蛇行河川の謎 谷は海がつくった

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著者
高橋雅紀たかはしまさき 著
定価
3,740円(本体3,400円+税10%)
発売日
2025.9.8
判型
A5
頁数
400ページ
ISBN
978-4-297-15126-3 978-4-297-15127-0

概要

山はどのようにしてつくられたのか」――地形学における最古にして最大の謎に迫る、知的冒険の第3弾。『分水嶺の謎』『準平原の謎』に続く今回は、“川”がテーマです。

平原を自由気ままに蛇行して流れる川。その川は大地が隆起したあとも下刻を続け、蛇行した深いV字谷がつくられる……。川が大地を侵食する『穿入蛇行』は、地形学の根幹です。そのことを疑う人は、世界中に一人もいないでしょう。しかし、大地の主たる彫刻家は、本当に川なのでしょうか?

100年を超す地形学の常識を疑い、新たな視点で地形の謎をひもとく1冊!存分にお楽しみください。

こんな方にオススメ

  • 地形マニア
  • 地図・地形に関心のある方
  • 登山が好きな方
  • 自然の謎解きを疑似体験したい方

目次

旅の準備

  • 川も蛇行、谷も蛇行/蛇行河川の取り扱い方/勝手気ままな蛇行河川/自然の摂理 フラクタル/曲がってばかりはいられない/自由な蛇行も制約あり/川が流れ始めたとき……/不思議な不思議な穿入蛇行/山地を流れる/蛇行河川は自由なの?/〝すべての道はデービスに通ず〟/成因を包含する学術用語の罠/選んだ言葉が世界を狭めてしまう/側刻とはいうものの……/真下に削る掘削蛇行/横にはみ出す生育蛇行/川が大地を侵食した?/河流と河谷の蛇行の不一致/流域面積と比較する理由/来る日も来る日も大雨だった?/他人事ではない蛇行の不一致/中国山地の穿入蛇行/今でもうなされる地質調査の記憶/生育から掘削へギアチェンジ/日本の川は〝制約蛇行〟?/河谷の蛇行は世界と一緒/都合の悪いことには目をつぶらない/小瀬川の河川争奪/小郷川はかつて大河川だった/生見川は流量を失った小郷川?/蛇行の波長は河川争奪のおかげ?/渋前の谷中分水界の成因/源流に残された一次蛇行/争奪直前は必ず源流
  • コラムvol.1 「ないの? それともなくなったの?」

第1日 錦川の不思議な蛇行

  • ずっと気になっていた錦川/つい立ち寄ってしまう谷中分水界/侵食小起伏面は、かつての浅い海底/かつての海峡を走る道路網/〆は見事な谷中分水界と片峠/生まれたばかりの錦川/川の流路は海が決める/最後の海峡を追いかける河口/椅子取りゲームが流路を決める/海と河口の追いかけっこ/一杯のつもりが〝はしご酒〟/流路が決まると合流も確定/蛇行の犯人は海だった/川は同じ高さで合流する/思想の片輪はダーウィンの『種の起源』/〝大地の主たる彫刻家〟は誰?

第2日 蛇行河川の置き土産

  • 覚えてますか? 胡麻の丸山/近道した蛇行河川/日本一の環流丘陵/胡麻を流れたかつての蛇行河川/全国各地へ/環流丘陵巡り/北海道の環流丘陵/東北地方の環流丘陵/関東地方の環流丘陵/中部地方の環流丘陵/近畿地方の環流丘陵/中国地方の環流丘陵/四国地方の環流丘陵/九州地方の環流丘陵

第3日 環流丘陵の謎

  • 屈曲しすぎる蛇行河川/蝶ネクタイが外れない/〝環流丘陵っぽい〟地形/日本各地の疑似環流丘陵/腑に落ちない環流丘陵/環流丘陵は島だった/地形の〝神経衰弱〟/半島から島に、そして孤立丘陵へ/海に出かけて答え合わせ/背もたれ付きの〝カウンターチェア〟
  • コラムvol.2 「ローカルとグローバル」

第4日 貫通丘陵の謎

  • 環流ではなく貫通丘陵/貫通丘陵も島だった/高所に残るかつての島/結論を制約する言葉の刃/複雑すぎる環流丘陵/孤立丘陵は島だった/川は大地を下刻しない/海が残した段々畑

第5日 先行谷の謎

  • 先行谷とは先行河川のこと/山地を横切る先行谷/川が先? 谷が先?/似て非なる疑似先行谷/偶然というにもほどがある積載谷/谷は最初からできていた/すべては陸が誕生したとき/多島海の〝あみだくじ〟/陸に残された〝あみだくじ〟/蛇行河谷は海がつくった
  • コラムvol.3 「違い」
  • コラムvol.4 「言葉」

第6日 広瀬川の不思議

  • 何も知らなかった自分の故郷/父の記憶を手がかりに/水流の下は別世界/どこまで行っても礫の絨毯/急流でも流されない礫/川底は思いのほか静穏/用水路が運んできた砂/地形の不連続、堆積物の不連続/礫から砂にバトンタッチ/運ばれやすい砂と、運ばれにくい礫/なだらかな川原を埋める礫の謎/礫層を覆う砂/激流が運ぶのは砂/礫は上流からやって来ない/「鉄人28号」が運んできた巨岩?/堰を超えられない礫の不思議/鉄人のつぎは巨大ロケット/未来の果実を夢見て
  • コラムvol.5 「賭ける」

第7日 渡良瀬川の不思議

  • わたらせ渓谷鉄道の地形の旅/礫が誕生する瞬間/地質学者の独り言/アルビレオの観測所?/川原の礫はすでにまん丸/ジュラ紀から白亜紀へ/橋脚に残された侵食の痕跡/巨大な礫のドミノ倒し/いつかは破綻する川の侵食説/巨石がつくるセンターライン/巨石帯の前に谷ありき/大地を削る研摩材の謎/巨石帯はニギハヤミコハクヌシ?/ダムの下流の礫の不思議/頭から〝靴下〟が離れない/いつまでも居続ける巨礫/川は〝靴下〟を脱がない

旅のおわりに

  • すべての始まりは秩父盆地/頭の中を鉛筆で描く/地質三昧の『秩父編』/見て来たように鉛筆で描く/時間がないから鉛筆で描く/思い立ったらすぐ作る/地球の運命は秩父で決まる/〝片理マリ〟の誕生/親鼻橋の紅簾石片岩/あれ見なきゃダメだよ!/〝片理マリ〟の登場!/妄想は止まらない!/渋谷交差点
  • 感謝
  • 不届き者の仕業?
  • 2周遅れの……

プロフィール

高橋雅紀たかはしまさき

1962年、群馬県前橋市生まれ。

1990年に東北大学大学院理学研究科博士課程を修了後、日本学術振興会特別研究員および科学技術特別研究員を経たのち、1992年に通商産業省(現経済産業省)工業技術院地質調査所(現産総研)に入所。

専門は地質学、テクトニクス、層序学。

大学の卒業研究以来、関東地方の地質を調べ日本列島の成り立ちを研究。

NHKスペシャル「列島誕生ジオ・ジャパン」や「ジオ・ジャパン絶景100の旅」のほか、ブラタモリ「秩父」「長瀞」「下関」「日本の岩石SP」「つくば」「東京湾」「前橋」「世界の絶景SP」「行田」「長岡」に出演。

著書に『分水嶺の謎 峠は海から生まれた』や『準平原の謎 盆地は海から生まれた』(ともに技術評論社)のほか、『日本地方地質誌3 関東地方』(朝倉書店、分担)や『日本海の拡大と伊豆弧の衝突―神奈川の大地の生い立ち―』(有隣堂、分担)、『トコトンやさしい地質の本』(B&Tブックス日刊工業新聞社、分担)など。

好きな言葉は「放牧、放任、放し飼い」、座右の銘は「退路を断たないと、次の扉は開かない」。

いつも心がけている自身の矜持は「初代で一代限り」。