ノイズ、といえば音や映像、電子機器に悪影響を及ぼすものというイメージが強いのではないでしょうか。とくに本書で取り上げている「電磁ノイズ」は、みなさんがよく耳にする「電波」を含む電磁波によるノイズで、私たちの生活に欠かせない電気製品や無線通信に影響を与えるものです。
この電磁波が地球環境の変化を予測するうえで貴重な情報をもたらしてくれているのをご存じでしょうか? 本書ではその例として、日本に住むものとしては関心のつきない「地震発生の予測」、現在そしてこれからも考えていかなければならない「温暖化の観測」、さらにはハイテク社会の基盤を脅かす「宇宙から降り注ぐ電磁波の予測」に関する研究を紹介します。
たとえば地震発生の予測に、電磁ノイズがどう利用されるかの一例をかいつまんで説明しましょう。それにはまず地震発生のしくみを知る必要がありますが、簡単にいえば、地中で常に加えられている圧力に耐えきれず、地中(地面)の硬い部分が割れたときに発生する衝撃、これが地震です。多くの場合、前ぶれもなく大きな割れが起こるわけではなく、その前に少しずつひび割れていきます。この前段階のひび割れが発生する電磁波を、それと同じ周波数帯をもつ観測用電磁波が乱される――つまり、ひび割れから発生した電磁波が観測用電磁波のノイズになった――ことによって検出します。これが大地震の発生を短期的に予測する研究のひとつです。
また最新の研究紹介だけでなく、これらの研究を深く理解するための前提として、電磁波/電磁ノイズに関する発生や伝搬のしくみといった基礎的な知識もわかりやすくまとめました。
“ノイズ=じゃまなもの”と連想されがちですが、ノイズと有益な情報は表裏一体、ちょっと見方を変えてあげればこのような発見があることを知っていただきたいのです。 詳しくはぜひ本書をお手にとってご覧ください。