Google Androidの誕生
Googleから2007年11月12日にAndroid SDKが発表されました。当時話題だったGoogle携帯電話ではなく「携帯電話で動作するソフトウェアプラットフォーム」だったのです! しかも、専用の言語ではなく、ITエンジニア業界では普遍的なJava言語で開発できてしまうのです。開発環境はEclipseに専用プラグインをインストールするという簡便さです。腕に覚えがあるJavaプログラマならば携帯電話のソフトウェア開発が可能になるわけです。Androidに付属するパソコンで動くエミュレータがあれば、携帯電話メーカ以外の人間でも開発できてしまうというオープンさです。携帯電話業界の関係者は驚愕しました。
なぜAndroidか?
Android(アンドロイド)という名前の由来は、そのものズバリで人間型ロボットの意です。携帯電話は人間に最も身近なコンピュータゆえ、友達ロボットになってほしい、というのがコンセプトのようです(イラストのようにユーモラスなキャラを発表しています)。
Google Android のマスコット。Goodies君。ずんぐりしたロボットです。
Google Androidの仕組み
実は、新しい技術を使っていないのが大きな特徴といえます。まず携帯電話側を説明すると、OSはリアルタイムLinux2.6を利用しています。そしてその上にライブラリと、Googleが独自開発したDalvik VM(ダルビック仮想マシン)があり、さらにフレームワークがあり、その上で電話番号帳やWebブラウザなどのアプリが載ります。
Google Androidのエミュレータ実行画面
(画面サイズもQVGA 以外に複数用意)
一方、開発をするPC側ではQEMUエミュレータの上にLinuxカーネルが載り、Android環境を作り上げる形になっています。実行結果やデバッグをするにはemulaterアプリが、携帯電話の外観と機能をシミュレーションしてくれます。実際、PC側にGoogle Androidをインストールすれば、誰でもデモプログラムを動かして、まるでアップルのiPhoneのようなGUIを体験できてしまいます(右図)。
生まれたばかりの技術
iモードの成功以降、日本の携帯電話メーカ各社はWebブラウザやGPSナビなど機能の充実にシノギを削ってきました。本書の著者も開発者の一人なのですが、メーカの立場からするとまだまだ実用段階とは言いがたいレベルなのだそうです。まだ生まれたばかりの新技術ですから仕方がないところです。しかし、Google Androidは、携帯電話ではメジャーなMIDPとJavaMEを使わず、独自のJava実行環境のDalvik VMを使っています。これはJava SEの機能に似ているVMなので、Webプログラミングや業務アプリをJavaで書いていたプログラマたちが活躍できてしまうのです。Googleは賞金総額1000万ドルのアプリケーションコンテストを開催しました。これには70カ国から1788件の応募がありました。その熱意が伺えます。
Google Androidで何ができるのか?
本書は、Androidと従来の携帯電話との位置づけを、技術的側面と市場的な側面から説明しました。さらに、できるだけ広い視点からAndroidの果たす役割や、携帯電話市場の中で占める役割が見えるように心がけました。
インターネットの覇者Googleがリリースする製品ですから、何か権謀術策があるのではないかと疑う方もいます。しかし、オープンソースで携帯電話のソフトウェア開発できてしまうことは革命的なことです。パソコンと同じように携帯電話でも(既にWindows95並の性能がありますから)、新しいビジネスが生まれる土壌を作り出そうとしているのかもしれません。興味のある方はぜひご一読ください。
(宗像)