著者の一言

Androidスマートフォンが世に出て今年(2026年)で18年になります。その間、数多くの新技術が開発され実用化され、電話機としての高機能化はもちろんのこと、より高い多面的価値をもたらすデバイスとして発達してきました。また、スマートフォン(タブレットを含みます)の急速な高度化は利用者の私たちに短期でのモデルチェンジを促しました。その結果、多くの利用者が日常では利用することのない旧モデルのスマートフォンやタブレットをもてあますことにもなりました。視点を世相に移せば、コンピュータ教育の充実によって、ITの基礎知識を持った若者が増えました。また、企業でコンピュータに接する機会が多くなり、ITの知識を持ったシニアも増えました。本書はここに着目しました。⁠自分だけのアプリを作ろう⁠⁠、⁠無用の長物と見做された旧モデルを再生しよう」という目標を立てました。また、想定する読者層を「人生の進路を探すジュニア」「人生の次の進路を探すシニア」の双極の世代としました。ジュニア世代には無辺の未来を拓く武器としてほしい、シニア世代には第二の人生の拠りどころを見つけてほしい、という熱い思いで執筆しました。

「人生の進路を探すジュニア」の皆さまへ

ジュニアの皆さまにとってスマートフォンは、日常生活や学習、コミュニケーションの中心にあり、今や、体の一部とも言えるほど身近な情報デバイスになっています。そのAndroidの仕組みを学ぶことは、⁠使う側」から「作る側」へと視点を転換することです。

この視点の転換は大きな意味を持ちます。画面へのタップやスワイプ操作に対する反応が、どのようなプログラムや仕組みによって実現されているのかを理解することで、技術を客観的かつ論理的にとらえる力が自然のうちに身につきます。

本書では、ウィジェットやクラスを個々にとりあげ説明する構成にはしていません。⁠設計][実装][テスト]というアプリ開発の流れの中で説明する構成にしています。これによって、アプリ開発に共通する基本概念を実践的に学べることにもなります。また、ポイントにはハンズオン(実践問題)を設け、失敗や試行錯誤を重ねることで深い理解へと導きます。

本書で培われた論理的思考力や設計力は、プログラミングのほとんどをAIがこなせつつある現在、IT開発の中核的技術になりつつあり、ジュニアの皆さまの進路選択の幅を広げる基盤となります。

「人生の次の進路を探すシニア」の皆さまへ

シニアの皆さまがAndroidを学ぶ意義は、ひとえに「社会と主体的につながり続ける力」を得られる点にあります。新しい技術や流行に振り回されがちになるところ、Androidの基礎を学ぶことで、技術や流行を落ち着いて受けとめられるようになります。これはデジタル社会への不安を減らし、自信を持って第二の人生を生きていくことにつながります。

Androidでアプリを制作することは、論理的に考え、手順を整理し、少しずつ積み上げていく作業です。これは人生経験を重ねてきたシニアにとって非常に相性がいいものです。原因を考え、仮説を立て、試して確認するという流れは、今日まで企業や生活の中で培ってきた諸問題への解決力が活かせます。そして、健康管理や地域活動の連絡ツールなどお仕着せのものではない「自分のアプリ」を、現役時代に自然なうちに身につけた知識や技術に少しばかりの肉付けで作れることは、大きな達成感と生きがいをもたらすことになります。

三苫健太

福岡市在住。コンピュータメーカのシステムエンジニアとして数多のシステム開発に従事する。退職後はテクニカルライタとして,ソフトウェアエンジニアリングを中心に執筆。その傍ら,文芸書を執筆し「江戸川乱歩賞」などで高評価を得る。文理が融合した技術書や文芸書の創作がテーマ。他著に『オブジェクト指向開発トレーニングブック』,『Androidアプリケーション開発教科書』(技術評論社),文芸書『団塊へのレクイエム』(幻冬舎)がある。読書とコーラスが趣味。剣道教士七段