ファーストブックシリーズ線形代数がわかる』

ある大学の研究室。数学のK先生が研究に没頭していると、学生のA君がやってきた。

(学生A君)すいません先生、ちょっとお邪魔してもいいですか?

(K先生)どうしたの? 何か質問かい。

はい。先生は結構親切にいろいろ教えてくれると噂で聞いて……。

そういうことか。で、何を聞きたいの?

---中略----

あのー、線形代数には「ベクトル」とか「行列」とか、ただ数字が並んでるのや、表みたいなのがたくさん出てきますよね。

まあ、そうだね。

で、その数字を足したり引いたり掛けたり、並べ替えたりするんですけど、何のためにそんなことしなきゃならないのか、まったくわからないんです。

ああ、そういうことね。

そういうことって、どういうことですか?

それは、よくありがちなんだよね。要するに、根本的に何やってるか全然わからないってやつだろ。

そうなんです。

それはもっともな疑問だね。⁠線形代数」って計算だけやらされるパターンが多いからね。

そうなんです。何でこんな計算しなければならないんだろうってよく思うんです。

(本書「プロローグ」より)

線形代数は、微分積分とならんで大学初年度の数学の大きな柱のひとつとなっています。なぜかといえば、自然科学や工学、ひいては情報科学や社会科学など、あらゆる分野において広く応用されているためです。

本書は、数学が苦手なA君がK先生の研究室をたずね、授業では納得のいかない線形代数を基礎から学ぶという設定で書かれています。堅苦しい教科書とは違い、対話形式になっていますから、肩肘はらず気楽に読み進めることができます。各章末には演習問題もあり、理解度のチェックも可能です。

線形代数は抽象性が高くどうにも難解で、授業では行列の計算ばかりを「やらされている」感が強く、結局なにをやっていたのだろうと、後になって考えている方もいるかもしれません。本書では、そんな抽象的で理解しにくい部分も、K先生のねばり強い指導と図解によってやさしく解説していきます。現在、線形代数に悪戦苦闘している大学生の方はもちろん、過去に習ったけど意味がわからなかったという社会人の方、大学の数学をちょっとのぞいてみたいという高校生諸君も、是非この機会に、A君と一緒に「線形代数」を学んでみてはいかがでしょうか。