「コマンド」(command)って何だかわからない未知の世界のように感じていませんか? たしかに、地味な画面の中で何を意味しているかわからない大量の文字列が並んでいるみたいな、妙な圧力しか印象にないかもしれません。「そんなわけのわからないものも、AIが解決してくれるんだよ」と、どこからか声が聞こえてきそうです。本当にそれでいいのでしょうか?
本書を手に取られた方の中には、本書のタイトルにある「コマンド」って何のことだろうと思っている方もいらっしゃるでしょう。一般的な意味での「命令」かと言うと、間違いではないのですが、パソコンのある種の使い方を総称して「コマンド」と呼ぶのが一般的です。コマンドを利用してパソコンを操作できることを知らない方が相対的には増えているようにも思います。
Macを使っている多くの方は、使い勝手の良い点やデザイン性からMacを選択するのが傾向です。通常はグラフィカルな画面操作でほぼ100%のことができてしまいます。一方、Macでは「コマンド」を使って操作するという世界があります。本書を読むことで、そういう世界をまったく知らない方でも、コマンドがどんなもので、どんな用途に使えるのかを理解していただけるでしょう。コマンドの知識が必要な人の代表格は、プログラム開発やネットワークなどのエンジニアです。彼らがコマンドを利用する理由には、コマンドだと早く作業を進められることや、通常の利用方法では大変なことやできないようなシステムの深い部分の作業ができること、そしてまとめて作業ができることが挙げられます。
一方で、エンジニアでない人だとコマンドなんて関係ないと思われるかもしれませんが、そんなことを言い切れない状況もあります。AIの時代に入りコマンドが違ったプレゼンスを持つようになりました。AIはチャットをするだけでなく、コンピュータの操作もやってくれます。人間のように操作を進める場合もあるのですが、コマンドを実行することを提案することもあります。その時、提示されたコマンドを実行して良いかどうかを判断するのは人間です。つまり、AIを使いこなすための知識として「コマンドの理解」も必要なのです。言われたコマンドを無批判に実行して、何が起こっているかもわからないというのでは、使いこなしているうちには入りません。
コンピュータを少しでも深く理解するきっかけがほしい方にとっては、コマンドはとても良い題材になります。通常の利用環境は、美しいグラフィックスで必要なものしか見えなくすることで使い勝手を高めています。一方、コマンドの世界は素のコンピュータが垣間見れるという意味では、今まで見たことないようなファイルがあって、それがMac全体の動作に関係していることなど、いろいろな発見があるはずです。ただし、あまりに素なので、最初は取り掛かるのが大変かもしれません。はじめて使うとまず何をすればいいか、まったくわからないと思いますが、それが普通です。はじめて取り組む方が何をすればいいのかをお伝えするのが本書の立ち位置であるととらえてみてください。少しずつ、簡単なところから、習得しましょう。Macにこんな側面があったのかと思われると思いますが、複雑なコンピュータの裏側を垣間見ることができるとすれば、さらに興味を持っていただけるのではないかと思います。
本書でコマンドの世界に興味を持っていただき、Macをより効果的に活用できるようになることを願っています。