最初に『かんたんプログラミング Visual Basic 基礎編』が出版されたとき、その対応バージョンは4.0でした。その後、Visual Basic 5.0に対応した「基礎編」「コントロール・関数編」「応用編」という3部作が誕生し、さらには、Visual Basic 6.0対応の3部作、Visual Basic .NET対応の「基礎編」「コントロール・関数編」の2部作と、いずれもVBの学習書として大勢の方に好評をいただいております。
Visual Basic 2005対応の書籍が待たれる中、『かんたんプログラミング Visual Basic』シリーズの著者、川口輝久氏に、Visual Basicの特徴や最新バージョンVisual Basic 2005の学習のコツなどを、寄稿していただきました。
VBならでは
ほかの言語と比べて、VBほど扱いやすい言語はないでしょう。Cのようなポインタに悩まされることもなく、メモリ管理を意識せずに生産できるのは、VBならではといえるでしょう。
バリバリのプログラマの中には、VBのような簡単すぎる言語は覚えるに値しない、VBの開発者はプログラマではない、という意見も多数見受けられます。
ですが、世界中の多くのユーザーに愛用されているのも事実です。初心者でも親しみやすく、それでいて本格的なソフトが開発できますし、短期間で開発できるVBは、ほかの言語よりも生産性が格段に高いからです。
開発されたソフトを使うエンドユーザーから見れば、その製品が何の言語で開発されたのかは、さして重要なことではありません。それよりも、開発コストが安く、短期間で開発できる使い勝手のよいソフトであることが重要です。まさにVBは、こうした需要に対応できる言語であると思います。VB開発者も、立派なプログラマです。自身を持っていいと思います。
コーディングの重要性
VBは扱いやすいがゆえに、コーディングの書法を度外視して、コードをダラダラとスパゲティのように記述してしまうユーザーが多いような気がします。アルゴリズムという考えが、VBユーザーにあまり浸透していない節もあるようです。
ソフトは一度作ればそれで終わり、というわけにはいきません。必ずバグは潜んでいるものですし、エンドユーザーからの改善や要望に対応して、細かな修正を随時行っていかなければなりません。
メンテナンスなどにすばやく対応できるよう、誰が見てもわかりやすい、読みやすいコードを記述するように心がけることが重要だと思います。規約や条文などのような難しい言葉でつづられた文章は、見ただけでゲンナリしてきますよね。コーディングもまた、文章と一緒だと思います。文法や命令を覚えることに終始せず、コーディングの仕方にも目を向けてみましょう。
オブジェクト指向言語への進化
ところでVBは、2002年のVisual Basic .NETでオブジェクト指向言語として進化しました。いままでと勝手の違うVBに、多くのユーザーが戸惑い、VB6で停滞している開発者がかなりの数を占めていると思われます。
VBは企業ユーザーが多いため、従来のVBで開発したソフトの資産を、簡単に新バージョンに移行できないという問題もあるかとは思いますが、それにしても、移行のスピードが遅いような気がします。最新バージョンのVB2005は、無償で配布されているExpress Editionがあります。ぜひ、マイクロソフト社のホームページからダウンロードして、新しいVBに一度触れてみてください。
VB2005では、.NET Frameworkで提供されるクラスライブラリを使って開発します。
クラスとはオブジェクトの設計図です。たとえば、VB6では、フォームの画面にボタンなどを貼り付け、クリックなどのイベントに即したコードを記述しましたが、VB2005でも基本的には一緒です。ただ、ここにクラスという概念が入り込みます。フォーム(Form)というクラスは、フォームのデザインがこうで、動きはこうする、といった設計図がコードで記述されます。
文字列もまたオブジェクトです。たとえば、"abc" という文字列の文字数は、VB6では、
Len("abc")
というLen関数でで取得できました。一方のVB2005では、StringクラスのLengthプロパティを使い、
"abc".Length
で取得します。「オブジェクト.プロパティ」というVB6でおなじみの構文が、文字列に対しても行えるようになります。もちろん、従来どおりのLen関数を使って記述することもできますので安心してください。
VB2005の習得の裏技
VB2005は、VB6の関数などが使えるとはいうものの、やはり覚えなおさなければならないことも多々あります。VB6なら簡単に作れるのに、VB2005ではどう作ればわからない、というときのために、VB6とVB2005の両方を使うことをお勧めします。
両者のソフトは同じコンピュータにそれぞれインストールすることができます。そこで、まずVB6で作りたいプログラムを作成し、これを保存しましょう。VB2005では、VB6のプログラムを読み込む際、VB2005向けに変換してくれます。変換されたコードを覗いてみれば、VB2005でどのように作ればいいのかわかると思います。
VB2005を習得するには、やや時間がかかるかもしれませんが、これからもVBは世界中で愛され続けることは間違いないと思います。いまはVB2005の必要性がなくても、学習しておけば、必ず報われるときがきますので、あせらずにオブジェクト指向言語として生まれ変わったVB2005を体験してみてください。