LyXってなに

LyXは、LaTeXによる文書作成を、グラフィカルなユーザーインターフェイスによって支援する文書プロセッサです。

もっと簡単に言うなら、入力した文書データをLaTeXのデータ形式に変換するプログラムです。つまり、LyXによる文書作成は、LaTeXの特徴に強く影響されるのです。

まずは、両者の文書作成について見ていきましょう。LaTeXによる文書作成は、プログラミングに似ています。

LaTeXの文書は、テキストエディタで下記のように作成します。
リスト1
¥documentclass{jsarticle}
¥begin{document}

日本語の文書を作成します。

¥end{document}

それを、DVIという出力形式に変換(よく「コンパイルする」と表現される)します。DVIファイルをPC上で表示するには、dvioutなどのプレビュー用プログラムを使用します。

一方、この文書をLyXで作成するには、LyXを起動して、新規文書を作成し、⁠日本語の文書を作成します。」と入力するだけです。この状態でツールバーの[DVIを表示]ボタンをクリックすると、LaTeXと同じものが作成されます。

LyXには、作成中の文書のLaTeX ソースを表示する機能もあります。⁠表示]メニューの[ソースを閲覧]を選択すると、LaTeXのソースを表示するエリアが現れます。リスト1とまったく同じではありませんが、LaTeXのソースとほとんど同じものが作成されます。

LyXはLaTeXのソースファイルを作成するためのソフトウェアです。したがって、見た目はMicrosoft Wordなどのワープロソフトと似ていますが、使い勝手が異なります。たとえば、ワープロソフトでは、文字を大きくする場合に、対象となる文字を選択して、適当なフォントサイズを指定します。

しかし、LaTeXには任意のフォントサイズを指定する機能がありませんから、LyXにもフォントサイズを指定するためのツールバーは用意されていません。

また、ワープロソフトでは、スペースキーや[Enter]キーを押して空白を開け、そこに文章や表、図などを入力することがよくあります。しかし、LaTeXには、スペースキーや[Enter]キーで空白を作る機能がないため、LyXでスペースキーや[Enter]キーを押しても、それは無視されます。

このように、ワープロソフトとは異なる動きをする LyXですから、LaTeXで文書を作成した経験のない方は、違和感を感じるかもしれません。しかし、LyXでは、文書や表、図などの要素を入力して、その構造(見出しや箇条書きなど)を指定するだけで、文書の組版処理が行われるという大きな利点があります。

LyXでは、ユーザーが文章や図版などを用意して、構造を指定するだけで、事前に用意されたスタイルに従って LaTeXが組版を行ってくれるのです。

LaTeXの知識があればより活用できますが、LaTeXの知識がなくてもプロ並みの組版を実現できるところが、LyXの利点なのです。