弊社より刊行中の『おうちで楽しむ にほんの行事』で、自身の体験してきた年中行事や季節折々の遊びをイラストをまじえて「気軽に楽しめるように」と、綴られた広田千悦子さん。
4月下旬、毎年恒例のオープンギャラリー形式の展覧会「うみそら日和」を訪ねました。
オープンギャラリーの会場となるのは、神奈川県・秋谷の自宅。
海のそばでありながら、山の合間には少しはいっていくご自宅は、たくさんの草花が咲き、土の感触を確かめて大通りから少し歩いたところにあります。
急な坂道をのぼり、玄関が見えてくると、「こんにちはー」とお二人の笑顔に迎えられます。
入り口では、近所の方がつくられた(すでに多くのファンもいるそう)、ミカンのピールチョコやしろごまクッキーをつまめるという、心くばりも嬉しい。
さて、今回の展示物は、精力的に創作活動を行う千悦子さんがつくる独特のシーサー、おじぞう天使、器、ポストカード、コースターなど、さまざまな手作り作品がところせましと並べられています。
なかでも目をひくのは、器。飾ることでなく、使うことを第一に考えられているため、どれも料理や、花が映える素朴な印象。温かみを持ちながら、主張しすぎない。使う人のイメージでその良さを引き出せる器が多数。多くを語らず、けれども存在感がある、細かな作りに妥協しない千悦子さんの姿を映し出すかのよう。
「千悦子さんのつくる器はどれを組み合わせても使っても合う」と話される人も。
春の花をあしらって、季節を味わう提案も
長く作り続けられているおじぞう天使
隣の部屋では、夫・行正さんの世界中で撮影された海や風景写真の展示、家族のサンをモチーフとした手作り作品を見ることができます。
回を重ねるたびに、多くのお客さんが足を運んでくださるそう。
来訪される方は、それぞれの作品を手に取り、じっくりと眺め、行正さんと千悦子さんに声をかけられます。お二人は、気さくに応じ、和やかに会話されます。
普段から、そのような「対話」をとても大切にされていて、世間話や社会の話題から話はふくらみ、いつのまにか座りこむことに。
「親の背中を見て子どもは成長するもの」といわれますが、ふと思うことや何気なく考えることをしっかりと伝えるお二人をみていると、対話や会話、コミュニケーションが何より大事で、当たり前ながらそこがしっかりできていることこそが、風通しのいい生活を送ることにつながるのだなとつくづく感じます。
接するごとに素敵な空気をもつ方たちだと感じるとともに、親戚のうちに遊びにきたような感覚になってしまい、皆さんついつい長く滞在してしまうことになる不思議な展覧会。
広田千悦子さんと行正さん
千悦子さんは、「またこれから自身も器の勉強や行事についても学んでいきたい」と話してくださいました。
執筆予定の次回作にも乞うご期待。