太陽からの光と風 -意外と知らない?太陽と地球の関係

天体としてみた太陽はごくありふれた星です。太陽の誕生は、約46億年前とされていますが、その質量などから推測するに、あと50億年ぐらいは輝き続けると考えられています。太陽は、その生涯の末期には、いわゆる赤色巨星と呼ばれる星になり、そのころには、私たちの住む地球も今とはまったく違った環境となっているでしょう。

地球が今の姿であること、地上にさまざまな生物が繁栄していること、そして多くの人間にとって快適な生存環境が実現していることを考えるにつけ、地球にとって太陽は特別な存在といえるでしょう。太陽からほどよい距離に、だいたい太陽と同じ約46億年前に誕生したと考えられている地球にとって、それはまさに幸運であったとしかいいようがありません。太陽との距離がほどよいところにあり、適度な温度、大気、水が得られたからこそ、地球は生命の誕生と繁栄の可能な環境を得られたというわけです。そもそも、太陽の誕生時に、その原始太陽を取り巻くガスから地球も誕生したと考えれば、太陽なしに地球の存在はなかったということになります。46億年という長い歴史を積み重ねてきた太陽と地球の微妙な関係に、私たち人間も大きな恩恵をこうむっているといえるでしょう。

一方で、科学や技術の進展、特に社会インフラの高度化・多様化が進む中で、衛星通信や測位技術等、これまでは考えられなかった太陽による影響が問題視されていることも事実です。地上の生き物や人間に恵みを与える太陽も、人間が宇宙へ進出しようとするシーンにおいては、有害な放射線などによって人間の生存や人工衛星などの宇宙システムの安定な動作を脅かす存在になることはあまり知られていないことかもしれません。

本書では、天体としての太陽、最新の科学が明らかにした太陽と地球の成り立ちはもとより、太陽が駆動する地球環境や植生、さらには人間の体のサイクル(生体時計)についても太陽との関係を軸にみていきます。また、太陽が社会インフラに与える影響についてもとりあげます。社会インフラの高度化や、宇宙利用の高度化に伴い近年急速に注目されている分野で、宇宙天気という言葉も少しずつポピュラーになってきています。本書をきっかけに、これまであまり意識していなかったかもしれない太陽のこと、そして太陽と地球の関係を感じとってみてください。