介護福祉士⁠社会福祉士試験⁠必勝のポイントは

介護福祉士や社会福祉士など福祉関連の資格は、高齢化が進む昨今、ますます重要度が増している資格です。介護福祉士国家試験はここ数年は毎年約14万人の人気試験で、合格率約50%、これに対して社会福祉士国家試験は、ここ数年は受験者数約4万5千人前後、合格率30%弱の狭き門です。いずれの試験も勉強の仕方が合否を分けそうです。勉強のポイントを介護福祉士資格取得支援研究会と社会福祉士資格取得支援研究会の方にお聞きしました。

介護福祉士は、新カリキュラムを意識した出題傾向が続く

―介護福祉士試験は、幅広い分野からの知識が必要とされています。仕事をしながら試験を受ける人も多いと思いますが、効率よく勉強するには、どのようにすればよいでしょうか?

介護福祉士資格取得支援研究会(以下、介福と略)どのような分野から、どのような形式で出題されるのか、⁠試験問題を知る」ことが効率的な学習の第一歩です。出題される内容は、今後、介護福祉士として活躍していくために知っていてほしい知識、身につけていてほしい技術だといえます。こうしたことを念頭に、全体を俯瞰しながらひとつひとつの科目に取り組んでいくと、理解しやすいでしょう。一方で、効率的な学習には、⁠自分自身を知る」ことも必要です。性格や行動パターンから、どのような学習方法が自分に合っているのか考えてみましょう。学習の早い段階で、自分の得意・不得意を把握することも重要です。次から次へと新しい参考書や問題集に取りかかるのではなく、これと決めた1冊を繰り返しましょう。

―なるほど。1冊を繰り返しやることが、実は合格への近道なのですね。さて、2009年1月に実施された第21回試験はどのような傾向でしたか?

介福― 2012年の第24回試験から、新カリキュラムに対応した試験となりますが、今回の第21回の試験でも、新カリキュラム試験を意識したような出題がみられました。たとえば、一問一答式の問題での短文の事例問題や、単純な知識の暗記だけでなく、⁠○○の場合、□□だから△△となる」といった知識の連続性を問うもの、状況に応じた判断が必要な問題などです。また、介護福祉士として必要な倫理観や介護の理念を問う出題の増加も傾向としてあげられるでしょう。内容的には、一問一答式の問題も、事例問題も、⁠高齢者や障害者の地域(在宅)での自立生活を支援する」という観点からの出題が多かったといえるでしょう。

―「介護福祉士として求められるもの」「地域での自立支援」ですか。次の試験でも、新カリキュラムを意識した問題が増えそうですね。ズバリ、どのようなところに重点が置かれそうでしょうか?

介福― 2006年7月に「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検討会」報告書が取りまとめられ、その中で「求められる介護福祉士像」として12項目があげられています⁠。今回のカリキュラム改訂もこれをベースに検討されており、国家試験でも、⁠求められる介護福祉士像」実現のために必要な知識・技術、能力とは、といった観点からの出題となるでしょう。高齢者や障害者に対するケアのあり方は、⁠利用者本位」を大前提に、⁠地域生活支援」「就労支援」という側面がより重視される方向になってきており、試験でもこのような背景をもとにした出題が、今後も多くなってくると思われます。

社会福祉士は、いよいよ新カリキュラム対応試験に!

―2007年の社会福祉士及び介護福祉士法の改定に伴い、いよいよ2010年1月の試験から新カリキュラム対応の国家試験が始まります。新カリキュラムの特徴を教えてください。

社会福祉士資格取得支援研究会(以下、社福と略)これまでは13科目プラス実習・演習だったのですが、4科目群(19科目)プラス実習・演習に再編されました。科目名も、⁠社会福祉原論」⁠老人福祉論」といった名称から、⁠人・社会・生活と福祉の理解に関する知識と方法」⁠総合的かつ包括的な相談援助の理念と方法に関する知識と技術」⁠地域福祉の基盤整備と開発に関する知識と技術」⁠サービスに関する知識」となり、社会福祉士として求められる知識や技術を具体的に示す名称となっています。⁠実践力の高い社会福祉士を養成する」ために、具体的には、相談援助に関する科目の充実が図られ、新たに「就労支援サービス」⁠権利擁護と成年後見制度」⁠更生保護制度」といった科目が設定されています。

―大幅な変更ですね。うーん、試験勉強も大変そうですね。学習のポイントを教えてください。

社福―社会福祉士の活躍が期待される領域が広がっていることを踏まえ、新たな科目の設定や再編が行われていますが、従来のカリキュラムとまったく異なるというものではありません。これまでの「○○論」という名称に比べて、科目群や科目の名称から学習すべき内容が連想しやすく、学習しやすくなったといえるかもしれません。

「相談援助の専門職」という社会福祉士の役割を自覚し、従来の福祉の領域だけでなく、司法、労働、教育といった領域も含めた総合的な視点から、求められている「社会福祉士像」を理解しましょう。単なる知識の暗記ではなく、実践の場面で活用することを念頭において、応用力や判断力を身につけることも必要です。

―実践の場で活用できる知識ですか、本当に知識が身についているかが問われるということですね。では、2010年1月22回試験の傾向と対策をお願いします。

社福― ⁠社会福祉士及び介護福祉士国家試験の今後の在り方について」では、新カリキュラム試験について次のような方向性が示されています。問題数は現行の150問を上限とすること、出題内容については、短文事例問題を含めた事例問題の出題数増加、知識の連続性や状況に応じた知識の活用力を問う問題の出題、出題形式については、五肢択一問題を基本形式とし、複数正答選択形式の検討、などです。

「虐待防止」⁠就労支援」⁠権利擁護」⁠孤立防止」⁠生きがい創出」⁠健康維持」などをキーワードとして、知識の整理と、最新動向の把握を行っていくとよいでしょう。五肢択一問題では、選択肢ひとつひとつに対して正誤を判断できなければ正解を導くことはできません。過去問を利用して問題形式に慣れることも必要です。

※注)「求められる介護福祉士像」
① 尊厳を支えるケアの実践/② 現場で必要とされる実践的能力/③ 自立支援を重視し、これからの介護ニーズ・政策にも対応できる/④ 施設・地域(在宅)を通じた汎用性ある能力/⑤ 心理的・社会的支援の重視/⑥ 予防からリハビリテーション、看取りまで、利用者の状態の変化に対応できる/⑦ 他職種との協働によるチームケア/⑧ 一人でも基本的な対応ができる/⁠個別ケア」の実践/⑩ 利用者・家族、チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力/⑪ 関連領域の基本的な理解/⑫ 高い倫理性の保持