ネットショップを利用したことがある人は、これを読んでいる人の中にもけっこういるだろう。経済産業省の調査によれば、国内のインターネット利用者に商品やサービスのオンライン購入、利用経験を尋ねたところ、実に86.9%がイエスと答えている。9割近くの人が利用経験があるということは、既に一般化しているといっていいだろう。それでは、今からネットショップの開業・開店をするのは、もう遅いのだろうか? また、ネットショップ市場は既に飽和状態なのだろうか? どうやらそうではないようだ。
同じく経済産業省の調査によると、2007年における国内インターネットのコンシューマ向け(BtoC)EC市場の規模は、5兆3000億円となっており、前年2006年の4兆4000億円から21.7%増と、順調に拡大していることが伺える。野村総合研究所の試算によれば、2012年度には市場規模は10兆円を超えるといわれている。参考までに、米国のBtoC市場の規模を見てみると、こちらも前年から17.6%増の22兆7000億円と、高い成長率を見せている。
ただし、これらは市場規模の話であり、単にオンラインショップを開業すれば儲かるというわけではない。確かに数年前までは、オンラインショップの数、サービスとも少なく、ある程度の質を持ったオンラインショップであれば、順調に運営できた。一方、現在はオンラインショップ開業のためのサービスを提供する会社の存在や、ソフトウェア自体がこなれてきたこともあり、開業自体は以前よりずっと楽になっている。ただ、それだけに参入業者も多く、過当競争が始まっている。既にオンラインショップを開業すれば、儲かるという時代は過ぎているのだ。
そこで重要となるのが、ユーザーが使いやすいシステムといった、オンラインショップ自体の質の向上とともに、ユーザーの欲しい商品や嗜好を上手に捉えるマーケッティングだ。
たとえばMasterCard Worldwide (以下MasterCard)が、インターネット利用者のオンラインショッピング習慣について調査したデータがある。ここでは、利用者が男性が女性かによって購買行動が異なるという結果が出ている。
オンラインショッピングを利用する男性が頻繁に訪れるサイトの上位は、下のグラフのようになっている。男性がデジタル系に、女性が洋服にというのは、オンライン以外でも見られる傾向だが、どちらも2番目を10%以上引き離しているという数字は興味深い。
グラフ 頻繁に訪れるサイトの上位
また、同じ調査から女性がオンラインショッピングすることが多い品目は、「洋服/アクセサリー」(62%)、「書籍/美術品」(42%)、「化粧品」(39%)となっている。書籍や化粧品は前述の興味あるサイト調査には現れていないジャンルであり、これらは既にサイトで調査するまでもなくオンラインショッピングの対象として一般化しているのではないかとも考えられる。
一方、オンラインショップの商品の売り方の参考になるデータとしては、男性の方が支出総額が高く購入前に商品の調査をする人の割合が高い一方で、女性は頻度は高いものの、支出総額は低く、オンラインショップを利用する場合はセキュリティが気になる人が多いという結果が出ている。
こうした数字はあくまでアンケートの結果であり、それをそのままオンラインショップ方針へと活かせるものではない。しかし、ライバルが多数いる中、特定のターゲットに絞った特定の商品を売ろうと考えている人にとっては面白いデータとなるかもしれない。