「新卒」
なんと初々しい響きでしょうか? 人生で1回しか経験できない新卒採用で社会人へと足を踏み入れていく皆さんをとてもうらやましく思います。なぜなら、私は大学卒業時に就職活動も就職もせず「新卒採用」という社会人第1歩を踏み出すことができなかった、いやしなかったからです。「同期」と呼べる仲間もいないし、OJTでお世話になった先輩もいません。自分の社会人への第1歩を、もっと真剣に考えていたら……なんて思うこともあります。
それはさておき、入社したての新入社員の方が「まだ仕事ができない」のは当然のこと。でもお給料はいただきます。となると、お給料の対価として会社に何を提供できるでしょう。
新入社員や入社数年目の方は知識や経験が不足していますが、仕事に対する意欲が高く、新しいことに挑戦したり、先輩や上司からのフィードバックを受けたりすることで成長できる、という期待があります。
それでは、これからの社会人生活に向けて、なにを成長させていけばいいのでしょうか?
体力? 知力? 行動力? 自分の強みを探すことも難しいし、こうしなければと思うことも一朝一夕ではなかなか難しいものです。そんなあなたに、まずおすすめしたいのがパソコンの基本スキルです。
「パソコンスキル」を最初の強みにするワケ
私はパソコン講師として、新入社員の方に基本的な研修をさせていただく機会があります。参加者は今までスマホで事足りた学生生活を送ってきたり、自己流でパソコンを使ってきたりした方も多く、せっかく会社で受けさせてくれる研修なのに、
- 「操作スピードについていけない……」
- 「何のためにこの操作が必要なのかわからない……」
と成果が半減する残念な結果になることもあります。
今やどんな業種であっても、業務でパソコンを使用するのはあたりまえ。メールで連絡をとったり、ネットで情報を集めたり、Officeソフトで資料を作成したり、報告書を作成したり……と日常業務の中でパソコンの作業は多くの時間を占めています。「知っててあたりまえでしょ」と思われて仕事を振られることも多いはずです。
ちゃんとしたパソコンの使いかたを知らずに、その場をしのいできた社会人1・2年目の方は、周りから「そんなことも知らないの?」と思われているのではないかと不安になるでしょう。ただでさえ業務内容ははじめてでわからないことばかりなのに、道具であるパソコンの使いかたまでわからなければ、どんどん遅れをとってしまいますし、気持ちが萎縮してしまうと、ほかの業務にも自信がなくなってしまいます。
そこで、パソコンの基本スキルを身につけ「強み」にすれば、どんな業種でも速攻で活かすことができ、入社したての毎日の仕事をサクサクとこなしていけます。それは周りからの信頼や評価につながっていきます。
仕事で重要なパソコンスキル3つの軸
それでは、具体的にどこまで勉強すればパソコンスキルを強みにできるのでしょうか。本書では3つの軸を意識してスキルを身に付けます。
正確性
仕事で「ついうっかり」は大きなミスにつながります。大切なメールの宛先をまちがえた。伝え忘れたことを五月雨式にメールを送り付けた。返信したつもりがしていなかった。こんな仕事のしかたでは、相手からの信頼を得ることはできません。これらの人的ミスに対して「気をつけよう」という意識を持つだけでなく、メールの振り分けやフラグの利用、連絡先の管理など、機能をきちんと使いこなして防ぎましょう。
このことは連絡手段だけでなく、情報収集や資料作成にもいえることです。目的に沿った情報整理や、自己流ではないソフトの機能をきちんと活用した資料を作成できれば、上司や同僚から信頼されコミュニケーションも円滑になります。そして、あなた自身の自信につながることでしょう。
スピード
今やネットで情報収集はあたりまえ。仕事相手の企業情報をホームページで検索できますし、仕事に関する調べものもネット、国が公開しているさまざまなデータもネット、過去の入札情報や落札業者のチェックもネット、消費者の口コミや評判もネット……という時代です。
検索にてまどっている暇はありません。仕事に必要な情報をいかにすばやく自分のものにするのか、検索のコツや情報管理の方法を身につけておく必要があります。
検索以外にも仕事全般にスピードは重要です。依頼された資料の準備が間に合わず、残業したり仕事を家に持ち帰ったりするのは、パソコンを道具として使いこなせていないため。スピードを重視したパソコンスキルを身につければ新入社員にとってのアドバンテージとなります。
共有性
以下のような事項に心当たりはないでしょうか。
- 作成した資料に誤字脱字や入力ミスが多い
- 内容を変更したら、かんたんにレイアウトが崩れる資料を作っている
- 共有フォルダーの資料のファイル名を勝手に変更した
- 同じようなファイル名が増えて、どれが最新かわからなくなった
なにも知らずに操作して、周りに迷惑をかけているかもしれません。タイピングが苦手なら、入力支援や便利な変換方法などを味方につけ、ミスなくすばやく入力すること。そして、共有してもかんたんに修正・変更できる編集方法で、資料を作成することなどが求められます。
仕事は1人ではできません。ミスを減らし、迷惑をかけない仕事のしかたを心がけることが、周りからの信頼につながります。
現在、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術
による社会変革のこと)が進み、さまざまな作業がシステム化・効率化されています。AIが出現し、いろんなことを私たちの代わりにおこなってくれることでしょう。それでも、私たちの日常業務からパソコンの作業がなくなることは考えられません。新社会人の方は「仕事をする」という前提でパソコンスキルを身につけ、「自分の強み」にして社会人の第1歩を踏み出してください。
社会人としてある程度年数を重ねている方にとっても、いまさら人に聞けない疑問や自信が持てない部分を解決して、今後の業務に自信を持っていただければと思って本書を執筆しました。難しいこと、マニアックなことは記載しておりません。「そんなことも知らないの?」と思われないために、ぜひ仕事を覚える前の基本スキルとしてお役に立てていただければうれしく思います。