「良い音」の秘密 録音エンジニアの証言で紐解く、音楽を伝える技術
- 渋谷ゆう子 著
- 定価
- 1,980円(本体1,800円+税10%)
- 発売日
- 2026.9.9
- 判型
- 四六
- 頁数
- 288ページ
- ISBN
- 978-4-297-15800-2 978-4-297-15801-9
サポート情報
概要
高級オーディオを揃えるだけでは「良い音」は聞こえない――。
「音のバランスが悪いのでは?」
「ジャズバーのような臨場感がない」
「録音の音って"ありのまま"なんじゃないの?」
「アナログレコードのほうが気持ちよく聞こえる気がする」
「打ち込みは生演奏の劣化版でしょ?」
etc.
音楽を愛し、音質にこだわる中でいただくであろう「どうしてこんな風に聞こえるのか?」という疑問の数々。その答えは「録音」の現場にあるかもしれません。
中心となるパートは何か? マイクをどこに置くか? 機材は何を使うのか? 映像と音源はどうリンクさせるのか? AIにいかに向き合うべきか......。
数々のコンサート運営や音源制作にたずさわる音楽プロデューサーが、一流エンジニアへのインタビューを通して、音が生まれる瞬間の哲学に迫ります。
音楽の聴こえ方が変わる、「録音」の世界を掘り下げる一冊。
【本書に登場するエンジニア】
- 内沼映二
- 高田英男
- 深田晃
- 北村勝敏
- 鈴木浩二
- 房野哲士
- 森﨑雅人
- 入交英雄
- 安田博城
こんな方にオススメ
- 制作の裏側に興味がある音楽ファン
- 録音について知りたい人
- 「良い音」にこだわりがある人
目次
第一章 「良い音」の原点
- そもそも「良い音」とは何か
- 録音メディアの幕開けと技術革新
- SP盤とアコースティック録音の時代
- レコーディング・エンジニアの登場
- ビクター社の躍進とニッパー
- 日本のレコード産業の動向
- 直接音を刻むことの魅力と限界
- 磁気テープが可能にした「編集」
第二章 「音は時代を映す鏡」――内沼映二
- 日本の録音文化の象徴・内沼映二
- 録音家としての原風景
- 筒美京平との出会い
- 「音楽そのものが変わった」24ch化
- 世界に先んじた日本のデジタル録音技術
- ミキシング・コンソールとスタジオが変えた音楽の景色
- DAWの登場「一気に便利になった。一方で……」
- 音響的なスペックではなく、音楽を人がどう感じるか
- 移り変わる音楽の世界を貫く録音の倫理
第三章 スタジオ録音の思考――高田英男
- 録音は「鳴っている音をそのまま録る」仕事ではない
- 「内沼さんが使うと、同じコンソールでも音が全然違う」
- ホールでは得られない音がスタジオにはある
- 音楽の重心を決めるミキシング
- スタジオとは「必要な音を選べる場所」
- エンジニアの仕事と必要な能力
- 現実を超えた音を創作する
- 人の耳の判断によって音楽は生まれる
- コラム:エンジニアの耳
第四章 ホール録音の哲学――深田晃
- 個性豊かなホールの特徴を掴む
- 深田晃の来歴と哲学
- ホール録音におけるマイキング
- 吊り方式の良さと厳しさ
- 深田ツリーという「考え方」
- 全体を捉える視点、重心を探る視点
- 「自然な音」を整え続ける
- コラム:オーケストラ録音で、最後に判断するのは誰か
第五章 アナログとデジタル――北村勝敏
- アナログはデジタルより「良い」のか
- 現代の録音はアナログとデジタルが混じり合っている
- アナログは音に「痕跡」を残す
- 「アナログの良さ」の正体
- アナログレコードの魅力と復活
- アナログレコード制作の最後を担うカッティング・エンジニア
- カッティングとは何か
- 古い盤にだけ刻まれるもの
- 最後の現実主義者
第六章 録音しないで作る音楽――鈴木浩二・房野哲士・森﨑雅人
- エンジニアへの誤解
- 人工的な音の意図
- マスタリングとは何か
- 他人の耳を介して戻ってくる音
- 保存と改造の間にあるリマスタリング
- 「どう聴かれるか」と「どう届けたいか」を考える
- 反復のなかで輪郭を蓄積させる
- 演奏の外側にある聴き手への回路
- コラム:音を言葉で注文すること
第七章 空間を録音する――入交英雄
- 録音は空間の気配を残せるか
- 大阪万博での体験と衝撃
- ステレオの洗練と限界
- 音楽の感動をどう伝えるか
- 空間をキャプチャする具体的な実践
- 広がる立体音響の入口
- 重要なのは“揺らぎ”と“気配”
- 音楽が空間を背負う難しさ
第八章 音楽と映像――安田博城
- 音楽は映像が前提の時代に
- 画面や視線に対する新たな責任
- 体験を設計する機材と判断力
- 「見えるもの」と「聞こえるもの」のズレ
- 多様化する映像配信と複雑化する条件
- 会場から映像作品への翻訳
第九章 AIが作る音楽とその未来
- 音を作るのは誰か、判断するのは誰か
- AIには「意味」がない
- 「もっともらしい」ゆえの難しさ
- 制作工程に入り込むAI技術の例
- 選択の集積が強度のある「良い音」を生む
- 権利と透明性
- メタデータとAI時代のエンジニアの役割
- AIが重くする人間の責任
- 選び取ること、捨てること、責任を持つこと
プロフィール
渋谷ゆう子
香川県出身。大妻女子大学卒。音楽プロデューサー。株式会社ノモス代表取締役。音源制作やコンサート企画運営、音響機器メーカーの新製品開発のアドバイスなどを行う。特にクラシック音楽を中心とした高音質な音源制作に定評がある。雑誌『音楽の友』での連載、analog、オーディオアクセサリー誌、プレジデント、ウートピ、Beyondなどウェブコラムにも寄稿多数。著書に『ウィーン・フィルの哲学~至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(NHK出版、2023)、『名曲の裏側:クラシック音楽家のヤバすぎる人生』(ポプラ社、2023)、『生活はクラシック音楽でできている』(笠間書院、2024)、『揺らぐ日本のクラシック:歴史から問う音楽ビジネスの未来』(NHK出版、2025)。
