Software Design plus
[改訂]Trac入門
――ソフトウェア開発・プロジェクト管理活用ガイド
- 菅野裕,今田忠博,近藤正裕,杉本琢磨 著
- 定価
- 3,520円(本体3,200円+税10%)
- 発売日
- 2013.3.8[在庫なし]
- 判型
- B5変形
- 頁数
- 336ページ
- ISBN
- 978-4-7741-5567-8
サポート情報
概要
Jenkins、Gitなどソフトウェアの開発工程を見直し、より生産性をあげる管理ソフトウェアを利用することが開発の流れになっています。本書では、その先駆けとなったTracをじっくりすみからすみまで解説します。2008年に初版を発行し、はやくも4年が経過しました。その間、Tracも機能強化を続けようやく正式バージョンの1.0がリリースされました。今回も開発現場の実状にそくしたわかりやすい解説と、より理解をすすめるマンガ解説についても全面的に修正しリニューアルしました。開発効率をあげたいすべての皆さんに!
こんな方にオススメ
- ソフトウェア開発をすすめるマネージャ、プログラマー、システムエンジニアの皆さん
目次
第1章 Tracの概要
- 1.1 Tracとは
- 1.2 他にもいろいろTracの機能
- 1.3 ケーススタディ(あるチームの日常)
- 1.4 まとめ
第2章 Tracでの問題管理の準備─Tracプロジェクトの設定とカスタマイズ
- 2.1 Tracでのプロジェクト情報の管理
- 2.2 プロジェクトを定義しよう
- 2.3 用途によってプロジェクトをカスタマイズしよう
- 2.4 まとめ
第3章 問題をTracする─Tracによる問題管理の実際
- 3.1 問題管理について少し考えてみる
- 3.2 Tracによる問題管理の実際
- 3.3 チケットの種類(type)
- 3.4 チケットの属性
- 3.5 チケットの状態
- 3.6 まとめ
第4章 プロジェクトをTracする─開発プロジェクトへの導入
- 4.1 Tracがサポートする領域
- 4.2 Tracのチケット管理プロセス
- 4.3 まとめ
第5章 バージョン管理システム・CIとの連携
- 5.1 バージョン管理システムとの連携
- 5.2 Subversionを使ってみる
- 5.3 Gitを使ってみる
- 5.4 Jenkinsとの連携
- 5.5 まとめ
第6章 逆引きTrac
- 6.1 プラグインを追加したい
- 6.2 チケットの一覧をカスタマイズしたい
- 6.3 チケットの種類や属性を追加したい
- 6.4 担当者を一覧から選びたい
- 6.5 チケットのワークフローをカスタマイズしたい
- 6.6 チケットを削除したい
- 6.7 ユーザの権限を管理したい
- 6.8 チケット登録後でもチケットの説明を編集できるようにしたい
- 6.9 WindowsドメインユーザでTrac(&Subversion)を利用したい
- 6.10 Tracを簡単にインストールしたい
- 6.11 チケット更新などのイベントを通知したい
- 6.12 チケットの収束状況を見える化したい
- 6.13 Wikiのページを簡単に編集したい(WYSIWYG)
- 6.14 ポータル画面(Wiki)にショートカットメニューをつけたい
- 6.15 EclipseからTracを操作したい
- 6.16 タスクの進捗状況をガントチャートで見える化したい
- 6.17 trac.iniをWebUIで管理したい
- 6.18 管理画面でアカウントを管理したい(Basic認証/Digest認証)
- 6.19 不要なプラグインをアンインストールしたい
- 6.20 Trac障害調査のためのログを出力したい
- 6.21 Tracプロジェクトのバックアップを取りたい
- 6.22 別プロジェクトのWikiページを再利用したい
- 6.23 Tracをバージョンアップしたい
- 6.24 チケットを一括で更新したい
- 6.25 チケットの親子関係を管理したい
- 6.26 CSVやExcelからチケットを一括して登録(更新)したい
- 6.27 関心事に合ったレポートを表示したい
- 6.28 DBを変えたい(DBロックエラーが出ないようにしたい)
- 6.29 複数のリポジトリを使いたい
- 6.30 Wikiの任意の場所に条件に合ったチケットの一覧を表示したい
- 6.31 複数のプロジェクトの設定を一括管理したい
- 6.32 複数プロジェクト間で相互にリンクを張りたい
- 6.33 バグ収束曲線やバーンダウンチャートを表示したい
- 6.34 リポジトリブラウザで日本語を文字化けせずに表示させたい
- 6.35 複数のプロジェクトを管理したい
第7章 Tracを使う上での心得(プラクティス)
- 7.1 Tracの14のプラクティス
- 7.2 Tracあるある/こんなチケットは嫌だ
第8章 Tracリファレンス
- 8.1 Tracのシステム構成
- 8.2 セットアップ
- 8.3 コマンドリファレンス(trac-admin)
- 8.4 Tracリンク表記(TracLinks)リファレンス
- 8.5 Trac設定ファイル(trac.ini)
プロフィール
菅野裕
1976年生まれ、愛知県出身。
SIベンダーにて業務アプリケーションの開発を経験したのち、オブジェクト指向技術に光明を見いだし、2004年に豆蔵に移籍。主にシステム開発の現場でアーキテクチャ構築や新技術導入の支援・教育などの業務を経て、現在はWebサービス会社にて自社サービスの開発と運用に携わっている。システムの品質はエンジニア個人およびチームが日々実践するプラクティスによって作り込まれるものだと実感している。身も心もプロセスもクルマもライトウェイトが好み。
訳書に「Rubyによるデザインパターン」(共訳)。
今田忠博
1976年生まれ、茨城県出身。株式会社豆蔵所属:シニアコンサルタント。
SIerの現場でシステムエンジニア、プロジェクトマネージャなどを経験。システム開発現場で悲惨な体験をし、開発現場を効率的にしたいと2004年に豆蔵に移籍。システム構築プロジェクトのアーキテクトやフレームワークの設計・実装、プロジェクトマネージャ支援、要件定義コンサルタントなどの業務を経て、そもそも要求が間違っていると、その後いくらがんばっても幸せになれないと理解する。現在、要求から設計、実装をつなぐ方法を模索中。実務ではアプリ開発の要件定義やフレームワーク、共通部品の設計・開発、それを使ったアプリ実装やその管理など、なんでもやるなんでも屋。
プライベートは奥さんと子供と過ごす時間を大事にしている。趣味は家族旅行。
本書の他に、@ITやITアーキテクトなどに記事を執筆。
近藤正裕
1968年生まれ、京都府出身。株式会社豆蔵所属:シニアコンサルタント。
個人認証システム、P2Pシステムなどの研究開発からスタート。10数年にわたり業務システム開発、情報系システム開発に携わる。現在は、主にユーザー系企業でアーキテクチャ構築・品質向上を支援する日々。現場ではBTS/SCM/CIを積極的に活用する。情報系システムの経験から統計・データマイニングの活用についても技術調査を行っている。
アイデアプロセッサiEditを開発し、フリーソフトウェアとして公開中。
http://kondoumh.com/software/iedit.html
杉本琢磨
1977年生まれ、愛知県出身。株式会社イージフ所属:ITアーキテクト。
大手印刷会社で顧客管理システムなどを手がけた後、株式会社豆蔵にてアーキテクトとしていくつかのプロジェクトに参画。期間の長いプロジェクトに関わる中で、プロジェクト管理の大切さを痛感する。2008年4月より現職。企業向けオープンソースに関する導入支援・開発などを行っている。3人の子供との生活と仕事を両立させるため、サラリーマンでありながらコワーキングスペースを活用した職住近接生活を模索中。
好きな言語はC#。好きなテレビ番組は「クインテット」「ダーウィンが来た!」。最近の趣味は昆虫と俳句。
著者の一言
「あなたのプロジェクトの問題、ちゃんと管理できていますか?」
ソフトウェア開発の現場で実施されている問題管理のやり方の多くは、お世辞にも効率的とはいえません。多くのプロジェクトでは、何10年と変わらない古びた方法による管理が今でも行われています。その結果、あるプロジェクトでは、管理者があふれるバグやタスクに混乱し、それらの追跡を放棄してしまっています。また別のプロジェクトでは、むやみに複雑な管理を開発者に強いているがためにプロジェクトの進捗を遅らせてしまっています。
あなたの見ているそのバグ票、Excelで書かれていませんか? ちゃんと履歴は残せますか? バグを報告しないで修正してしまう開発者はいませんか? それはなぜですか? むやみに複雑な管理フローになっていませんか? 対応中のすべての問題に優先度が付いていますか? 優先度の低い問題に時間をかけている開発者はいませんか? 誰かさんがそのバグの解決のために変更したソースコードをあなたが確認することはできますか? 意図や修正者のわからない変更が加わっているコードはありませんか?
ソフトウェア開発の多くは非常に複雑なプロジェクトです。日々増えていく問題やタスクに、多くの現場は大変混乱しています。問題管理、タスク管理を効果的に行うことが可能ならば、プロジェクトをグッと成功に近づけることができます。
本書は、プロジェクト管理に問題を抱えている全てのソフトウェア開発関係者向けに書かれた、Tracの入門、活用本です。活用といっても、ただTracの機能を説明しただけの本ではありません。Tracを使った問題管理やタスク管理の方法がわかるだけでなく、なぜ問題管理が重要なのか、なぜバグトラッキングシステムを使う必要があるのかを解説し、管理者、開発者がプロジェクトの各局面でTracを使う意味が理解できることを目指しています。また、実際の開発現場で培われた実例を多く紹介しています。
Tracはバグトラッキングを中心とするWebベースの問題管理システムです。たくさんの製品が市場に出回るこの分野で、着実にデファクトスタンダードの地位を固めつつあります。とはいえ、Tracをインストールするだけで誰もが使いこなせて、プロジェクトの問題がどんどん片付いてゆく--というわけには残念ながらなりません。本書は、開発プロジェクトの現場でTracを使いこなすためのガイドラインとなるように書かれています。そのため、十分なページを割いて問題管理、プロジェクト管理についても解説しています。また、複雑で難しくなりがちなそれらの問題の説明には、図解や漫画を使って直感的に理解しやすいように努めています。
Tracは2012年9月に最新バージョン1.0をリリースしました。本書は全編この安定版1.0に対応しています。Tracの基本的な使い方の順を追った説明はもとより、Trac使いこなしのための逆引き可能なTIPS集や、Tracを使う上での心得もきっとあなたの役に立つことでしょう。
本書の初版が発売された2008年当時と比べて、開発現場の状況も少しずつ変わってきました。バージョン管理システムにGitを使ったり、継続的インテグレーションを導入する開発チームは決して珍しくなくなりました。この度本改訂版を出す上で、そのような新しい開発環境のサポートも十分に盛り込みました。その他、開発プロジェクトの現場で使える実践的なトピックを随所に追加した本書をぜひともご活用ください。