新たな資源問題 ふしぎな金属レアメタル

私たちの身近なハイテク機器のほとんどに使われているレアメタル。例えば、携帯電話の液晶ディスプレイには透明電極が必要なのですが、それにはインジウムというメタルが使われていますし、その電源のバッテリーにはリチウムなどのメタルが必要です。これらは、携帯電話以外にもパソコンやカメラやGPSなどのモバイル機器を含む多くの製品に使われており、少量で優れた性質を生み出しています。

レアメタルの⁠レア⁠とは、まさしく稀少を意味する⁠rare⁠⁠。天然の存在量が少ないこと、天然で濃集しにくいこと、人工による分離が困難なことなど、さまざまな理由で消費が稀であることから、このように呼ばれています。そして、その稀少性と現代産業との関わりから、資源問題を語る際には欠かすことのできないテーマとなっています。

……と、ここまではニュースで聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

しかし、あなたは

  • 国内で指定されているレアメタルは何種類か知っていますか?
  • もっとも多くのレアメタルを産出している国を知っていますか?
  • 国でとっている対策内容を知っていますか?
  • そもそも、なぜ⁠rare⁠なのでしょうか?

このように、急に注目された話題であることから、食糧問題や原油問題と比較するとどうしても知識が浅くなりがちです。レアメタルとは何なのかをキチンと理解しておくことが、今後の環境問題を考えるうえで重要です。

本書では、その自然科学的な位置づけから、性質と用途、そして日本がレアメタルの将来的な安定供給の確保をめざしてどのような取り組みを行っているのかまで、関連する情報をまとめました。

本書の構成を、以下少しだけご紹介いたします。


第1章:レアメタルとは何か
レアメタルの定義などについて説明しています。
第2章:地球の誕生とレアメタルの形成
レアメタルが宇宙および地球の誕生と進化の過程でどのように形成されたかを説明しています。ここで、元素が具体的な物質の形をとった鉱物、およびその集合体である岩石についても、解説しています。
第3章:レアメタル鉱床の形成メカニズム
レアメタルの濃集の状況について触れています。分散していては資源として利用できません。経済的に利用するためにはある程度の濃集が必要なのです。そのメカニズムは重要なのですが、現在でもよくわからない点が多く残されています。有用な元素が濃集している場所を鉱床と言いますが、ここで一般的な説明もしています。また物質循環を考えるためには、プレート・テクトニクスの考え方が不可欠ですので、ここで解説しています。
第4章:世界におけるレアメタルの分布
地下に資源としてどれだけ残されているかを示す埋蔵量および生産量について、世界のどの国に多いかを示しています。また、レアメタル資源大国の代表である中国について、その特徴を示しています。
第5章:レアメタルと海底鉱物資源
海底に存在することが判明しているレアメタル資源についてまとめています。現在は、陸上産のものが利用されていますが、将来的な資源として有望視されているものです。
第6章:レアメタルを活用する産業
レアメタルの代表的な利用例を紹介しています。とくに、鉄鋼産業・IT産業・自動車産業についてです。
第7章:レアメタルの将来
貿易立国で成り立つ日本において、その先端製品の製造のために重要なレアメタルを確保するために政府などが行っている(あるいは行おうとしている)さまざまな対策をまとめて紹介しています。鉱山開発・リサイクル・代替・備蓄などについてです。ここで⁠都市鉱山⁠についても触れています。
第8章:レアメタルと環境問題
レアメタルの利用に伴って生じる環境に対する負荷の中で、エコリュックサックと呼ばれる概念について触れています。

現代社会で特に不可欠な物質、レアメタル。金属鉱物資源として大量に消費されている鉄は現代産業における「米」と例えられる事がありますが、同様に、レアメタルは「ビタミン」の役割を果たしていると言えるでしょう。また、限りある地下資源の代表として、鉱物資源が抱える問題を、いろいろな形で代表して表面に出してくれています。

レアメタルを理解することは鉱物資源を理解することにも繋がります。まさに「知らずに語れない」情報が満載の本書を読み、資源問題について今一度考えてみませんか?