「現代人は生まれる前から汚染されている」
こう聞いて、皆さんはどう思うでしょう? 「生まれて数年も経てば仕方ないけど、出産前からは……」と思う方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に生まれてくる赤ちゃんのへその緒を調べてみると、いろんな環境汚染物質が検出されます。
検出される物質で最も有名なのはダイオキシン類。その検出率は、なんと100%! カネミ油症事件で有名なPCB類、環境ホルモンで脚光を浴びたトリブチルスズなども、100%見つかります。
なぜ、生まれたての赤ちゃんから、こんな汚染物質が検出されるのでしょう?
それは、環境中に排出された汚染物質が魚や動物の体内に蓄積し、それが巡り巡って人間の身体を汚染し、さらにお母さんの体内の汚染物質が、へその緒を通じて赤ちゃんに移行しているからです。
現代社会に生きる限り、私たちは環境汚染物質から逃れることはできないのです。環境汚染物質の体への影響は?
環境汚染物質には、モロに影響があるものがあります。水俣病で有名な有機水銀は、その典型例です。しかし、最近ではこういった“モロ”に影響が現れる物質には厳しい規制が設けられているため、公害みたいな事態が発生する可能性は少ないでしょう。
では、今一番懸念されていることは、一体何でしょうか?
それは、未来の世代である子供や孫への影響です。最近、化学物質の影響には、数年後、数十年後、もしくは未だ存在しない世代になって初めて影響をおよぼずメカニズムがある可能性がわかってきました。「最近の子供はじっと座っていられない」「最近の人はすぐキレる」といった現象は、もしかしたらその人がまだお腹の中にいたころに曝露した環境汚染物質の影響かもしれないのです。
本書は、受精の瞬間から始まる人の一生のうち、胎児期から小児期までがいかに重要かを医学的に解説し、環境汚染がこの時期に起こった場合にどのような影響が起こり得るのかを、できるだけわかりやすく説明しようと試みています。
この本を手に取った方が、まずは事実を知り、その上で未来世代のためにどう行動すべきか、といったことを考えてくれれば、これほど嬉しいことはありません。