パターン⁠Wiki⁠XP = 時を超えた創造の原則

パターン、Wiki、XPとは

パターンは一般に、⁠デザインパターン」の略として用いられます。プログラミングをしていると、繰り返し現れるコードの記述を目にします。デザインパターンは、そのような記述に名前を付け、再利用しやすい形式にまとめたもので、ソフトウェア設計の定石集として広く使われています。

Wikiは、インターネット上のコラボレーションシステムです。1つのWebサイトを多数の人が共同で作り上げていくことができます。Wikiの最大の事例は、誰もが編集に参加できる百科事典「Wikipedia」でしょう。

XPは「エクストリームプログラミング」の略で、ソフトウェア開発手法の一つです。ソフトウェア開発において良いとされるさまざまな手法を、極限にまで適用してみようという発想で考案されました。

建築家クリストファー・アレグザンダーの思想

この3つには、共通の祖先があります。それは、建築家クリストファー・アレグザンダーによる建築理論です。長い年月を経て自然にできあがった街並は、調和した美しさを備えています。彼は、そのような街並が持つ美しさを、どうやって建築で実現するかを考えました。植物は、種から芽が出て、花が咲き、実が生じるといった自ずから成長する力を備えています。アレグザンダーはそのような自ずと成長する力を備えた建築を実現しようとしました。彼はその方法を追い求め、⁠時を超えた創造の原則」としてまとめました。その原則の一つがパターンランゲージです。

パターンランゲージは、建築において繰り返し現れる構造を再利用しやすい形式にまとめたものです。アレグザンダーは、利用者と設計者の共通言語としてパターンランゲージを使うことで、利用者が自分自身で建築の設計を行い、本当に望んだ建築を実現できるようになることを目指しました。

そして、パターンランゲージを始めとしたアレグザンダーの思想を、建築以外の分野に適用した結果生まれたのが、デザインパターン、XP、Wikiです。

時を超えた創造の原則

本書では、アレグザンダーの思想の誕生から、デザインパターン、XP、Wikiがソフトウェアの世界で花開くまでの約半世紀にわたる歴史物語をたどることで、優れた創造を行うための共通原則を描き出します。