本書を手に取ったあなたは、本に関心があり、プライベートであるいはお仕事で、日常的に本に触れていることと思います。
本が関心を集めるのは、そこに書かれた内容、中身についてであって、本の体裁にまで注意を払う人は多くありません。とは言え、装丁や本文組みには興味を持たない人でも、購入した本の開きが良くなかったり書体やレイアウトが見づらかったりすると不満に思うもの。本を読むということは、ただ中身の情報を得ることではなく、体験を得ることなんですね。
本書は、モノとしての本を、観察・研究し、解説する本です。
本の世界には、なんとなく常識のようになっているが明文化されていない知識や、特に決まり事はないけどだいたいこうだという仕様やらがたくさんあります。でき上がった一冊の本は、そうした背景と習慣と多くの技術の集合で、その全体像は到底つかみきれません。本づくりに携わっていても、分業された受け持ちぶん周辺のことしか知らないのが普通だったりするのです。
本書では、「本って実際こうなってます」という、主に外側から見た本の姿を描くことで、現在の本に関するあれこれを大づかみします。いささか無謀な試みですけれども、既存のデザイン書や印刷の解説書等には書かれていないところが書けたと思います。
編集者やデザイナーをはじめ、本に関わる仕事に就いている方々(もしくはこれから関わりたい方々)ならば、本書を手元に置いて、図鑑や資料集のようにパラパラと眺めるだけでも、なにかしら得られると思います。さらにお手元の現物に当たって、見比べたり測ったり計算してみたりすると理解が深まるはず……。記載した数値の多くは実測値あるいは推定値であり、こう決まっているという意味ではありませんが、仕様を検討したり提案したりする際に「多くの本はこうなっている」という前提知識を持っていれば、話を進めやすくなります。現物の感覚と数値データを接続して、小さな成功につなげていきましょう。それが読者の良き読書体験を作ります。
本書は、本を作る側だけではなく、本に関わる多くの方を読者対象としています。説明の都合上、唐突に専門的な用語が出てくるところもありますが、巻末に用語集+索引を設けましたので、参照しつつお読みいただければ。
筆者は装丁・エディトリアルデザインを職とするデザイナーです。かと言って、特に編集や製本や紙に通じているほうでもありません。本書は、デザイナーとしてというよりは、本好き・読書家として、調べてまとめました。また、執筆を進めながら聞き取り取材も入れ、見ただけではわからないところも盛り込むことができました。
本を読むという体験は楽しく、作る体験もまた楽しいのです。
本ってだいたいこうなってますよね?