著者の一言

ITへの依存がますます深まっています。

情報化の進展は、もちろん巨大な恩恵を私たちにもたらします。2020年から流行した新型コロナウイルス感染症は私たちにさまざまな制限を加えましたが、それでもなんとか仕事や学校、生活を継続できたのも恩恵の一つです。一方で情報システムが止まったとき、誤作動したとき、悪用されたときの被害も大きくなります。

現在の情報システムは極めて横断的、連携的に作られています。Facebookのようなキラーサービスでアカウントを作っておけば、他のサービスでもう一度個人情報を入力する必要はなく、キラーサービスのアカウントをそのまま使って、必要な情報をそのサイトへ送れます。とても便利です。でも、キラーサービスが停止したり、悪用されたりした場合はどうでしょうか。

悪意を持ってサーバを攻撃し停止させるのは犯罪です。では、そのサーバが金融の中枢だったらどうでしょうか。交通制御の中枢だったら?

原子力発電所の管理をしていたら?

米国防総省は、サイバー空間を第五の戦場と定めました。上記のような攻撃はもはや戦争行為であり、報復には陸海空軍を動かす可能性があると示唆したのです。

このように生活が便利になるのと対をなすように、破綻したときのリスクもどんどん高まっています。私たちは都合の良いことを望んでいます。つまり、情報化の良いところだけを享受して、リスクは排除したいのです。そのための先兵となるべきセキュリティ管理者の数が、日本では圧倒的に足りないと言われています。ここに従事する人を育てるのが国の喫緊の課題であり、まさに情報処理技術者試験の「情報セキュリティマネジメント試験」合格者こそ求められている人材であるわけです。合格者は、企業で地域で家庭で、セキュリティを実現する中核的な役割を担うことになるでしょう。国を挙げて期待がよせられているのです。

足りないものはありがたがられます。セキュリティに興味のある方はもちろん、就職や昇格に役立てたい方にもおすすめしたい試験です。ITパスポート試験合格者の次のステップとしても最適です。是非、合格の栄冠を手にされ、社会のあらゆるシーンでご活躍いただければと思います。

(⁠⁠はじめに」より)

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

中央大学国際情報学部教授。情報学専攻。

「わかりやすいITの解説」に定評があり,NHKのラジオ番組「子ども科学電話相談」やEテレ「趣味どきっ!」ほか,多数のテレビやラジオに講師として出演。学生だけでなく子どもからお年寄りまで,幅広い年齢層に支持される。サブカルチャーをこよなく愛し,造詣が深い。

本書をはじめ情報処理技術者試験対策本の執筆も多数手掛けている。情報セキュリティマネジメント試験も試験開始時から参考書を継続して執筆中。

【著書】
『情報セキュリティマネジメント 合格教本』,『ネットワークスペシャリスト 合格教本』,『情報処理安全確保支援士 合格教本』,『はじめてのAIリテラシー』(いずれも技術評論社),『メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」』(光文社),『ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ』(講談社),『実況!ビジネス力養成講義 プログラミング/システム』(日本経済新聞出版社)ほか多数。