人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
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瀧澤武信,松原仁,小谷善行,鶴岡慶雅,山下宏,金子知適,保木邦仁,伊藤毅志,竹内章,篠田正人,古作登,橋本剛 著
コンピュータ将棋協会 監修 - 定価
- 2,068円(本体1,880円+税10%)
- 発売日
- 2012.9.29
- 判型
- 四六
- 頁数
- 304ページ
- ISBN
- 978-4-7741-5326-1
概要
「人間対コンピュータ」どちらが能力が上なのか? 創造性の点においてコンピュータは人間より劣るもの,と思われるが将棋ではどうなのか。清水女流王将とあから2010との対局はさまざまな反響を呼び起こした。本書は,単に人間に勝つ,というよりも「人間に勝てるコンピュータ」を人間がどのように開発していったのか,その過程を開発者自らが書き下ろした。「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」などの強豪プログラムの設計思想から導かれる戦いの歴史。
各章の担当著者
- プロローグ「清水市代女流王将VSあから2010 平手一番勝負」……松原仁氏
- 第1章「負け続けた35年の歴史」……瀧澤武信氏
- 第2章「コンピュータ将棋のアルゴリズム」……小谷善行氏
- 第3章「激指の誕生」……鶴岡慶雅氏
- 第4章「YSSの誕生」……山下宏氏
- 第5章「GPS将棋の誕生」……金子知適氏
- 第6章「数の暴力で人間に挑戦! Bonanzaの誕生」
……保木邦仁氏 - 第7章「文殊の誕生,あから2010の人間への挑戦」
……伊藤毅志氏,金子知適氏,保木邦仁氏 - 第8章「習甦の誕生」……竹内章氏
- 第9章「プログラムの主戦場Floodgateの切磋琢磨」
……篠田正人氏 - 第10章「コンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ将棋ソフト,人間の効果的戦略」……古作登氏
- 第11章「女流王将戦一番勝負」……橋本剛氏
- エピローグ「名人に勝つXデイの後で」……松原仁氏
こんな方にオススメ
- コンピュータ将棋に興味がある方
- アルゴリズムなどに興味のある方
目次
- プロローグ
- 監修者の言葉
第1章 負け続けた35年の歴史
- 1 コンピュータ将棋の歴史――第0期コンピュータ将棋の誕生から選手権開催まで
- 2 第I期 20世紀末まで――級位者から有段者へ
- 3 第Ⅱ期 2000年代前半まで――アマチュア高段者との競り合い
- 4 第Ⅲ期 2005年~2010年――プロへの挑戦
- 5 コンピュータ将棋の現状――2011年以降プロとの真剣勝負へ
- 6 付録 将棋プログラミングの基礎概念/min-max原理/αβ法
第2章コンピュータ将棋のアルゴリズム
- 1 アルゴリズムも60年前から
- 2 二人完全情報確定的ゼロ和ゲームであること
- 3 最大最小戦略と評価関数による探索
- 4 ネガマックス法
- 5 αβ木探索
- 6 枝分かれについて
- 7 反復深化
- 8 思考時間
- 9 トランスポジションテーブル
- 10 並べ替え
- 11 拡張と枝刈り
- 12 実現確率探索
- 13 静止探索・捕獲探索
- 14 証明数探索
- 15 詰将棋
- 16 定跡
- 17 評価関数とそのパラメータ学習
- 18 並列処理
- 19 人間のアルゴリズムとの違い
第3章 激指の誕生
- 1 開発のきっかけ
- 2 選手権初参加
- 3 実現確率による探索アルゴリズム
- 4 評価関数
- 5 終盤
- 6 実行速度と強さ
- 7 将棋プログラムの開発
- 8 激指の今後
第4章 YSSの誕生
- 1 選手権のひとコマ
- 2 きっかけ
- 3 みかけの駒損よりも勝ちにくい局面
- 4 手の生成
- 5 0.5手延長アルゴリズム
- 6 おわりに
第5章 GPS将棋の誕生
- 1 GPS将棋の成り立ち
- 2 世界コンピュータ将棋選手権への挑戦
- 3 GPS将棋の進化
- 4 Floodgateでの開発と研鑽
- 5 機械学習を武器に躍進
- 6 未来の将棋プログラムへの期待
第6章 数の暴力で人間に挑戦!――Bonanzaの誕生
- 1 力ずく探索
- 2 評価関数の機械学習
- 3 おわりに
第7章 文殊の誕生,あから2010の人間への挑戦
- 1 トッププロ棋士に勝つ将棋プロジェクト
- 2 競争から協調へ
- 3 Bonanzaとの邂逅
- 4 あから2010の挑戦
- 5 あから2010のシステム構成
- 6 ソフトウェア開発とプロトコル
- 7 合議が生んだ印象的な指し手とその検討
第8章 習甦の誕生
- 1 棋力向上への技術課題
- 2 大局観を実現する評価関数
- 3 評価関数の特徴を活かした探索
- 4 大局観を身に付ける学習
- 5 人間を超える大局観を目指して
第9章 プログラムの主戦場Floodgateの切磋琢磨
- 1 Floodgateとは
- 2 Floodgate観戦術
- 3 長時間Floodgate
- 4 プログラムの「棋風」
- 5 Floodgateの将来像
- 6 将棋好きの視点から
第10章 コンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ将棋ソフトウェア,人間の効果的戦略
- 1 コンピュータ将棋の現状
- 2 Bonanza6.0との練習対局からコンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ戦略のヒント
- 3 対コンピュータ,人間側の最適戦略
- 4 人類vsコンピュータはこうなる――若手強豪プロ,そしてトップ棋士との対戦に期待
第11章 女流王将戦一番勝負
- 1 はじめに
- 2 プロジェクト開始
- 3 対戦相手決定
- 4 あから2010 の誕生
- 5 作戦の決定
- 6 対局当日
- 7 対局内容
- 8 対局後
- 9 最後に
- エピローグ
- 参考文献
プロフィール
瀧澤武信
早稲田大学教授,コンピュータ将棋協会会長
松原仁
はこだて未来大学教授,「あから2010」仕掛け人
小谷善行
東京農工大学教授,コンピュータ将棋協会前会長
鶴岡慶雅
東京大学准教授,「激指」メインプログラマ
山下宏
「YSS」(山下将棋システム)プログラマ
金子知適
東京大学大学准教授,「GPS将棋」メインプログラマ
保木邦仁
電気通信大学特任助教,「Bonanza」プログラマ
伊藤毅志
電気通信大学助教,「あから2010」仕掛け人
竹内章
「習甦」プログラマ
篠田正人
奈良女子大学准教授,元アマ竜王
古作登
大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員,元奨励会三段,「週刊将棋」元編集長
橋本剛
松江工業高等専門学校准教授,「TACOS」メインプログラマ