強いチームを育てる組織開発ガイド
~経営層・管理職のためのアジャイルな組織づくり~
- 松永広明 著
- 定価
- 2,640円(本体2,400円+税10%)
- 発売日
- 2026.7.1
- 判型
- A5
- 頁数
- 192ページ
- ISBN
- 978-4-297-15749-4
サポート情報
概要
本書は、ひとことで言うなら、アジャイルソフトウェア開発宣言の原則にある、
意欲に満ちた人々を集めてプロジェクトを構成します。
環境と支援を与え仕事が無事終わるまで彼らを信頼します。
という一文を、組織とマネジメントの観点から一冊かけて解きほぐした本です。
チームを信頼するとは、何を意味するのでしょうか。人が力を発揮できる環境と支援を与えるとは、組織に何を求めるのでしょうか。そして、リーダーは何を手放し、何を引き受けなければならないのでしょうか。
本書が向き合うのは、まさにこの問いです。
人類に、未来を予知する能力はありません。AIがどれほど進化しても、明日の顧客の心変わりや、来月の市場の変化を正確に言い当てることはできません。だからこそ、変化の激しい時代に必要なのは、完璧な計画ではなく、学習しながら適応できる組織です。
その組織を生み出すために必要なのは、現場を細かく管理することではありません。意欲ある人々が力を発揮できる環境を整え、必要な支援を与え、仕事が無事終わるまで信頼することです。
その変化に向き合うことは、個人の努力や現場の工夫だけでどうにかなる状況では、もはやありません。チームを支える組織の構造、意思決定、権限、評価、マネジメントの前提そのものを見直す必要があります。
本書は、現場にアジャイルを強いる本ではありません。管理職・経営層などのリーダー自らが「組織のOS」を書き換え、チームの力を解放するための変革の書です。(「はじめに」より)
こんな方にオススメ
- 経営層
- 管理職
- アジャイルチームの管理者
- PM
目次
第1章 アジャイルの基本と原則:強いチームの作り方
- 1.1 アジャイルソフトウェア開発宣言
- 1.1.1 4つの価値
- 1.1.2 12の原則
- 1.1.3 アジャイル宣言が示す学習する組織への転換
- 1.2 スクラムとは
- 1.2.1 アジャイルとスクラムの関係
- 1.2.2 スクラムの価値観
- 1.2.3 スクラムの責任(Accountability)
- 1.2.4 スクラムのイベント
- 1.2.5 スクラムの作成物(アーティファクト)
- 1.2.6 スクラムの特長と効果
- 1.3 アジャイルはチームスポーツ
- 1.3.1 優れた個人の寄せ集めだけでは勝てない
- 1.3.2 「阿吽の呼吸」はいかにして生まれるか
- 1.3.3 自己組織化という戦術
- 1.4 反復:不確実性を飼いならす最も有効な方法
- 1.4.1 反復とは「経験主義」という科学的アプローチである
- 1.4.2 短い反復が「リスク」を燃料に変える
- 1.4.3 信頼の再定義:「計画への準拠」から「価値提供能力」へ
- 1.5 本章のまとめ
- column 雁の群れに学ぶ自己組織化
第2章 共通理解が自律性とチームワークを育む
- 2.1 リファインメント:価値の種を見つけるための共同作業
- 2.1.1 ユーザーストーリー:対話を生む「共通言語」
- 2.1.2 リファインメントにおける具体的な活動
- 2.1.3 ユーザーストーリーマッピングという共同作業
- 2.1.4 チームワークを高める見積もりとは
- 2.1.5 プロダクトオーナーの「説明責任」と役割
- 2.2 スプリントプランニング:「共通理解」を行動計画に変える共同作業
- 2.2.1 スクラムの「計画」とウォーターフォールの「計画」
- 2.2.2 共同作業による「共通理解」が計画を支える
- 2.2.3 リファインメントをおろそかにした場合に起きる問題
- 2.2.4 チームワークを支える2つのイベント
- 2.3 デイリースクラム:計画を生き生きと動かす共同作業
- 2.3.1 デイリースクラムの目的と本質
- 2.3.2 共通理解を更新し、チームワークを強化する
- 2.3.3 報告会に陥ったデイリースクラムの問題
- 2.4 スプリントレビュー:共通理解を顧客に広げ、チームの未来を拓く
- 2.4.1 スプリントレビューは「承認会議」ではない
- 2.4.2 チームの共通理解がスプリントレビューの質を高める
- 2.4.3 顧客からのフィードバックがチームの未来を拓く
- 2.5 スプリントレトロスペクティブ:チーム自身を「強化」する共同作業
- 2.5.1 スプリントレトロスペクティブの目的と本質
- 2.5.2 共通理解と心理的安全性が深い議論を生む
- 2.5.3 継続的改善がチームを「最強の学習マシン」にする
- 2.6 スプリント:共同作業が織りなす「価値創造のサイクル」
- 2.6.1 スプリントはアジャイル開発の心臓である
- 2.6.2 共同作業が織りなす「共通理解のサイクル」
- 2.6.3 イベントの連鎖がチームの自律性を育む
- 2.7 本章のまとめ
- column 「 問題」と「課題」を混ぜていませんか?
第3章 チームワークで「アジリティ」を高める
- 3.1 フローとは何か
- 3.1.1 「フロー」の見える化:バリューストリームマップ
- 3.1.2 リードタイムとサイクルタイム
- 3.2 WIP制限でフローを高める
- 3.2.1 WIP制限とは
- 3.2.2 高速道路の例で見るフロー効率
- 3.3 スウォーミングでフローを加速させる
- 3.3.1 WIP制限の問題点とスウォーミング
- 3.3.2 スキルマッピングによる多能工化の促進
- 3.4 仕事の細分化によるフローの改善
- 3.4.1 バッチサイズ
- 3.4.2 「ロット生産」と「一個流し」
- 3.4.3 ウォーターフォールとアジャイル
- 3.4.4 プロダクトバックログの分割
- column ユーザーストーリーの分割方法
- 3.5 ボトルネックを見つけて改善する
- 3.5.1 システム全体の能力はボトルネックに制約される
- 3.5.2 「局所最適」に陥る罠
- 3.5.3 インプットをアウトプットに合わせて調整する
- 3.5.4 ボトルネックを補強し、フローを改善する
- 3.5.5 ボトルネックの探し方
- 3.6 サイクルタイムはどこまで短縮できたか
- 3.7 本章のまとめ
第4章 チームを支援する組織作り
- 4.1 アジャイル開発の成否は準備で決まる
- 4.2 まずは構造を疑おう
- 4.3 品質ゲートを取り払い、フローを加速しよう
- 4.3.1 品質ゲートがフローを阻害する理由
- 4.3.2 アジャイルにおける品質と安心の実現
- 4.4 チームメンバーは専任にしよう
- 4.4.1 兼務問題に見るチームワークとエンゲージメント
- 4.4.2 ワインバーグの表に見るコンテキストスイッチのムダ
- 4.4.3 共同作業の機会損失とアジリティの低下
- 4.5 階層型組織から脱却しよう
- 4.5.1 組織の「当たり前」を疑う
- 4.5.2 階層型組織の源流:テイラー主義という思想
- 4.5.3 現代に潜むテイラー主義の亡霊
- 4.5.4 階層がアジリティを蝕む3つの病
- 4.5.5 新たな組織OSへのアップデート
- 4.6 機能別組織から脱却しよう
- 4.6.1 なぜ今、組織の形を変える必要があるのか
- 4.6.2 機能別組織(サイロ型組織)の功罪
- 4.6.3 コミュニケーションの壁と部分最適の罠
- 4.6.4 意思決定の遅延とハンドオーバーの連鎖
- 4.6.5 コンウェイの法則と組織構造の弊害
- 4.7 機能横断型組織へ移行しよう
- 4.7.1 機能横断型組織とは何か
- 4.7.2 機能横断型組織への移行戦略
- 4.7.3 移行を阻む壁とそれを乗り越えるために
- 4.7.4 価値提供の流れを作るために
- column 最初の壁:パイロットチームが作れないとき、どうするか
- 4.8 フロー効率を阻害するチーム外への依存をなくそう
- 4.8.1 WIP増加と停滞のメカニズム
- 4.8.2 多能工化でフローを取り戻す
- 4.9 パッションを持ったプロダクトオーナーに権限を委譲しよう
- 4.9.1 なぜ管理職をPOにしてはいけないのか
- 4.9.2 「パッション」を基準に選び、「権限」を委譲する
- column 受託開発の光と影
- 4.10 アジャイルにおける管理職の役割の変化を知ろう
- 4.10.1 指示する人から、信頼で導くサーバントリーダーへ
- 4.10.2 チームを守り、障害物を取り除く交渉人へ
- 4.10.3 本質的な成果を定義し、ビジョンを示す戦略家へ
- 4.10.4 人の成長を支援し、キャリアを育むコーチへ
- 4.10.5 自ら学び、組織変革を推進するチェンジエージェントへ
- 4.11 スケールの幻想を超え、自己組織化しよう
- 4.11.1 スケールの罠と「デスケール」
- 4.11.2 逆コンウェイ戦略:デスケールを実現する道しるべ
- 4.11.3 理想の姿:「自己組織化された雁の群れ」
- 4.12 本章のまとめ
- column なぜ組織は変われないのか?:ラーマンの法則
第5章 チームを支援する組織運営
- 5.1 成果を求めるなら、まず関係の質から始めよう
- 5.1.1 成功循環モデルとは
- 5.1.2 【バッドサイクルの実例】「成功」の仮面を被った失敗:Zynga
- 5.1.3 【グッドサイクルの実例】人と人とのつながりが生む成功 ― スターバックス
- 5.1.4 アジャイルは「チームスポーツ」
- 5.2 「やらないこと」を最大化しよう
- 5.2.1 価値の8割は、2割の機能から生まれる(パレートの法則)
- 5.2.2 無限に増える仕事との向き合い方(パーキンソンの法則)
- 5.2.3 スクラムにおける実践:「価値」と「時間」の制約
- column アジャイルに効く認知バイアス集
- 5.3 スケジュールではなく、ゴールで計画しよう
- 5.3.1 「計画=スケジュール」という呪縛
- 5.3.2 アジャイルにおける「計画」:地図ではなく、コンパスを持つ
- 5.3.3 タスクの事前割り当てがチームワークを阻害する
- 5.4 成熟したチームを維持しよう
- 5.4.1 チームの成熟プロセス「タックマンモデル」
- 5.4.2 プロジェクト型開発とプロダクト型開発
- 5.4.3 視点の転換:「チームに仕事をアサインする」へ
- column 顧客価値の流れに沿うチーム:Stream-Aligned Team
- 5.5 全体最適の優先順位を考えよう
- 5.5.1 「全体最適」の欠如がリソースの無駄を生む
- 5.5.2 経営層の責務:価値の低い仕事をさせないこと
- 5.6 予算は経験主義で決めよう
- 5.6.1 「プロジェクト」ではなく「プロダクト」に予算を付ける
- 5.6.2 経験主義のアプローチを適用する
- 5.7 本章のまとめ
- column アジャイルの難しいところ
第6章 組織はチームをどう評価するか
- 6.1 ベロシティはチームのパフォーマンスを表さない
- 6.1.1 ベロシティとは何か
- 6.1.2 なぜベロシティをパフォーマンス指標にしてはいけないのか
- 6.2 KPIは少数を定点観測しよう
- 6.2.1 KPIは「指標」であって「目標」ではない
- 6.2.2 グッドハートの法則と、その罠に陥った企業事例
- 6.2.3 KPIの正しい使い方:定点観測による学習
- 6.3 アジャイルチームの予測可能性を知ろう
- 6.3.1 予測は「過去の実績」からのみ得られる
- 6.3.2 予測は「対話」と「調整」のためにある
- 6.4 「結果」をコントロールできるという幻想
- 6.4.1 「結果」はコントロールできない
- 6.4.2 フィードバックループによる脱却
- 6.4.3 アジャイル開発への応用
- 6.5 フローで測るチームと組織のパフォーマンス
- 6.5.1 サイクルタイムが映し出すチームの実力
- 6.5.2 リードタイムが示す価値創造能力と組織の問題
- 6.5.3 指標は「対話」の出発点
- 6.6 チームの現在地を知る自己評価
- 6.6.1 なぜ他人からの評価ではいけないのか
- 6.6.2 「わかったつもり」という成長の壁
- 6.6.3 ダニング・クルーガー効果からの脱却
- 6.6.4 メタ認知能力を鍛える2つのアプローチ
- column メタ認知獲得のための自己評価法
- 6.7 階層的な評価制度から脱却しよう
- 6.7.1 伝統的な評価制度がもたらす弊害
- 6.7.2 事例1:Spotify ― 報酬の「構造」を自己決定する
- 6.7.3 事例2:Whole Foods Market ― アジャイルな文化と徹底した透明性
- 6.7.4 事例3:チームによる給与決定(TSS)
- 6.7.5 アジャイルな制度改革のススメ:小さく始めて育てる
- 6.7.6 評価制度は組織文化を映す鏡
- 6.8 本章のまとめ
第7章 変化を乗りこなし、価値を創造し続けるために
- 7.1 なぜ今、「チームを支える組織」が必要なのか?
- 7.2 「強いチーム」の本質:共同作業が織りなす学習サイクル
- 7.3 流れを制するものがアジリティを制す:フロー効率という革命
- 7.4 チームを解き放つ組織デザイン:構造が文化を創る
- 7.5 リーダーシップの変革:管理から支援へ
- 7.6 測るべきは価値であり、成長である:評価という対話
- 7.7 終わりなき旅へ:学習する組織への第一歩
プロフィール
松永広明
LSA CONSULTiNG株式会社代表取締役。ソニー株式会社、株式会社豆蔵、日本アイ・ビー・エム株式会社、アフラック生命保険株式会社、MSD株式会社などを経て独立。アジャイル歴は2011年頃から。
15年におよぶスクラムマスターやアジャイルコーチの経験を活かし、2023年より現職。チームの自己組織化と、それを支える組織づくりを通じた企業の変革を支援している。
