべきグローバルなセキュリティポリシー」
AIとの向き合い方、grasysが求めるエンジニア像
――インフラ運用領域の最新トレンドとして、AI
泉水:
AI技術、とくにLLM
ただ、エンタープライズのインフラを預かる立場としては、セキュリティ面とデータガバナンス
そのため現状では、
――grasysのエンジニアリングを担う立場としては、悩ましくも非常にエキサイティングなフェーズのように感じました。最後に、そうした技術的変革期において、今後どのようなエンジニアと一緒に働きたいか、御社が求める人物像を教えてください。
泉水: これまでも話してきたように、弊社のインフラエンジニアリング組織は、クラウドネイティブなアプローチや新しいOSS、概念を積極的に検証し、プロダクション環境に取り入れていく文化が根付いています。
現代のインフラエンジニアには、単なるLinuxやネットワークレイヤの知識に加えて、各種SaaS、クラウドプロバイダのマネージドサービス、IaC、CI/
そのような時代において、grasysは一人ひとりの裁量を大きくし、チーム全体で課題解決、クライアントのビジネス成長を支えるエンジニア組織を意識し、ビジネスを遂行しています。
ですから、決められた手順書をこなすだけの運用オペレータではなく、自らアーキテクチャの課題を発見し、技術的な解決策をプロトタイピングして推進できるような自己駆動型のエンジニアには、非常にやりがいのある環境だと胸を張って言えますね。
TerraformやPaCはもちろん、今後のトレンドとなるインフラ運用のAI化といった新しい波を脅威と捉えるのではなく、
――現場のリアルな課題と、それを技術で乗り越えていく力強いビジョンをお伺いできました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
