1956年に日本オーディオ協会から「アマチュアオーディオハンドブック」が発行され、半世紀が経ちました。1950年代後半の日本はまだまだ高度経済成長が始まったばかりで、ラジオを始め、オーディオをやりたくても自作オーディオが幅を利かせていました。そのため、1956年に発行された「アマチュアオーディオハンドブック」は、アマチュア自作オーディオを強く意識したものになっています。
1956年から半世紀経った今、アマチュアオーディオの定義は大きく変わりました。内外の名だたるオーディオメーカーの機器を購入し、どのように使いこなすのかがアマチュアオーディオの中心課題となっています。
またオーディオPCをはじめ、今までの再生側のオーディオシーンには登場してこなかった新しいコンポーネントについても、その考え方や構成について詳しく取り上げました。
「オーディオの心」を伝える人がいなくなった
オーディオがブームとして盛んだった1990年以前は、名機が輩出され、オーディオ店にも心ある店員がたくさんいました。
その人たちやオーディオ専門店がなくなってきている今、「オーディオの使いこなし」や、伝えるべき「心がけ」が消え去ろうとしています。昔は、「オーディオの心」を伝える人が多く、そういった人たちの出会いの中で、師匠と呼べる人を見つけ、時に優しく、時に厳しく、教えられたものです。
写真 GARRARD 301(左)。Project-2(右)
セッティングを見直そう!
「オーディオの心」の中心に、セッティングを基本とする使いこなしがあります。その使いこなししだいで、システムの100%以上の能力も引き出すことができます。
セッティングさえうまくできれば、何も考えないでおいただけのシステムと比較にならない、すばらしい音楽を奏でるようになります。
写真 FR 66S + SAEC 506/30
オーディオ機器を買い換える前に、ケーブルを物色する前に、やるべきことはたくさんあります。しかもセッティングの工夫は、お金がほとんど掛かりません。やらない手はないのです。
セッティングと一言でいっても、コンポーネント(構成要素、アンプやプレーヤーなどの単品のこと)ごとに、多種多様です。それら1つずつ見直すことによって新しい発見に出会えるかもしれません。
さらに興味を持った方は『原点回帰オーディオセッティング再入門~アナログからオーデイォPCまで、あなたの常識は通用しない?』をご覧ください。
本書は、3つのパート構成されていますから、Part 3のオーディオセッティングのところからハンドブック的に読んでいただいても構いませんし、Part 1の哲学的オーディオ論から、一気に頂上を目指す直登コースでお読みいただいても良いでしょう。アナログオーディオと、デジタルオーディオの優劣」に対して、筆者なりの回答を試みたPart2「アナログオーディオとデジタルオーディオ」も、オーディオの全体像を理解するうえで、助けになると思います。