情報社会での「生きる力」

自動販売機とコンピュータ

みなさん、飲料の自動販売機は使えますか? では、鉄道の自動券売機はどうでしょう?

どちらも多くの人が、⁠どの切符を買えばいいのかというような問題は別として)同じように使えるのではないでしょうか。自動販売機にも券売機にもいろいろな種類がありますが、どれも、お金を入れて、ボタンを押し、商品を受け取るという、基本的な概念は一緒です。個々の機械ごとに異なるレイアウトについての戸惑いはあっても、どうしたらいいのかまったく見当がつかないということはないでしょう。

自動販売機という概念も、考えてみれば不思議なもので、学習がなければ理解できないものです。お金をよくわからない箱に入れたら、入れたお金とはまったく別のものが出てくるということに対してなんの不安も感じないのは、自動販売機についての基本的な知識を有しているからこそでしょう。

コンピュータやインターネットについても同じことがいえます。基本的な知識がない状態で接したとすると、まったくもって不可解な存在ですよね。

変わるものと変わらないもの

この記事を読んでいるみなさんは、パソコンはお使いですよね。でも、とりあえず目の前の目的だけ、たとえば特定のソフトの使い方だったり、メールやホームページの見方だけは何とかなっても、実はさっぱり見当もついていなくて、びくびく使っていたりしませんか?

普段使っているOSやソフトも、ずっと同じままとは限りません。たとえばWord2007みたいにがらりと変わってしまうこともあります。

図1 Word2003とWord2007
図1 Word2003とWord2007

普段使っているパソコンじゃないから、普段使っているソフトじゃないから使い方がわかりませんでは困ってしまいますよね。

とはいえ、普通に文字を入力してちょっとした装飾をしている程度であれば、目的としていることが変わらなければそのための機能にも変わりはないはずです。たとえば文字を左右中央に置きたい場合、センタリング(中央揃え)機能を使うということはどの製品でも同じでしょう。この知識はパソコンやソフトが変わっても変わりません。さらには、これらのソフトが動作する基本的なルールや考え方もまた、パソコンやソフトが変わっても大きく変わることがないものです。

情報社会を生きるために

現代では、コンピュータやインターネットと関わらずに暮らしていくことがだんだんと難しくなってきています。否応なくさまざまな情報やサービスが生活に入り込んできます。たとえば有人の窓口がコンピュータの自動受付になったりすることも増えてきています。

ビデオの予約はできなくても生きていくうえでなんの支障もありませんが、これらの情報・サービスは、うまく対処していけないと実生活に影響を及ぼしてしまうようなものもあるでしょう。またこういったサービスと関係がなくても、コンピュータやインターネットの利用についての基礎的な知識を有していれば、フィッシングやなりすまし、ワンクリックなどの詐欺や、ウィルス、スパイウェアなどにあっても「おかしい」と気がつく確率が高くなります。次から次へと登場する新しいサービスやソフトウェアにも、より低いハードルで対応していけるでしょう。

現在の情報化社会を生きていくためには、これらに対処するための基本的な能力、情報リテラシーの習得が必要です。これらの包括的な知識を駆使する能力こそ、現代を生きる力といえるのではないでしょうか。