エコカー本格普及へ日本がリード ハイブリッド(HV)から電気自動車(EV)

プリウス予約8万台、インサイトも好調

5月18日に登場した3代目プリウスは発売前の予約だけで8万台を超え、その後も1カ月で数万台の勢いで受注を増やしている。5月の販売台数もたった2週間で1位となり、これがいったい何カ月続くか見ものだ。かたや、GMがクライスラーに続いて6月1日に破産法適用となり、ビッグスリーの凋落が著しい。自動車メーカーの明暗を分けたのは、ここ10年のエコカーに対する取り組みの違いだ。

エコカーの普及を先導する、
絶好調の3代目プリウス
エコカーの普及を先導する、絶好調の3代目プリウス

97年に初代プリウスが登場したときには「ハイブリッド車?なにそれ?」という人がほとんどだった。それがいまはハイブリッド車(HV)を持たないメーカーは完全に周回遅れで、企業の存続さえ危ぶまれる勢いだ。2009年は、本格的なエコカー元年として自動車業界に記憶される年になりそうだ。

プラグインHV、電気自動車へ各社が競争

そんな中、⁠トヨタとホンダ以外は)開発の難しいHVを飛び越えて、その先にある電気自動車(EV)の開発に各社ともしのぎを削っている。次世代車の覇権をめぐる生存競争だ。今年7月に三菱自動車のi-MiEV、スバルのプラグインステラの2台が登場。いずれも最初は企業向け販売だが、三菱は10年度から一般ユーザーにも販売するため、生産規模を10年夏には年間5000台、11年夏には1万5千台に拡大する。補助金を入れても320万円程度という価格がネックだが、そのコストの大半は心臓部のリチウムイオンバッテリーである。

(右)ダイムラーもEVに本腰で、AクラスとスマートのEVを発売する
(左)いよいよ09年7月発売の電気自動車、三菱i-MiEV
ダイムラーもEVに本腰で、AクラスとスマートのEVを発売する いよいよ09年7月発売の電気自動車、三菱i-MiEV
トヨタが2台目プリウスで実証を進める
プラグインHV車
トヨタが2台目プリウスで実証を進めるプラグインHV車

日産は小型車サイズの専用EVを10年度に発売する予定だ。こちらはバッテリーを交換式にしてリースする戦略をとり、ガソリンスタンドならぬバッテリー交換ステーションの事業も始動している。

一方、プリウスを持つトヨタは余裕で、次は家庭で充電もできるプラグインHVを10年に投入し、EVは他社の様子を見て出してくることになるだろう。バッテリー量産が進めばEVも買いやすい価格に近づいてくるはずだが、それまではプラグインHVが次世代車をリードしそうだ。

ほかのエコカーはどうなの?

エコカーといえば、ほかにも水素で走る燃料電池車、バイオ燃料で走るバイオ燃料車、天然ガス車、水素エンジン車、ヨーロッパではディーゼルHVの開発などもあり、HCCIと呼ばれる究極のエンジンも研究されている。どれが勝ち残るのだろうか?

GMが10年発売をめざすシリーズ式HV
シボレー・ボルト
GMが10年発売をめざすシリーズ式HVシボレー・ボルト

次世代車の必須条件は2つある。1つはCO2をはじめとする温暖化ガスやNOx、PMなどの有害物質を排出しないこと、もう1つは枯渇が心配される石油資源からの脱却だ。この2つの問題を解決するにはさまざまな難題があり、ほかの方式ではムリなのだ。クルマが進む道はいずれにせよ電動化となる。そして、この分野ではHVを普及させた日本が大きくリードしている。EVも電池とモーターがあれば簡単に作れるものではない。数々の次世代車の技術と課題を理解すれば、次の10年のモータリゼーションの姿が見えてくるはずだ。