今回の「なぜなにUNIX」は、コンソールとターミナルの違いについて解説します。同じような意味で使われているこの2つの用語、実は微妙に違いがあるんです。
コンソールは「演奏台」
ノイマン型コンピュータが作られだした1950~1960年代、コンピュータといえば部屋を埋め尽くす巨大な鉄のかたまりでした。当然直接いじるには手に余りますので、操作しやすいように専用の操作卓が用意されました。それが「コンソール」です。コンソールは元はパイプオルガンの演奏台を示す用語ですが、装置を鍵盤で操作するイメージが似ているため流用されたのでしょう。
その後、技術の進歩によりコンピュータはどんどん小型化し、現在のパソコンではコンソールもコンピュータに内蔵されてしまいました。ただ、大学や大企業で使われている大型コンピュータでは、現在もコンソールが使われています。
ではターミナルって?
一方、ターミナルは、電気通信用語で「終端装置」という意味です。通信ネットワークの末端機器を総称する用語で、電話やFAX、テレビやラジオもすべてターミナルです。では、なぜコンピュータの世界でもターミナルという用語が使われるようになったのでしょう?
1960年代、1台の大型コンピュータを多人数で同時利用する「タイムシェアリングシステム(TSS)」という仕組みが作られます。TSSでは、コンピュータと多数のコンソールをシリアルケーブルで繋ぐことで、同時利用を実現しました。このとき、TSSを1つの通信ネットワークと捉え、各コンソールを“ターミナル”と呼ぶようになりました。
つまり、コンピュータがネットワークシステムへと発展していく過程で、コンソールとは別にターミナルという呼び名が使われるようになったのです。
UNIXでの使い分け
UNIXもTSSの機能を持つOSですので、複数のコンソールを接続して同時に利用できます。ただしUNIXでは、カーネルと直接対話する装置をコンソールと呼び、外部ネットワークから接続する装置をターミナルと呼ぶようです。例えば、UNIXの起動時に表示される操作画面は「コンソール」、シリアルケーブルで直結する装置は「シリアルコンソール」と呼び、ネットワーク越しで接続する装置や、Xウィンドウシステム上で動く仮想端末は「ターミナル」と呼びます。
つまりUNIXでは、コンピュータとの“親密度”によって、端末の呼称を使い分けているわけです。コンソールはなかなか切れないが、ターミナルならいつでも切れる・・・何だか人間の組織によく似ています。ときに、皆さんは組織の“ターミナル”になってはいませんか? 不況の真っ最中ですので、くれぐれもお気を付けくださいね!