OSSデータベース取り取り時報

第133回連載12年目に突入⁠オープンソースカンファレンス京都報告⁠MySQLのステアリング⁠コミッティにJPMorganChaseとBooking. comが参画⁠PostgreSQLの多数の脆弱性が修正

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

OSC京都での「AIコーディングの普及で○○○は不要になる?」の報告

8月1日に開催されたオープンソースカンファレンス 2026 Kyoto(OSC京都)において、OSSコンソーシアムが企画セミナーを実施しました。会場は毎年お世話になっている京都リサーチパーク(KRP)でした。OSSコンソーシアムが実施したセミナーは次のようなものです。

AI技術(LLM・生成AI・AIエージェントなど)によってITエンジニアの仕事も変わりつつあります。AIコーディングやバイブコーディングがその代表でしょう。プログラミングが楽になる・不要になるというシンプルなものばかりではなく、もっとさまざまな影響がありそうです。そこでOSSコンソーシアム会員のそれぞれの専門領域から、その影響を探ってみようという企画です。たとえばノーコード開発ツールの代わりになるのか、データベースアクセスを行うシステム開発にはどのような影響があるのか、といった点です。

〔ミニセミナー〕AIコーディングの普及でノーコードツールは不要になるか?

ノーコード開発ツールであるプリザンターを展開している株式会社インプリムの内田太志さんの発表です。昨今では「AIでシステム開発ができるからノーコード開発ツールは不要になるのでは?」と内田さん本人が面と向かって言われることがあるそうです。ひところ「SaaSの死」が言われていたのと同じ文脈なのでしょう。そこで、内田さんの発表は、企業の業務システムを実現する際に「AIコーディングとノーコード開発ツールのどちらかが勝ちでどちらかが負けるのか」という点についての考察と遊び心のある漫画調のプレゼンでした。単純にどちらかが勝ち/負けではなくて、両立する世界が望ましい状態だろうというのが結論です。ノーコード開発ツールのメリットを活かして、もしくはそれを土台として、ノーコード開発ツールだけのときよりもスムーズな業務システム実現をAIコーディングが助けてくれるだろうということです。

この点を実証するデモがセミナーの時間中にリアルタイムで実施されました。プリザンターはWebデータベース型のノーコード開発ツールに分類されます。そこで、プリザンターが持つ備品管理アプリをベースにして、まったく異なる分野ですが学校での授業出席データ管理アプリを作成することができました。

バイブコーディング対ノーコード/ローコードの擬人化(講演スライドから)
バイブコーディング対ノーコード/ローコードの擬人化

〔ミニセミナー〕AIコーディングの普及でSQLは不要になるか?

日本オラクル株式会社でMySQLやその他のOSSデータベースを担当している梶山隆輔の発表です。データベースを得意分野としているエンジニアには見過ごせない視点ですが、発表の冒頭で「不要にはならない」とあっさりと切り捨てています。世の中からSQLが不要になるわけではなく、AIコーディングの普及でSQLを学習する目的が変わりそうだという予測を示されました。それは「エンジニアがSQLを知らなくていい」という短絡的な意味とは少し違います。⁠SQL構文を憶えておくよりももっと違う能力が重要になる」というメッセージです。たとえば、業務要件からAIに適切な指示を与えること、SQL実行結果の意味を説明すること、AIに適切な制約を与えることなどを例として示されました。

AIコーディングが変えたこと(講演スライドから)
AIコーディングが変えたこと

〔クロストーク〕AIコーディングの普及で○○○は不要になる?

上記で紹介したミニセミナー講師2名の他に、OSSコンソーシアムのメンバーである、株式会社アックスの竹岡尚三さん、株式会社デジタル・ヒュージ・テクノロジーの鵜川徹さんをパネリストとし、TISI株式会社(当時)の溝口則行がモデレータとして加わった座談会です。

冒頭、情報処理推進機構(IPA)の研究員でもある溝口から、IPAが最近公開をした「DX動向2026」の中から、日本企業でのAI活用の実態調査の結果を紹介しました。

続いて、モデレータが設定した論点についてのディスカッションです。最初はミニセミナーでの発表に賛成か否かの観点です。⁠ノーコード開発ツールは不要にはならない 」についてはおおむね賛成のパネリストが多い中で、ノーコード開発ツールの資産や制約を土台・条件にすることが本当に得策かどうかという懸念も示されました。

「SQLの学習は不要になる(必要性が変わる⁠⁠」ことについては、この主張自体にはみなさん賛成でした。ただ、⁠AIの時代に汎用のDBMS自体が必要なのか」という過激な意見もあり、これはDBエンジニアには気になるところです。

上記以外の観点として、たとえば組み込み分野など他の分野でのAIコーディングの影響について話し合いました。また、そもそも人が集まって作業を分担しているOSSの開発コミュニティやユーザーコミュニティも、AIの影響でその役割や期待することが変わりそうだという点についても話し合いました。⁠懇親会が無くならないようにコミュニティ活動は残ってほしい」という意見については皆さん異論は無いようです。

クロストーク(座談会)の様子
クロストーク(座談会)の様子

資料などはOSSコンソーシアムのWebサイトで

以上は約1.5時間のセミナーの要約です。ミニセミナーでの主張やデモの内容、クロストーク(座談会)での生々しい意見のすべてを文章にするのは困難です。OSSコンソーシアムのWebページでスライド資料を公開していますのでご参照ください。セミナーの様子の録画も近日中に同じページから公開の予定です。

[MySQL]2026年8月の主な出来事

8月は、オラクルのOracle Critical Security Patch Update(CSPU)にともなうリリースが行われています。MySQLサーバーは緊急度の高い脆弱性が確認されなかったため8月分のCSPUの対象外のためリリースされていません。以下の製品とバージョンの組み合わせがリリースされています。

  • MySQL NDB Cluster 8.0.48、8.4.11 LTS、9.7.2 LTS
  • MySQL Shell: 26.7.1
  • MySQL Connector ODBC: 26.7.1

MySQL NDB Clusterは、イノベーション・リリースの26.7はCSPUの対象外です。また、上記に記載の無い製品もリリース対象外となっています。なお、MySQLコミュニティ版の8月分の脆弱性情報はMySQL Community Edition Security Advisoryとしてまとめられています。

MySQL 26.7イノベーション⁠リリース

本連載の第132回の原稿締め切り後の7月28日に、MySQL 26.7.0 イノベーション・リリースが、9.7.1 LTSおよび8.4.10 LTSとともにリリースされました。MySQL NDB Clusterにも26.7.0 イノベーション・リリースがあり、MySQL ShellやRouterなどのクライアント・プログラムや接続部品であるConnectorsも26.7.0がリリースされています。また、商用版でもこれらのバージョンが利用可能なほか、クラウド版のMySQL HeatWaveもこれらのバージョンが提供されています。

このMySQL 26.7は新しいバージョン番号形式である「カレンダー形式」でリリースされた最初のバージョンです。2026年7月のリリースということで26.7となっています。今後は3つ目の桁の部分がリリースのたびに26.7.0→26.7.17→26.7.2のように増加していく予定となっています。26.7はイノベーション・リリースのためサポート期間は3ヵ月となり、3ヵ月後のオラクルのCritical Patch Update(CPU)のタイミングで修正パッチの提供は、最新のイノベーション・リリースのバージョンのみとなります。

MySQL 26.7.0 イノベーション・リリースの主な新機能は以下の通りです。

耐量子暗号(PQC / Post-Quantum Cryptography)通信のサポート
MySQLに同梱、またはMySQLが利用するOpenSSL 3.5の機能を活用し、PQC対応のTLSの通信をサポート。PQC非対応のクライアントの通信は従来方式にフォールバック。
レプリケーションのChange Stream Applier(CSA)のサポート
従来のマルチ・スレッド・アプライヤ(MTA)に対して、並列トランザクションのログ適用の最適化や、チャネルごとのリソース制御を可能とすることで、スループットの向上を狙う機能。デフォルトは従来のMTAのまま。
グループ⁠レプリケーションでのXCOMスタックの非推奨化
MySQLの認証や暗号化をベースとしたMYSQL方式がデフォルトへ。
コミュニティ版でもスレッド⁠プール⁠プラグインが利用可能に
これまでMySQL Enterprise Editionのみで利用可能であった、同時接続数や同時実行トランザクション数が多い環境でのスループットを維持する仕組みが、コミュニティ版でも利用可能に。

その他の新機能や変更点はMySQL 26.7.0 イノベーション・リリースのリリースノートを参照してください。

MySQL 26.7 イノベーション・リリースは、開発が順調であれば2028年4月にリリースされることになる次期LTS(Long-Term Support)まで、新機能の追加や古い機能の廃止、デフォルト設定の変更などが行われていきます。また、このバージョンから、第132回でも紹介している、新しいコミュニティ・ガバナンス・モデルの元での開発が行われていきます。

MySQLステアリング⁠コミッティのメンバー発表

MySQLコミュニティ・ガバナンス・モデルでの、MySQLコミュニティ版の開発の全体的かつ長期的な方針決定や統括を担うステアリング・コミッティの初代のメンバーが発表されました。これまで発表されていたオラクル、AWS、Google Cloudの3社に加えて、世界有数の金融機関であるJPMorganChaseにて2,000インスタンス以上のMySQLを運用するチームを率いるJenni Garvie(ジェニー・ガーヴィー)氏と、世界最大級のオンライン旅行サイトであるBooking.comで大規模なMySQLプラットフォームを含むSREとプラットフォームチームを率いるJenő Szabó(イェネー・サボー)氏が加わりました。8月5、6日に開催された第2回のMySQL コントリビューター・サミットを経て、正式にステアリング・コミッティが発足しました。今後のMySQL エコシステムに対して長期的な技術とコミュニティのガバナンスを担う重要なチームとなります。

第2回MySQLコントリビューター⁠サミット

MySQLコントリビューター・サミットは、MySQLコミュニティの最新状況を共有し、新機能の提案や議論を行うイベントです。第2回は、8月5、6日にアメリカ コロラド州で開催され、オンラインでの参加も可能なハイブリッド形式でした。第1回から引き続き、ベクトル関連の新機能に関する議論が最も注目を集めたコンテンツでした。他にも数多くの新機能の提案が行われており、特にMySQLの特徴でもあるストレージ・エンジンについては、書き込み処理の高速化を狙うTidesDBや、カラム型で高速な分析処理を可能とするDuckDBをサポートする提案がされています。それぞれのプレゼンテーションは、上記のリンク先にPDFとして掲載されています。

本連載の著者も、最新のUnicodeのCollation(照合)などのサポートを提案しており、今回のイベントでも15分間のプレゼンテーションを行いました。イベントでのプレゼンテーションは、この提案のIssueに添付してあります。オンラインでの講演中にも、Zoomのチャットで多くの議論が行われていました。基本的には多くの方が提案に同意してくれていた一方で、Unicodeやキャラクターセット関連については普段深く考えずに利用している方も多く、重要そうであることはわかるが影響範囲を正しく理解できていないケースも見られました。

第2回MySQLコントリビューター・サミットで提案したUnicodeサポートの改良点
第2回MySQLコントリビューター・サミットで提案したUnicodeサポートの改良点

また、概要や提案に至った経緯は、MySQLコントリビューター・サミット初日終了の約半日後に行われた8月6日夕方に開催された「帰ってきた!MySQL Technology Cafe」のページに掲載しています。MySQL Technology Caféでは、この実際の新機能の提案の経験をもとに、現時点でのGitHubを使ったコントリビューションの流れを解説しました。

今後、日本からの新機能の提案や議論への参加が進むことを期待しています。

[PostgreSQL]2026年8月の主な出来事

8月には予定通りにサポート中メジャーバージョンのマイナーリリースがありました。また同時に次期メジャーバージョン19の新しいベータ版も登場。今月はこれらの情報をお伝えします。

サポート中メジャーバージョン14~18で大量のセキュリティ脆弱性が修正される

8月13日、サポート中のメジャーバージョンであるバージョン14からバージョン18のマイナーバージョンがリリースされました。マイナーリリースは発見された不具合の修正が中心で、この点は通常通りですが、今回は少し様子が異なります。CVE番号(共通脆弱性識別子)が割り振られた脆弱性が28件も修正されてまとめてリリースされましたので、この部分を中心にお伝えします。

修正された脆弱性の概要
修正された28個の脆弱性の深刻度(CVSS共通スコア)はさまざまです。低いものもありますが、深刻度の高いものも多数あります。今回の修正の中で最も高い深刻度は8.8で、この高い深刻度8.8のものが多数含まれています。また、対象となるPostgreSQLのバージョンは、多くの脆弱性がバージョン14から18までの全バージョンに影響しますが、全てではなく一部のバージョンにだけ関係するものもあります。一度に28個もの修正が出たため個別に説明をするのが困難ですので、修正された各脆弱性については内容と同時に深刻度や対象バージョンについてもリリースのお知らせを参照してください。
今回のマイナーリリースに伴うその他の注意点
今回のリリースではバージョン18.5がスキップされています。18.5は不具合のためリリースされませんでした。また、アップデート後に追加の手順が必要になる可能性のある問題があります。この詳細については、リリースのお知らせの「Updating」⁠更新)のセクションと、そこからのリンク先情報を参照してください。

次期メジャーバージョン19の3回目のベータ版がリリース

上記のマイナーバージョンリリースと同じお知らせで、次期メジャーバージョンであるPostgreSQL 19ベータ3のリリースも発表されました。ベータ2からの修正点・変更点はリリースのお知らせを参照してください。

2021年にリリースされたバージョン14がまもなくサポート終了

PostgreSQLのメジャーバージョンがサポートされる期間は、そのメジャーバージョンが最初にリリースされてから5年間です。今年の11月には、バージョン14がサポート終了となります。これも上記のマイナーバージョンリリースのお知らせの中でサポート終了の注意喚起がされています。

[Tsurugi]2026年8月の主な出来事

超高速というTsurugiの特性を活かした実証実験が進められています。

ワット⁠ビット構想実現に向けた次世代分散型AI処理インフラでの実証実験

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主導のプロジェクト「次世代インフラにおける低遅延分散処理技術の有効性検証に関する調査」において、フォーミュラカーレース「KYOJO CUP」を舞台にした、ローカル5GおよびPhysical AIを活用した次世代リアルタイム映像配信システムの実証実験を共同で開始します。テレメトリーデータと4K映像が場内のCPUサーバーに転送され、超高速データベース(RDB)である劔⁠Tsurugi⁠に格納されます。

この実証実験では、Tsurugiをはじめとしてエンジニアがワクワクするさまざまな最先端テクノロジーが使われるようです。

  • 国産の超高速RDBであるTsurugi
  • ローカル5G
  • APN(オールフォトニクスネットワーク)と光NIC
  • 車載テレメトリーと映像を時刻同期させる超低遅延AIスコアリング
  • 空間と時間のデータとしてバーチャル上に再現する時空間データ基盤

なお、11月に開催予定のイベント「Inter BEE 2026」にて、この実証実験の発表を予定されているとのことです。

2026年9月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

オープンソースカンファレンス(OSC)〔9月〜12月開催分〕

日程 Hiroshima〕2026年9月12日(土)10:00~18:00
Online〕2026年10月2日(金⁠⁠、3日(土)10:00~18:00
Tokyo/Fall〕2026年10月17日(土)10:00~16:00(展示のみ)
Fukuoka〕2026年12月12日(土)10:00~18:00
場所 Hiroshimaサテライトキャンパスひろしま(広島県民文化センター 5F)
Online〕オンライン(Zoom&YouTube Live
Tokyo/Fall東京都立産業貿易センター台東館 6階
Fukuoka福岡大学 A棟 7F交通アクセスキャンパスマップ
内容 オープンソースカンファレンス(OSC)は、オープンソースの今を伝えるイベントです。東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで、年間を通じて全国各地で開催しています。オープンソース関連のコミュニティや協賛企業・後援団体による、セミナーやプロダクトの展示などを入場・参加料が無料でご覧いただけるイベントです。今回ご案内する開催地はすべてセミナーと展示の両方とも会場開催です。
Hiroshima〕プログラムが公開されています
Online〕9月上旬タイムテーブル公開予定
Tokyo/Fall〕展示ブース一覧公開中
Fukuoka〕11月中旬タイムテーブル公開予定
OSSデータベース関連の発表の詳細は、公開される各回のプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

57回 PostgreSQLアンカンファレンス@オンライン

日程 2026年9月3日(木)20:00〜22:00ごろ(終わりは目安です)
場所 オンライン開催 ⁠Zoom Meeting)
内容 「PostgreSQLについてしゃべりたいことがある、聞いてほしいことがある!」⁠PostgreSQLについて聞いてみたい、相談したい!」そんな感じで登壇してもらってOKです。
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

PostgreSQL Conference Japan 2026

日程 2026年11月27日(金)10:00〜18:10(開場 9:30、18:30 から懇親会あり)
場所 AP東京八重洲(東京都中央区)
内容 毎年秋〜冬に開催されている日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)が主催し、日本における PostgreSQL に関する総合カンファレンスイベントであるPostgreSQL Conference Japan 2026が案内されました。
カンファレンスでの講演者を募集しています。 午後からの 12 セッションの内、通常セッション(50分)6枠の講演が一般募集です。募集要項の詳細はWebサイトをご覧ください。また実行委員、スタッフ、スポンサーも募集中です。次回以降、プログラム構成やチケット発売予定などをお知らせします。
主催 特定非営利活動法人 日本PostgreSQLユーザ会

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