COMODO(COMODO ライフブック)
きものが着たくなったなら
- 山崎陽子 著
- 定価
- 1,628円(本体1,480円+税10%)
- 発売日
- 2019.4.26
- 判型
- A5
- 頁数
- 144ページ
- ISBN
- 978-4-297-10577-8 978-4-297-10578-5
サポート情報
概要
「ハレの日、特別な日だけでなく、もっときものを日常に」。
年間着用回数50日→150日。山崎陽子さんがきものに目覚めた5年の日々と工夫を綴ります。
きものはとかく「怖い、苦しい、高価」などネガティブなものと捉えられることもありますが、本書では「気楽に、可愛く、カジュアルに」、新しい楽しみを提案します。
著者は女性誌、生活誌でおもに活躍している山崎陽子さん。長年おしゃれを楽しみ、短期間の5年できものにするするはまり、その着こなしや考え方が、上級者にまで支持されています。
「洋服でのおしゃれは楽しいのに、きものになると途端に選び方も着方も、自分らしい着こなしがまったくできそうになく想像もつかない」と敬遠してしまう人は多いのですが、尻込みする人にもルールに縛られない自由な著者のおしゃれは参考になるはずです。
「一式なんて揃えない」「着ると決めたらいつでもどこにでも着ていく」をモットーとする著者の体験とノウハウを文と写真で読ませます。なるべくラクする、リーズナブルな手入れとケアのアイデアも紹介!
こんな方にオススメ
- 洋服のおしゃれに飽きた人
- きものの着こなしがわからない人
- 維持費がかかると思っている人
- 祖母や親から着物を譲り受けたけど、どうしたらいいか困っている人
- 着ていく場所がないと思いこんでいる人
- 何を買ったらいいのかわからない人
- 呉服屋に行きたくない人
目次
- はじめに
第一章 場数を踏もう
- 敬語ではなく、友達言葉でしゃべれるきものを選ぶ
- 1年を通して着ると、自分の軸が定まってくる
- どこにでも着ていこう。ひとりでも着ていこう
- きものを着ると、日本人なら誰でも3割増し
- 和装は老けて見えるのではなく、年齢を超越する
- 旅に着ていくことで、心配は自信に変わる
- 外国で着ることの恩恵は、計り知れない
- 着れば着るほど、きものが集まってくる
- 愛情と手間を惜しみなく注げる1枚と出合えたら
- セレモニーは、周囲になじむことが先決
- 始末のよい暮らしを知るきっかけに
- 和の趣味やお稽古ごとが、きものの世界を広げてくれる
- Column 1
呉服店、アンティーク店、
ネットショップ、オークション……、どこでどう買う?
- きもの用語
- 店主にインタビュー
「恐れず着て楽しんで。そのお手伝いをするのが、呉服屋の役目です」
第二章 さあ、お出かけしよう
- きもの暮らしの暦
- 冬の袷/春の袷/初夏の単衣
- 夏の薄物/初秋の単衣/秋の袷
- 袷の着物に、季節を問わない帯3本
- ベースになる着物は冒険せず、洋服の延長線上で選ぶ
- 暑い日にはためらわず、単衣をもっと活用したい
- ちょっといい浴衣で、きものを始めるという道も
- ご近所のお出かけには、半幅帯をキュッと締めて
- 盛夏のきものには、着る喜びと見る人に涼を運ぶ心遣いが
- 華やかな席へおめかしして、そんなときは付け下げで
- 長襦袢はマイサイズ、着物もできれば体に合ったものを
- フェミニンに装いたいときは、ワンピース感覚の小紋で
- ひも1本の効果は絶大、帯締めは能弁な小物
- いつも使うバッグを和装に合わせて
- 心強い小物で、雨の日も諦めない
- 首元、手首、足首、冬は3つの「首」を暖めて
- 裾と足袋、草履は三位一体、きものも履物が大事
- 羽織は「七難隠す」、おしゃれジャケット
- Column 2
和服に似合う髪型探し
第三章 もっとラクに自由に楽しもう
- 着ることが、最良のお手入れです
- お手入れはなるべく自分の手で、小さなことには目をつぶる寛容さも必要
- 旅先できものを着るときの準備と荷造り
- 帯地や羽織の余り布は、バッグや小物にも
- ジュエリーから陶器のかけらまで、帯留めは遊び心を生かして
- 染めたりリメイクしたり、ときには半衿にも変化球
- 水仕事も揚げ物も、割烹着があればへっちゃら
- 付け帯にするという選択も、賢いことかもしれません
- 洗えるうそつき襦袢と付け衿、付け袖でいつも清潔に
- 季節に合わせた手ぬぐいは、多目的に使える優秀布
- Column 3
きものを着る日、支度と時間割
- おわりに
- ショップリスト
プロフィール
山崎陽子
1959年福岡生まれ。
マガジンハウスで雑誌『クロワッサン』『オリーブ』『anan』編集。その後、フリーランス。
『クウネル』(マガジンハウス)『エクラ』(集英社)『つるとはな』創刊から編集、ライターとして参加。女性誌、ムック、書籍の編集、ライティングの仕事をしながら、洋服ブランド『yunahica』を立ち上げ。
着物歴は5年ながら、インスタなどで定型ではない粋な着こなしが注目を集めている。
Twitter:@yhyamasaki
著者の一言
私がきものを着始めたのは5年前、50代半ばのことでした。
それ以前、最後に着たのは高校の運動会で、それも友人の浴衣を借りたのを覚えています。成人式のために母が貯めていた振袖貯金は「私はきものなんて着ないから現金でちょうだい」と、運転免許を取るために使いました。
社会人になってからは、雑誌『オリーブ』や『アンアン』の編集者として仕事をしてきたせいか、洋服の流行には敏感だったし、おしゃれが好きで、それなりにお金も使ってきました。上質な素材、洗練されたデザイン、手の込んだディテール、心地よいシルエットの服のよさも知っているつもりです。
けれど、年齢とともに服に対する情熱が少しずつ薄れてきました。40代がおしまいにさしかかったころでしょうか。要は、いまどきの洋服がどんどん似合わなくなってきたのです。
そんなとき、雑誌『エクラ』で、女優の鈴木保奈美さんのきもののページを担当することになり、季節ごとに何度か撮影とインタビューをさせてもらいました。その道のプロに教わりながら、着物や帯に触れ、原稿を書きました。「江戸小紋って何ですか?」と質問するド素人に、きっとみなさん呆れただろうと、思い返すたびに冷や汗が出ます。それが50代前半のこと。
次第にきもの好きな友人が周囲に増えたのも、年齢的に自然な流れでしょうか。空のコップに水がたまっていくように、きものへの興味や知識が徐々に蓄積されていきました。
そんな2012年の夏、モデルの黒田知永子さんと取材で訪ねた日本橋『竺仙』で素晴らしい浴衣と出合ったのです。社長さんのお話を伺い、その型染めを見せてもらい、連れて帰ろうと決意。綿の浴衣と麻帯を購入し、下着と下駄を揃え、着付けを2回習ってその夏、8回着ました。
次のきっかけは2013年の暮れ。子どもが幼稚園児だったころから続く、母親友だち7人で集まる忘年会が、幹事の発案で「今年のドレスコードはきもの。せっかくだから写真館で記念写真を撮ってもらいましょう」ということになり、背格好が近い友人に一式借りて着付けてもらいました。淡い縞の紬に、白っぽい織り帯、グレーの羽織。そのとき、満更でもないなと思った私は、「自分用にこういうきものを持っておきたい」と考えたのです。
2014年1月末に初めて着物と帯、長襦袢、小物、足袋と草履が揃い、2月にはその呉服屋さんで催されていた着付けのレッスンに3回通いました。
「3月のパリ・オペラ座バレエ団の公演に、自分で着て観に行く」と目標を定め、自宅でも着付けの復習をしました。紬の着物、更紗の帯、コートがわりに大きなストールを羽織って出かけた上野の東京文化会館。その日からきものにどっぷり浸かり、今に至っています。
きものは素晴らしい日本の衣服ですが、ネガティブな言葉も付きまといがち。私もずっとそう思っていたのだから、それは否定しようがありません。
着るのが面倒で着付けが苦しい、習うのにもお金がかかる、走れないし跨げない、手入れが大変だしクリーニング代も高い、そもそも呉服屋さんに入るのが怖い、高いものを売りつけられそう、着ていく場所がない、結局タンスの肥やしになる……。そういう不幸を防ぐためにも、やはり慎重であるべきだとも思います。でも、洋服では叶わない、思いがけないリターンが得られるのもきものなのです。
私はいまだに訪問着を持っていないし、袋帯も結べません。でも、きもの生活を謳歌できています。2014年に50日だった着用回数が、2018年には150日を超えました。王道の晴れ着は少なく、ほとんどがふだん着という細道ですが、そこから見える景色は愛おしい。飽きのこない滋味深さがあり、着るたびに喜びが感じられます。このまま気負わず長く付き合っていけたら、どんなに幸せでしょうか。
ハレの日、特別な日だけでなく、もっときものを日常に。
そんな人が一人でも増えますようにと願いを込めて。