河岸段丘の謎 大地は海が削った
- 高橋雅紀 著
- 定価
- 3,960円(本体3,600円+税10%)
- 発売日
- 2026.10.29
- 判型
- A5
- 頁数
- 416ページ
- ISBN
- 978-4-297-15985-6
サポート情報
概要
川の流れが、大地を削り、地形をつくる――その“常識”は、本当なのか?
本書は、揺るぎなく信じられてきた地形学の定説に疑問を投げかけ、その根幹に潜む大きな謎へ読者を誘う、地形ミステリーシリーズ第4弾。今回迫るのは、川に沿って続く階段状の不思議な地形、『河岸段丘』です。
河岸段丘をつくるのは、運ばれた土砂が平らに積もる「堆積」と、川底が深く削られる「侵食」。それが地殻変動や気候の変化によって何度も繰り返すことで、階段状の地形が現れると考えられています。川のそばにあるものなので、「堆積」も「侵食」も川の仕業。それを疑う人は、一人もいないでしょう。
一方、同じように海岸に現れる階段状の地形を「海成段丘」といいます。こちらはその名の通り、海が成因とされる段丘ですが、場所が異なるだけで、その様子は河岸段丘とそっくりです。
ここで一つの疑問が浮かびます。
『河岸段丘』をつくったのは、本当に川なのか?
100年続く地形学の歴史の中で、誰も疑わなかった、河岸段丘の“河成説”に疑問を突きつけ、さらに地形をつくった真犯人が本当に川なのかを問い直す、待望のシリーズ最新作です。
こんな方にオススメ
- 地形マニア
- 地図や地形に関心のある方
- 登山が好きな方
- 自然の謎解きを疑似体験したい方
目次
旅の準備
- 河岸段丘が分からない
- 河岸段丘とは河成段丘のこと
- 場所の違いが成因の違い?
- 〝真犯人〟は川? それとも海?
- 川が〝犯人〟とする根拠は?
- オンとオフは気候変動のおかげ
- 階段地形は隆起のおかげ
- 行き詰まっている河成説
- 昔はできたけれど……
- あるべき所にない
- 15分で降参
- テーブルをつくったのは誰?
第1日 不可解な河岸段丘
- 修行の修士論文
- 淘汰の悪い礫層の不思議
- 源流域の礫層の謎
- 秘境駅に隣接する〝ガチ河岸段丘〟
- もはや安易に口に出せない
- 分水嶺の横の厚い礫層
- ときには視野を狭めて集中!
- 段丘面で合流しない川の不思議
- 河岸段丘は〝誤認逮捕〟?
- 削って溜めて、また削って?
- コラム vol.1「青紫色」
- コラム vol.2「不安」
第2日 原点は秩父盆地
- 秩父盆地は段丘の宝庫
- 背面になりかけている尾田蒔面
- まな板の上の鯉
- 段丘の下を覗きたい
- 荒川が運んだの?
- さはやかに……
- つくづくと……
- 札所を導いた地形の違和感
- 自然がつくったテーマパーク
- 〝雲形侵食〟も捨てがたい
- コラム vol.3「錯視」
- コラム vol.4「研究者」
第3日 原点は海
- 原点はお台場
- 石垣に刻まれた海の痕跡
- 海がつくった天然の〝ひさし〟
- 断層洞窟は誰が削った?
- 荒川が削ったといわれているけれど……
- 山奥には不釣り合いな海の景色
- 違和感が札所をつくった
- まだまだあります海の痕跡
- タイムマシーンがなくとも……
- コラム vol.5「テーマ」
- コラム vol.6「古典」
第4日 甌穴は語る
- 誰も疑わない甌穴の成因
- 甌穴は川がつくった?
- 甌穴の底がヒント
- 河川の狭窄部に多い甌穴
- 海食台は甌穴の産物
- 日本一?の野上の甌穴
- 〝洗濯槽〟が回らない!
- 〝藍より青い〟四万ブルー
- 車窓から見つけた海の痕跡
- 忍術でもつくれない
- 海の痕跡に再会
- 懐手して……
- 隆起があれば問題は解決
- いま見ているのは最後の掘削工事
- 海が削った敷居と鴨居
- 律儀な仕事は誰のおかげ?
- 誰も並んでいない
- 掘っているのに掘れてない?
- 川は大地を下刻しない
- そこに川が流れているから……
- コラム vol.7「宇宙見物」
第5日 南国土佐をあとにして
- 36年ぶりの再会
- 気持ち悪いタフォニ
- 背中合わせの山と海
- ご推察の夫婦岩
- あこがれは孤高の孀婦岩
- 孤高が二つで夫婦岩
- 海岸で見つけた未来の天然記念物
- 老老介護の夫婦岩
- 山を見て海を感じ、海を見て山を想う
- ニッキの味は手結の味
第6日 地形の魅力度ランキング
- ちょっと言い訳
- 大子町周辺の地質巡検
- 海が削り出した断層破砕帯
- 地質の違いが滝をつくった
- 〝裏見の滝〟は海の痕跡?
- 日本一の純白の羽衣
- 気になるのは、やはり滝壺
- 漆黒の巨石帯
- 巨石が語る海の記憶
- ひとりぼっちの夫婦岩
- 地質学者の直感
- 海の景色を〝夢想〟滝
- 小滝が語る海の記憶
- 原点は、やはり海
- 小さな小さな海の痕跡
- 観
- 光スポットは海のおかげ
- 石仏は海のお宿に
- そこかしこに海の痕跡
- 八百万神がくつろぐお宿
- コラム vol.8「卵」
第7日 滝は海がつくった
- 確信した轟の滝
- 〝滝壺3兄弟♪〟
- 誰も〝椅子〟に座っていない
- 海がつくって山に運ぶ
- 海と山の滝くらべ
- 難読の滝も海の香り
- 高さ133mの飛び込み台
- 洗面器から溢れる那智の滝
- プレイフェアの法則が当てはまらない
- 大滝は海と隆起の共同作品
- 断崖は誰がつくった?
- 断崖は海がつくった
- サンタクロースの白ひげ
- 駆け出しの地質研究者
- 差別的侵食というのは容易いけれど……
- 白いフレアスカートは海からの贈り物
- 北向きでなければ……
- 山奥に残された海岸の城壁?
- 奇妙な崖は、海がつくった?
- 田んぼの中のナイアガラ
- コラム vol.9「目線」
- コラム vol.10「ベクトル」
第8日 日本一美しい河岸段丘
- 本当に納得しているのですか?
- 見惚れてしまう段丘地形
- 古沼田湖の形成と河岸段丘の成因
- 赤色立体地図が世界を変えた
- 利根川を堰き止めた天然ダム?
- 厚さ4㎞のダムが決壊?
- 薄くても決壊しない天然のダム
- 溢れるのは水だけ
- 利根川を見下ろすローソク岩
- 滝の裏には海の痕跡
- 〝鍵〟は隆起速度
- 違和感しかない沼田の河岸段丘
- 礫は語る
- 離れてみると気づくこと
- 〝器〟に刻まれた海の痕跡
- 河岸のタフォニが意味すること
- 百害あって……
- 段丘は続くよ、どこまでも♪
- 合流したら分流はしない
- 環流丘陵は海の痕跡
- 甌穴は海の痕跡
- 浮島は川がつくった島?
- 浮島は本当に島だった!
- 〝浮島〟は結構珍しい
- 違和感が人々を招く
- 海と山をつなぐのは橋
- 川ですか? 海でしょ!
旅のおわりに
- 地学実験で調べた思い出の段丘
- 謎を解く〝鍵〟は段丘の隣
- 地形の逆転は海の仕業
- 丘陵は海がつくった
- 拍子抜けではなかった日本平
- 段丘は海がつくった
- 至る所に地形の逆転
- 幻のカブラン階
- 合流していない川の不思議
- 貫通前だから貫前神社?
- この場所にないのは海だけ
- 言葉の呪縛から逃れるために
感謝
- 信じること
- 振り返ればあのとき
- 大地質学者にあこがれて
- 一握りの目利きのために
- 論理に厳しい地球物理学者
- 性別も年齢も関係ない
- 好きで孤独な彗星を選んだのですが……
3周遅れの……
- 日本一の段丘は誰がつくった?
- バトンは地質学から地形学へ
プロフィール
高橋雅紀
1962年、群馬県前橋市生まれ。1990年に東北大学大学院理学研究科博士課程を修了後、日本学術振興会特別研究員および科学技術特別研究員を経たのち、1992年に通商産業省(現経済産業省)工業技術院地質調査所(現産総研)に入所。
専門は地質学、テクトニクス、層序学。大学の卒業研究以来、関東地方の地質を調べ日本列島の成り立ちを研究。
NHKスペシャル「列島誕生ジオ・ジャパン」や「ジオ・ジャパン絶景100の旅」のほか、ブラタモリ「秩父」「長瀞」「下関」「日本の岩石SP」「つくば」「東京湾」「前橋」「世界の絶景SP」「行田」「長岡」に出演。
著書に『分水嶺の謎 峠は海から生まれた』、『準平原の謎 盆地は海から生まれた』、『蛇行河川の謎 谷は海がつくった』(技術評論社)のほか、『日本地方地質誌3 関東地方』(朝倉書店、分担)や『日本海の拡大と伊豆弧の衝突―神奈川の大地の生い立ち―』(有隣堂、分担)、『トコトンやさしい地質の本』(B&Tブックス日刊工業新聞社、分担)など。
好きな言葉は「放牧、放任、放し飼い」、座右の銘は「退路を断たないと、次の扉は開かない」。いつも心がけている自身の矜持は「初代で一代限り」。