建築を勉強する学生たちの多くが、構造力学を苦手科目としているようです。ではどうすれば苦手意識を取り除くことができるのでしょうか。
30年にわたり専門学校で構造力学を教えてこられた丸山先生に苦手意識を克服できる「はじめての構造力学」をご執筆いただきましたのでご紹介します。
苦手意識の克服方法
理論をしっかり学習しているはずなのに、演習問題をどのようにして解いてよいかわからず、まるで迷路に入った状態になっている方に本書をお薦めします。
ここから脱却するには、問題の内容を理解し、問題が解けるようになることです。本書では徹底的にやさしく問題の解法を解説し、また理解へと導くために、以下の点を柱に解説してあります。
- ① 可能な限りシンプルにスムーズに構造力学の問題を解いていきます。
- ② 構造力学の迷路に入らないように整理整頓を重視して進めます。
- ③ 演習問題を解くルールとその意味を要所で明示します。
これにより難しいと思っていた考え方が理解でき、解き方がわからず、悩んでいたものが解決され、問題がスムーズに解けるようになります。
解法のキーを理解すること
それでは解説の一例をご紹介します。
構造力学の各分野には、演習問題を解くためのキーとなる基本的なルールが存在します。例えば次の合力・分力の図式解法の例です。
図1 問題の解法の例
図式解法の問題を解く基本的なルールは、『合力の作用線は、各分力の作用線の交点を通る』ということです。
このことを理解して利用すれば、図式解法は混乱しません。複雑な問題で難解に見えるものも、解法のキーが存在するものです。
整理整頓、急がば回れ
構造力学に限らず、計算にからむ全ての演習問題の解法のコツは『整理整頓』です(本書では図表を使った方法を解説してあります)。
図表を使って整理して解法していくと、計算の見落としと無駄な計算が防げるとともに、進捗状況が明確にわかり、見直しも容易にできます。例えばトラズでは、「全ての応力を引っ張り(+)に仮定する」とルールを確定しておけば、計算ミスも防ぐことができます。
また、面倒がらずに一緒に図を描きながら学習するとよいでしょう。
これによりきちんと理解でき、混乱を回避することができます。
図2 曲げモーメントの計算で使用した図
図2のように複雑な静定異型ラーメンの解析も、図を描きながら進めると(図を見て確認しながらでも丁寧な図なのでわかりやすい)、混乱することなく解法できます。
具体的な問題の解法
解法の意欲を喚起するために、具体的な問題を解いていきます。実際に使用される構造物の解析は、自分が行っている計算の意味を知ることができ、構造力学の面白さを実感できます。
図3 単管足場垂直材の座屈応力の問題例
例えば座屈の演習では、図3のような具体的な問題を解いていきます。実際の建築で使用される単管足場の問題なので、イメージしやすく、解答できると建築技術者としての自覚が生じ、その達成感も苦手意識の克服につながります。