最近、脳科学が注目を浴び、脳に関するいろいろな情報が流れています。関心が高いことはとてもいいことなのですが、中には誤解を招くような表現があるのも事実です。
たとえば、「頭がよくなる」といったコピーを耳にしますが、この表現は、とてもあいまいな表現です。
よく聞く言葉に「脳年齢」というのがあります。しかし、脳や精神の研究者たちは、「脳年齢」という言葉は使わないのです。なぜなら、暦の年齢と脳の老化はへいこうして進むわけではないからです。実は、脳はきちんとメンテナンス(脳の健康維持)をすれば、暦の年齢よりもずっと若々しい脳の状態を保てるのです。もちろん脳も老化し、歳をとるにつれ、自然に脳細胞は減少していきます。それでも、社会生活ができないとか、記憶の能力が極端に下がるといったような、日常生活に支障がでるほどは衰えることはないのです。
現在のところ、脳細胞の減少を防ぐことはできませんが、残った脳細胞の働きを妨げないようにしたり、あるいは、より活発に働けるように保つ方法は、いくつかあります。
その方法の一つに、本書の8章でも紹介しましたが、「ひとり尻取り」があります。これのやり方は、まず最初に単語を決めます。たとえば「ゴルフ」で始めるなら、次に頭に「ふ」がつく単語を7つ思い浮かべ、そして声をだして順に7つを言ってみます。7番目に思いついたのが、「フルーツ」だとしたら、次は「つ」で始まる単語を7つ思い浮かべます。これは「ワーキングメモリ」の維持に役立ちます。もちろん、友人か家族で複数人で行ってもいいです。このほかにも、脳の健康維持のためのブレイントレーニング法が8章には紹介されています。
以前は、香りが脳の働きを変化させるとは考えられていませんでした。しかた最近の香りと脳の関係の研究から、鼻から入った嗅覚情報は直接脳へ届くこがわかりました。たとえば、コーヒー豆の香りの種類によっては、リラックス効果のあるものと、脳の回転を速くするものとがあるのです(7章で解説)。
本書は、精神神経科医として長い臨床経験をもつ著者が、はっきり脳の機能を保ち高めるために効果があると確認できたものを紹介しています。